プロ野球選手との淡い恋48
ライターの萩野が声をひそめた。
「最近、イナケンに転職して来た子がいて。派遣さんならともかく、正社員の中途は珍しいみたいで」
「人がいなかったんでしょ?うちの事務所も暇なし求人してるわよ」
「イナケンは大企業だし、福利厚生が手厚いから社員はなかなか辞めない。そもそも、大卒の定期採用だって、すごい倍率でなかなか入れないのに、いつの間にか採用されてたらしいんです。しかも、管理職の対応がおかしいと」
「おかしい?」
「タレコミによれば、何がって訳じゃないけど、色々気にかけてるようだと」
「それ、会長か社長の愛人とかじゃないの?飲み屋で会った子を近くにおきたくて、みたいな」
「その辺は謎なんですけど。で、その女が同僚と飲んだ後、身体のデカイ男が迎えに来たと。男が誰かははっきりしないけれど、一般人ではない感じだった。一緒にいた他の同僚は、光田悠也に違いないと言ってたみたいです」
「よく聞き出したわね」
「一緒に飲んでた女が売り込んできたんですよ。なんでも、クレジットの支払いが滞ってるから買ってくれって。光田と一緒にいたなら、その女が新しい」
萩野はまた軽く咳払いをし、言い直した。
「たぶらかした女じゃないかと」
「随分と素敵なお友だちがいる方なのね。お里が知れるわ。で、名前は?」
「佐野って言う名前で、すごい美人とか、ものすごい優秀とかでもなく、いたって普通みたいですよ」
「普通ねぇ」
「もしかして、ファンに手を出したとか。たまたま来たファンレターに入ってた、加工バリバリの写真に騙された!みたいな」
菜々は光田がファンに手を出すタイプではない事をよく知っている。
気の迷いがあったにしても、やはり考えづらかった。
真面目で、一生懸命で、脇目をふらない。
他の男とは違うそんな所に、菜々は惚れたのだ。
悠也に好きだと思わせた、その女を見てみたいと思った。
そして、普通の女が自分に勝てるはずがない。
自分を見ればその美しい造形に恐れをなして、悠也には不釣り合いだと知ればいい。
その女に身の程を知らせたいと思った。




