プロ野球選手との淡い恋79
光田が審査をして食べている間も、そよの心は上の空だった。
各チームのオムライスを頬張りながら、光田は優しい好評をしていく。
「お料理上手だったね。いつもしてるの?」と声をかけられた美奈は嬉しそうに頷いた。
光田はそよにも「美味しかったです」と言ったが、ぎこちなく微笑むことしか出来なかった。
親子と組んだ河原のチームが優勝して幕を閉じた。
光田と田中が拍手の中を先に退場し、その後に3選手が関係者テントへ戻っていった。
残された助手たちは球団職員が参加賞のプレゼントがあるので、その場で少し待っているよう指示を受けた。
観客はそれぞれ次のお目当てに移動して、会場をあとにした。
谷岡がテントに戻ると、光田が待っていた。
いつもは気さくな光田だが、近づくなり穏やかだがはっきりと告げた。
「谷岡、今日はありがとう。あの子は俺のだから、よろしく頼むよ」
あの子?俺の?
谷岡は小学生の女の子である美奈を思い浮かべた。
「美奈ちゃんですか?」
今度は光田が美奈ちゃんと言う初めて聞く名前に首を傾げたが、その名前が小さい女の子のことだと気づいた。
光田は静かに首を振った。
ようやく谷岡は、光田が誰のことを言っているのか理解した。
「それじゃ」
光田は谷岡にそう告げると、球団職員に促され、警備に囲まれながら次のイベントに向かって行った。
その場に立ち尽くした谷岡は、まさか先輩の恋人だったとは知る由もなかったから「マジか」と呟いた。
光田は女優の内田菜々と交際していると言われていたから、彼女が一般人なことにも驚きだ。
よりによって、あれだけいた観客の中で彼女を引き当ててしまった。
さらに、可愛いと思ってしまった自分が怖かった。
光田は自分が彼女に興味があることを察して、クギをさす為に待っていたのだ。
「マジか」
谷岡はもう一度呟いた。
それから、彼女なら一般客として来させるなと、小さく悪態もついてみた。




