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方舟  作者: ゆめゆめゆめみ
第2章
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追想

計画の重要な重要な局面を乗り越え、小林は安堵していた。目標の天体へ向けて探査船と開発船がブラックホールによる加速で最終航行を開始した。ここ一週間は色々な意味で興奮し通しの小林であった。激動の日々の中でほっと一息ついた時、過去の事件の事を思い出してしまう事は無いだろうか。小林が思い出していたのは方舟計画の外交交渉での一幕と、その後の核融合発電所の事件であった。


探査船の打ち上げよりはるか以前、国連での演説の少し前、小林たちの方舟計画実現のための各国との交渉は思いの外順調だった。各国政府の分担金は経済規模により厳格に規定されており、先進国以外の国々では、比較的軽微であったのだ。先進国以外の国家はそれ程の負担もなく全人類的な国際プロジェクトに参加するチャンスを前にし好意的な姿勢であったのだ。さらに、日本とEUが核融合技術の無償提供を決断した効果が顕著に現れていたのである。そして、日本はしたたかであった。交渉の初期段階で、核融合発電所の導入に対し、技術協力を各国に申し入れていたのである。導入国は発電所の費用を分割で支払うことが認められ、次々と導入を決定していった。核融合発電所導入に伴い、天然資源、土地、海域の租借権や、日本に対する関税の撤廃、減額など、導入のコストを下げる交渉は盛んに行われ、日本と核融合発電所導入国はまさにwin-winの関係で結ばれていった。こうして、2031年2月の地点で方舟計画参加国は180ヵ国に達していた。

順風満帆に見えた世界との交渉にも問題があった。当初から計画に明確な反対を表明している国の説得が難航していたのだ。それが韓国だ。韓国は日本との交渉が始まるや否や、「これは日本の世界征服の計画だ。韓国は断固拒否する」と外交官を追い返す姿勢を取った。韓国との交渉を任された駒中洋司大使と経済産業省から補佐として派遣された官僚は粘り強く説明を繰り返した。「人類が団結する時である。核融合の技術を提供するので、人類の発展のために力を貸して欲しい。」この説明に対し、韓国側からは決まって「日本の世界征服の計画には絶対に手を貸せない。我々は慰安婦を忘れない」と返ってくるのである。二人は途方に暮れていた。そんな彼らに対し、韓国側は最後通告と称して、以下の回答を寄越した。

「本当に人類のためならば、先に核融合発電所を日本の負担で導入しろ。その後改めて検討する。」この通告には、これは政府決定であり、この条件以外では交渉しないと明記されてあった。そして、最後には、この条件が実現しない場合、韓国には全世界に対し、日本の世界征服の計画を暴露する用意があると記されていた。

この時点で計画を公にされるわけにはいかなかった。現時点では水面下で各国の賛同を得る段階であったのだ。政府の正式な承認手続きを踏んでいては計画に必要なスピードを得られないためだ。

この最後通告はすぐさま日本政府に届けられ、速やかに対策会議が招集された。この会議の結果、日本は韓国との交渉から撤退。EUに交渉を引き継いだ。程なくして韓国が方舟計画に参加、残っていた二つの国も計画に賛同し、国連加盟の183ヵ国すべてが方舟計画を承認した。

この様な経緯ののちに方舟計画は正式にスタートしたわけである。ほんの何年か前の出来事であるにも関わらず、小林は遠い過去の出来事の様に感じられていた。それ程までに方舟計画の発案後は怒涛の時間だったのである。


そして、小林がもう一つ強く心に残っている事件、それは小林が国連で世界へ向けて演説を行った3年後の出来事だった。


韓国の古里にある核融合発電所建設地で大規模な爆発があった。人類が核融合技術を手に入れ、まさにその技術によって宇宙に進出せんと躍起になっている時期の事故である。世界中のメディアが事故を報道し、一気に核融合技術の危険性が叫ばれる事態となった。


事態を重く見るEU、日本は事故後速やかに原因究明のため、合同チームを派遣し徹底的な調査を行った。そしてその結果、驚くべき事実が判明した。

事故当日、フランスの技術協力によって完成した核融合発電所が試運転を迎えたその日。韓国の技術者が、運転中の制御プログラムを盗み出そうとし、失敗。制御が不安定になり、過電流が発生。発電設備のタービンが加熱し、火災が発生したのだ。その火が燃え広がり、起動用電源の火力発電用燃料に引火し、爆発が起こったと、判明した。


調査の結果はすぐさま世界に公表され、韓国の国家ぐるみの背信に世界が一斉に非難を上げた。


核融合技術の無償提供は全ての国になされていたが、実際に核融合発電所を建設するには様々な難題があった。そのため、多くの国は確実な実績がある日本やフランスに建設を依頼し、導入を目指していた。建設の契約を結ぶ際、安全面から、導入国は、建設地の選定や、全ての部品、建設工程、制御方法等は建設を担当する企業に権利がある事、またその企業によって運営、保守点検される事が明記されていた。制御プログラムや制御システム、膨大なデータに関しては当然それぞれの企業の資産である。韓国はそれすらも手に入れようと画策していたのだ。結果、予期しない人為的なミスにより、制御プログラムは正常に機能することが出来ず、施設の爆発に繋がった。


韓国の背信行為を受け、フランスは核融合技術の提供を即時停止、信用失墜を招いたとして巨額の賠償金を韓国に対し請求した。

地球を騒がせたこの事件は、世界にとっては、いい出来事であったのかもしれない。何故なら、人為的なミスにより制御プログラムが正常に作動しない、という想定外の事態であったにもかかわらず、核融合炉自体は放射線漏れもなく、機械的損傷も無かった。制御を離れた核融合炉は即座に核融合反応を停止し、その安全性を完璧な形で証明して見せたのだ。


この事件の影響で、韓国が核融合技術を手にするのは人類が初めてこの技術を手にしてから実に40年という歳月が経った後であった。勿論この間に日本が支援をしなかったのはいうまでもない。


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