プロ野球選手との淡い恋82
「もう、遠慮するのやめたから」
光田の視線は強くて揺るがない。
そよはじっとその目を見つめるが、あまりにも力があり過ぎて動けなくなる。
「会いたい時に会いにいく。もう寂しいのも嫌だし、電話じゃ全然足らないから」
光田はそよの腕を掴むと、優しく自分の胸元に引き寄せた。
そよの体に太い腕がしっかりと絡まる。
熱い胸板に顔を寄せると、爽やかで暖かい香りがした。
そよも両腕をそっと背中に回した。
「そよちゃんがほしい」
光田の甘い声が耳元で呟く。
埋めていた顔を上げると、今にも溶けてしまいそうなほど熱い視線に胸が痛い。
「私は、悠也さんのものですよ」
光田は熱い視線で見つめたまま首を振った。
「分かってる。でも、全然足らない」
どうしたら想いが伝えられるか分からなくて、光田の背に回していた腕に力を込めた。
光田はそよの髪に口づけながら囁いた。
「そよは俺のだからね。誰にもあげない」
耳が焼けつくように熱い。
そよは抱きすくめられたまま小さく頷いた。
光田は嬉しくて、そよを力一杯抱きしめた。
そよの頬に光田の指先が触れる。
光田のくちびるが、そよの柔らかいくちびるに触れた。
触れるだけの口づけは、静かに離れた。
けれど、どちらともなく寂しくて、求めるようにくちびるが重なる。
初めて知った、銀色の糸引く甘くて激しい口づけに翻弄されたそよは、もっと光田が欲しいと願った。
求める息遣いを、光田は幸せな気持ちで聞いた。
光田は優しく、けれど自分以外では満たされることが無いように、そよを抱いた。
その日、アパートの薄い壁から声が漏れないように、そよは左の人差し指を噛んでいた。
傷がつくからと、光田は指を外させて、口づけでそよの吐息を封じた。
けれど、夢中で二人のくちびるが離れるたびに、今まで知らなかった感覚に堪えるため、途切れていく意識の中でも、いつの間にか噛んでいた人差し指にはアザが出来ていた。
朝目覚めると、隣で髪を撫でながら、その人差し指を包むように握っていた光田がいた。
「おはよう」
微笑みながらそよに口づける。
まだ、夢の中にいるようだとそよは思った。




