プロ野球選手との淡い恋64
社長の峯岸と共に、光田はイナケン50周年創業記念パーティーに向かった。
稲村会長と一緒なら、必ずそよはこの会場に来るだろう。
10日ぶりにそよに会えると思うと、気持ちが焦った。
最後の留守電を聞けば、そよは自分の元から去ったのではなく、稲村に連れさらわれたのは間違いない。
週刊誌や菜々からそよの身を守ろうとしてくれたことには感謝するが、連絡をとらせないのはやり過ぎだ。
そして、写真の男の姿を思い出せば落ち着かない。
峯岸は先日のレストランで稲村会長に会った一件以来、イナケンに関しては光田に任せておけば安心と思ったのか、随分リラックスしている。
それにしても、国帝ホテルで創業記念パーティーをするとは、やはり大手は違う。
ロータリーに車を寄せると寸分の隙もない制服に身を包んだウェイターが案内する。
気品のある落ち着いた大きなシャンデリアと、大きなモダンな生け花が飾られている。
様々な賞を受賞し、様々な会場に参加した経験もある。
もちろん、国帝ホテルでのパーティーにも過去に二度ほど来たこともあるが、一番大きな「鳳凰の間」に行くのは初めてだった。
イブニングドレスや洒落たスーツを当たり前に着こなしている人たちの流れについて行く。
イナケン創業パーティーの会場に足を踏み入れるなり、さすが峯岸は慣れたものだが、光田は思わず唸った。
1000人以上はいるだろうか。
沢山の人たち、歩き回るウェイター、ビュッフェスタイルにも関わらず美しく飾られたテーブルにフルーツ、小さく分けられた料理が美術品のように並んでいた。
正面には金屏風と50周年創業記念パーティーと筆で書かれた達筆な文字が飾られている。
整然と椅子が並べているが、まだ誰も登壇していなかった。
時計を見るともうすぐ5時半。
パーティー開始時刻だ。
光田の腕時計がちょうど開始時刻を指し示した。
すると、パッと電気が落ちて会場が暗くなった。
周りがざわつくと、スポットライトが閉じられていた正面脇の観音扉を照らした。
重厚な扉が静かに開いく。
そこには稲村会長や数人の社員らしき人たちがいて、眩しいほど光を浴びている。
会場から割れんばかりの拍手が湧き上がり、稲村会長は手を挙げて答えながら入場した。
その後に幹部が並ぶ。
光田は思わず声をあげそうになったのを堪えた。
幹部の後ろについて、紺のドレスを身にまとった女性が現れた。
それがそよだと気づいたからだ。
よく見れば男性の脇に寄り添うように立つ。
間違いなく稲村が送ってきた写真に写っていた男で、しかもそよの腕を掴んでる。
光田の中で何処からともなく腹立たしさが湧きあがった。




