喧嘩の終了と喧嘩のワケ
「どうかされましたか?って。見りゃわかるだろ、あ。」
男の人は私の言葉に思い切り突っ込んできたけど、いきなりしまったという風に口を押さえた。
バチーン!
そこで、とてつもなく痛そうな音が辺りに響いた。
「あなたはいつもそんなのだから信用できないのよ!」
女の人は目に涙を溜めながら赤くなった手のひらを握りしめている。やべっ、という顔をしていた男も驚いたように頬を押さえ、女が泣き始めたのを見て慌て始めた。
「いや!本当にさっきの件は誤解なんだ。」
「じゃあ、なんなの!?」
女は未だ涙目で男を睨んだ。
「少し優しくしたら俺に縋ってきたんだよ。お前がいるから断ったがしつこく言い寄って来やがったんだ。せいぜい、立場が悪いから社長の俺にでも下がったということだろう。ああいう女がやりそうなことだ。」
けっ、と唾を吐くように言い捨てる男。
どうやら状況としては、あの男は社長であの女は彼女。男が少し優しくしてやったのを都合よく勘違いしたのか職場の立場が悪い女が甘えてきたと。断ってたところを今いる女に見つかったというところだろうか。
うわ!前世でもよくいた迷惑女!
ルミアの男友達も、そいつのせいで彼女と喧嘩してとてもご立腹だったことを思い出した。こういう奴はどこにでもいるということだろう。
「違うわ!絶対に!だって、あなた笑ってたもの。」
女はそういってから少しだけ憔悴したように、寂しそうに笑う。
「違う!そいつが面倒くさいから愛想笑いだ。」
「愛想笑いなんかじゃない!楽しそうに笑ってたもの。」
「あれは…」
男はここで行き詰まった。女はほらみてみろ、という風に彼を見ている。男は言うかどうか決めかねている様子だったが、やがて決心したように顔を上げた。
「だって、明方さんがバナナに滑った話をするから。」
「「へ?」」
ルミアと女は同時に驚いた声を上げた。バナナ?
「明方さん?あの?」
「ああ、あの仕事をしない。」
「あの方、転んだの?」
「見事に滑って尻もちをついたそうだ。顔は赤くてタコみたいだった。」
女はぽかんとした後笑いだした。
「あんなに馬鹿にしといて?」
「本当におかしかったよ。清々したよね。」
女はコクリと頷く。どうやら、明方という人物はそこまでやっかいな存在みたいだ。
なにはともあれ、仲直りできて良かった。
2人が甘い雰囲気になってきたのでルミアは屋敷に帰ることにしたが、よく考えるとくる必要無かったことに気づいてしまった。
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