3-3-3.いよいよ修学旅行も終盤で③
―――それほど感も悪くないようだ。
目の前の赤髪のマッチョは・・・。
ここは海上のクルーザーの中だが船が大きいせいか揺れはそれほど感じない・・・快適ではある。この大型クルーザーには現在2人が乗船している・・・テログループ“ニルヴァーナ”の構成員ケーイレブンと・・・テログループ“ニルヴァーナ”のスリーセブンに化けている神明全である。
赤髪のマッチョは軽く操舵室の入り口の金属製のドアにもたれ腕ぐみをしている。
彼は戦闘途中とはいえ葵と戦ってほぼ無傷だったし、戦闘能力は高い。
対する僕は情報収集に忙しくて椅子に腰かけ、パソコンを片手に赤髪を振り返って見ている。単純なTMPAは彼の方が上だろう。
そのまま操舵室のドアにもたれつつケーイレブンは少し天井を見ながら話しだした。
「なるほど。ジョーのターゲットだったプリンス・アキラか。ジョーが昨日言ってたぜ。何考えてるか不明で一番要注意だってな・・・」
「ええ、知ってますよ」
目を閉じてケーイレブンは何か考えているようだ。
ジョーの帰りを待っているのだろうか。
対する僕は真名子の能力を借りてこのテロリストの一人であるスリーセブンと呼ばれる黒髪で全身黒い服の男に化けている。
こちらも椅子に腰かけたままでこの大男に相対している。
まあ村上君より背は低いし190センチくらいだろうか。
「なるほどなあ。ジョーを騙すのは並大抵ではない・・・一応聞くが、スリーセブンはどうした?」
「この世にはいません」
「だろうな・・・」
おや、もう少し驚くかと思ったが。
表情を変えずに赤髪は言う。
「この船からは出さん・・・」
「それはこっちのセリフですよ。気付いてますか?あなたがそのドアを閉めた時、結界を張りました・・・あなたこそ出られませんよ。決して・・・」
大げさに肩をすぼめながら赤髪はフーっとため息をはいている。
「なるほど、プリンス・・・ジョーはどうする?」
「ジョーさんは来ませんよ・・・」さてどう出るかな・・・。
「・・・理由を聞かせてもらえるか?」
「あなたを送って安心したんですよ・・」
あんまり分かっていないようだ。まあ仕方ないか。
話しの続きを聞きたいようだ。
「つまりね。ケーイレブンさん。さっきジョーさんは降魔六学園の上空からあなたをここへテレポートさせたでしょ・・・」
「させたな・・・」
「すぐそのあとで葵の攻撃をかわしつつジョーさんもここへ空間転移したんですよ・・・」
「それで・・・?」
うーん、まだ分からないか。
仕方ないのでもう少し説明する。
「つまり出現ポイントをジャミングして書き換えたわけです・・・テレポーター同士が戦う時に気をつけないといけない戦法ですね・・・貴方を無事に送り届けたから、躊躇なく自分の身体も20秒後にこのクルーザーの上空にテレポートさせたわけです」
「なるほどな・・・質問ついででわるいがではジョーは別の場所に自分の能力で転移んだわけだな・・・すぐここに来るんじゃあないのか?」
「それはないでしょうね」
「なぜそう言い切れる?」
「彼女の身体のテレポート先を五つに分けましたから―――」
「・・・なるほど。強制的な次元断層か・・・そうか・・・5等分されたか・・・」
