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キラキラの向こうに  作者: 矢野あいこ
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プロ野球選手との淡い恋68

タクシーは地下の駐車場へ向かい、停車した。

車から降りてフロントを通り、エレベーターに乗り込む。

階を登る機械の動作音がはっきりと聞こえる。

相変わらず手はしっかりと握ったまま、エレベーターの中でもやはり光田は黙っていた。

ピン、と音がしてエレベーターの扉が開く。

広い通路には二人の足音だけが響いた。

先程のパーティーとはあまりにも異なる静寂に、そよは全てが夢のような気持ちになった。


光田は鍵を開けると、「どうぞ」とようやく一言呟いた。

促されるまま、そよは先に部屋へ入る。

ネックレスを受け取り、その後に菜々と駐車場で写真を撮られることになる、あの日に訪れたきりの部屋。

相変わらず玄関も部屋へつながる廊下も広くて、すごいなと、そよは驚く。

後ろで、ガチャリと鍵をかける音がした。


そよが後ろにいる光田の方を振り返ろうとした時。

背中が急に暖かくなった。

光田の逞しい腕がそよを後ろから抱きしめた。

驚きのあまりそよは声が出なくて、ただ立ち尽くした。

抱きしめる鍛えられた体の強さと力とぬくもりに、そよは幸せな気持ちが溢れた。


光田はそよを抱きしめながら囁いた。

「向こうで浮気しなかった?」

その声は甘くて優しいのに、どこか拗ねている。

浮気なんて心当たりのないそよは、光田が何を言っているのかよく分からない。

「浮気なんてしてません」

「ホントに?」

「ホントです」

光田はふっと息を吐くと「良かった」とようやく声が柔らかくなる。

「さみしかった」

そう言うなり、光田はそよを後ろから抱きしめたまま、その場に座り込んで壁にもたれかかる。

そよも勢いで、光田を背もたれにするような感じで座りこんだ。

包み込まれるようだった。

「私も寂しかったです」

光田の頬がそよの髪をなでる。

「少し、このままぎゅっとさせて」

甘くて優しい声。

「ぎゅって、して下さい」

光田が微笑んだのが、伝わる。

抱きしめた腕に力が入る。

そよはただ心地よくて、いつの間にか寝入ってしまった。


あっという間にそよが自分の腕の中で寝息を立てたことを幸せだなと思った。

力が抜けてくったりしたそよを抱きしめたまま、光田もいつの間にか寝入ってしまった。


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