プロ野球選手との淡い恋49
会社の昼休みに入るタイミングで、そよに内線電話があった。
受付から来客を伝えられた。
自分のような新人に、ましてや仕事相手が訪問してくることなどありえない。
間違いではないかと受付に伝えると「間違いありません」と機嫌を損ねたように告げられ、慌てて謝った。
階段を降りていくと、受付の脇に置かれたソファーに、美しい人が座っていた。
ただ黙って座っているだけなのに、スタイル抜群で、マスクとサングラスをかけていたが周りの空気が見たことないほど華やいでいた。
昼休みに食事へ出て行く社員の誰もが立ち止まったり、振り返っていた。
そよは、まさかその女性が自分の来客だとは思いもしなかったから、受付に確認に行こうとした。
すると、その女性が立ち上がった。
「あなたが、佐野さん?」
驚いてその女性を見たとき、変装をしていても誰であるかがすぐに分かった。
そよの身体が急に冷えた。
女性はそよの目の前でサングラスとマスクを外した。
「そんなに驚かないで。光田から私たちの話を聞いてたのかしら」
白く透き通る肌に身体の作り全てが小さく、美しい。
艶やかな髪、長いまつ毛、大きな瞳に淡い唇。
まるで、お人形のようだった。
非の打ち所がない美しい顔に、天使のような笑顔が浮かぶ。
行き交う社員たちが慌てて足を止めて騒ついた。
「内田菜々じゃない?」
「本物だ」
様々な声が聞こえる。
けれど、そよの目には菜々の姿しか、耳には菜々の声しか聞こえなかった。
菜々はそよを上から下まで見つめると、胸元で視線を止めた。
「ミキハラじゃない。もらったの?」
そよは、光田からもらったネックレスのことだと気がついた。
返事をして良いかも迷い、押し黙るしかなかった。
暫くネックレスを見つめていたが、菜々は何をするでもなく、そよの前から去っていった。
遠巻きに出来た人だかりが、携帯電話を菜々に向けながらも行く手を開け、菜々は悠然と出て行った。
そこに残されたそよに、色んな視線が向けられる。
そよはその場から逃げるように駆け出した。