ようやく理解してくれたかな。
軽く僕は頷いて見せる。
むこうも頷いている。
まあ邪魔者は来ないに越したことは無い。
「なるほど、だいたい理解した・・・プリンス・・・口うるさいジョーはもういないわけだ・・・偏屈屋のスリーセブンもな・・・スリーセブンはいつ倒した?」
「スリーセブンさんを倒したのは昨日ですよ、あなたが長いこと海を見ている間に・・・」
「なるほど・・・昨日の作戦会議のときはすでにプリンスと入れ替わっていたか。ジョーがプリンス・アキラは要注意だと言っているのを真横で聞いていたわけだ・・・それで俺がその後で、グリームアイ持ってるからってどうせガキだろ。大したことないだろう・・・そう言ったのも真横で聞いていたわけだ」
「そうなりますね・・・」グリームアイというのは竜王の霊眼のことだろう。
腕組みをしながらククッと少し笑っているようだ。
「なるほど、最後の質問だ・・・なぜ俺を最後に残した?選ぶ事ができたはずだ、そういう状況であれば・・・」
「倒すにしても、情報収集するにしても一番弱い人を残すべきでしょ・・・後の人は喋ってくれそうもなかったし・・・」
視界が揺らぐ・・・。
僕の目が悪いわけではない。
部屋が・・・操舵室が揺れている・・・もちろん波の影響じゃない。
メラメラと・・・魔力の回帰波がケーイレブン周囲に集まっている。
覚悟を決めたいい目だ・・・。葵と戦っていた時の比じゃないな・・・。
世界最強クラスの魔力が爆発寸前だ。
こちらも向こうも手加減しないのであれば・・・。
まさに真剣勝負・・・。
ドアにもたれている男の表情はあまり変わっていない、だが霊眼も発動させていないが恐ろしい圧力を感じる。
周囲の景色がさらに歪んで見える。
「この部屋から逃がさないと言ったな・・・プリンス?」
「ええ、あなたは出られません」
・・・操舵室の計器類が勝手にめちゃくちゃに動き出している・・・。
床も天井も振動で一部がめくれあがってきている。
街中であれば半径1キロほどが消し飛ぶくらいの魔法出力だ・・・ケーイレブンを中心にまだ上がっている。
だが僕は冷静だ。
(うーん、これに霊眼の能力が上乗せされるのか・・・予想よりちょっと・・・上かな・・・)
操舵室だけじゃない・・・船全体が揺れている・・・霊眼で見ると周囲の海も船を中心に放射状に波ができている・・・こんな時に何だが美しい・・・幾何学的で美しい。
あまりの魔力の上昇に・・・周囲の景色がさらにさらに歪んでいく。
どんな技にしても巻き込まれれば並みの召喚戦士なんて一撃でバラバラになるだろう。
・・・大型クルーザーは少しずつ上昇して空へ浮いた・・・海に広がる放射状の波は大渦となり・・・その中心に大型クルーザーは浮いている・・・。船体の塗装が崩れていく・・・。
操舵室は眩い光に包まれて・・・。
船全体が光り輝いていく。
眩いばかりの閃光と共に細切れになり船は破壊されていく。
ゴッッッッッッッッッッッッ!!!
カッ!!!!
光と共に知覚可能なすべての海が爆発した・・・。
数十万トンもの水が巨大で真っ白い水の柱を形成して持ち上げられて轟音が鳴り響いた・
ザザザー!!!
