プロ野球選手との淡い恋33
そよの腕を掴んだままの上田、それを皆んなが諭していた時だった。
「そよさん」
突然聞こえた、強めのはっきりとした声に、一斉に振り返った。
すると、一人の男がこちらをじっと見て立っていた。
身長は190近くあり、鍛えられた大きな身体。
薄いジャケットとアンクル丈の白いズボンを洒落て着こなしている。
帽子を目深に被りマスクをつけていたが、周りにまとうオーラがすさまじく、通行人の誰もが振り返った。
そよはすぐに、光田が来てくれたのだと分かった。
光田は上田に近づくと、「ごめんね」と声をかけてそよの腕を掴んでいた手を離させた。
立ち尽くすそよに、穏やかに「行こう」と声をかけた。
光田はそよの手を、大きな手で包むように優しく握る。
それから、そこにいた会社の人たちに「それじゃ、失礼します」と一礼すると、そよを連れ出した。
誰もが何が起きたか分からないと言った様子で、去って行った二人の後ろ姿をぼんやり見つめた。
ただ立ち尽くしてその様子を見ていた吉沢が、急に何かを思い出したように「あ!」と声をあげた。
「あれ、光田悠也じゃないか?」
呆気に取られて二人の後を見つめていた真里も、なんだかそんな気もしてきた。
しかし、まるで自分に言い聞かすように呟いた。
「そんなわけ…ないよね…」
それからもう一度確認しようとしたが、二人の姿はもう見えなかった。




