プロ野球選手との淡い恋77
見間違いか?
昨日電話した時は、来るなんて言ってなかったのに。
まじまじとモニターを見る。
いつもと服装が違うが、やはりそよだ。
あまりに画面を食い入るように見入っている光田に、田中は笑った。
「な、あいつ料理するんだな。しかも、助手に女の子つけてんじゃん。らしいよな」
田中が「らしいよな」と言った理由が分かるから、光田は心穏やかではいられなかった。
俺の料理選手権はとにかく料理をすればいいのだが、一つだけ指示されることがある。
ファンを喜ばせる為に助手を観客から選ぶ。
選ぶ時に、若い女の子は避けるように言われるのだ。
3年目だと、推してくれるファンも現れる。
せっかくついたファンをモヤモヤさせたりしない為の配慮だ。
だから、自分の母親世代の女性や子ども、男性や年配者を選ぶのが通例だ。
それなのに、谷岡は若い女性を選んだ。
しかも、よりによって、そよが助手に選ばれている。
そよと小学生の女の子、谷岡が並んでいる。
谷岡のフライパン捌きを見つめたり、チキンライスをお皿に装ったり、三人は楽しそうに料理をすすめている。
谷岡はチームでもヤンチャなタイプだ。
料理をするのは意外だったが、女の子に手が早いのは有名だった。
そのかわり、合コンをセッティングして女の子を集めることにも定評があり、一部からは重宝されていた。
田中の「らしいよな」は、それを察しているからだ。
そよは自分がここで見ていることを、知らない。
自分が嫉妬していることも知らずに、無邪気で楽しそうなそよがそこにいる。
そよはそんなことを考えていないし、あの場に立つ選択肢もあるわけ無いことだって、知っている。
谷岡と何でもないことも分かるのに、気持ちが激しく揺さぶられる。
どうしてそよの事となると、こんなに乱されるのだろう。
嫉妬ばかりしているしている自分に、光田は腹が立った。
料理選手権が終わると、助手をしてくれた人はそのまま関係者用のテントに案内され、選手からお礼にサインボールを受け取る。
谷岡の様子から、光田はイヤな予感しかしなかった。
でも、谷岡は牽制しておかなければならない。
焦る光田をよそに、職員から「料理が終わったので、入場してください」と呼ばれた。