持ち上げられた海水が降ってくる・・・。
―――水は飛沫をあげて滝のように降り注ぎ、静かな海に戻るまで数十秒かかっただろうか。
―――1人の体格の大きい召喚戦士が海の上に空中浮遊している・・・全身を黒い魔装で覆っているが破損してボロボロである・・・、兜部分は半分ほども消し飛んで赤髪がはみ出ている。血がにじんでいる。
「ハア、グ!・・・ハア・・・ハア、ハア・・ハア・・・ハァ・・・」
クルーザーは粉々になって破片すら周囲にはほとんどない。
―――赤髪の戦士の息は荒らく肩が上下している。
「見たか・・クソが・・・ハァハァ・・・ハァ。見たか・・これが“エスタラ”だ」
「爆発系の覚醒魔法ですよね・・・」
独り言っぽかったが返事をしておくことにした。
彼の目の前にフィーネの鎧を纏った僕が出現している・・・。
この鎧は女性用だし、自分は髪長いし・・・女性に見えるよな・・・分かっているんだけど。騎竜“モルネ”が蛹から孵らないと・・・新しい魔装鎧を今作っても作り直しになるし・・・。
性能は悪くないんだけどな、フィーネの戦乙女の鎧は・・・。
そしてこの大爆発の中、僕は無傷だ・・・。
「っち・・・無事かよ、プリンス・・・だがなあ・・・部屋からは出てやったぜ」
「僕の友人に行動抑制の上手な奴がいて、少し見習おうと思いましてね」
まあもうネタバレしてもいいだろう。
「・・・?」
「つまり、ケーイレブンさん・・・操舵室から出れない、逃がさないと言えば、貴方ならどうやってでも強引に脱出しようとするでしょう?あの部屋の結界は閉じ込める結界ではなくて攻撃魔法を本人へ跳ね返す結界なわけですよ・・・それだけではなくて、回復魔術の無効化や能力の低下・・・魔力の消費量の非効率化・・・等々ありまして・・・」
「・・・なるほどそれで回復しないわけか・・・」
行動の抑制・・・アフロを見習ったがスマートさに欠けるかな・。
―――自分の全力の覚醒魔法攻撃を何割か跳ね返されて、魔装は破損、予想の数倍の魔力消費・・・重症なのに回復魔術、回復抗術はしばらく無効化・・・出血も魔術では止められない。
さらに僕は説明しておく。
「様子見で・・・一撃弱い魔法を天井か床にでも撃つべきでしたね・・・だから貴方をえらんだんですよ。敵勢力の行動抑制・・・言う程簡単ではないですが・・・」
彼はボロボロの自分の身体を不思議そうに見ている・・・だが闘争心の低下はなさそうだ。
「・・・スリーセブンもジョーも俺も一人で片付ける気か・・・この非常さ・・・おまえ本当に平和な国の高校生か・・・?」
「5歳の頃から僕はずっと戦時中ですよ。“ゲヘナ”にも言いましたが襲撃にも備えたほうがいいですよ・・・襲撃するだけじゃなくってね」
対峙している大男は明らかに重症だ・・・気迫は全く衰えていないが・・・黒川有栖のこともある・・・計算通りいかないのも人間だ・・・それもインハイで学習した。
アフロのように天賦の才はないが、僕の人生は残り少ない・・・相手の行動抑制くらいできなければ何もできないし、何も残せない。
「・・・俺はまだ負けてねえ・・・プリンス」
「もちろんですよ。それよりファーザー・ドールってどんな能力ですか?」
驚きつつも赤髪の戦士は右手に魔力を集中しているが先ほどの比ではない・・・つまり大した出力では撃てないだろう、予想通りだ。
タイミングは悪くない・・・ヴィジョンアイで見ている僕は冷静に分析する。
「がぁあああああ!!」
右腕から発射された火炎系クラスター魔法は・・・僕の身体をすり抜け海に着弾して爆炎を上げている・・・。
もう高速で僕は彼を中心に楕円軌道で避けている。
「強力なテレパシストですか・・・ファーザー・ドールとマザー・フォックス・・・その2人がリーダーなんですね。ドールさんへの信頼が厚い・・・みたいですね」
周囲には何もない海上で僕とケーイレブンはプカプカ浮いて話をしている。
彼には高速で飛んで魔法攻撃をし続けるだけの体力も魔力ももうない、葵との激戦も尾を引いているわけだ。
ほぼ計算通りと言えるだろう。
「おまえ・・・攻撃して来ないつもりだな・・・」
「見え見えのカウンターがあるからしませんよ。“ニルヴァーナ”の世界各地の拠点はだいたい分かりました。一晩中調べられましたからね。そのグリームアイでしたっけ。その能力を持っているのはあと何人ですか・・・」
これは真剣勝負・・・なのだ・・・戦い方は違うが。
「おまえ・・・」
「ふーん、30人もいるんですか?そんなに王家の子孫が?」
「おまえ俺の心を読んでいるのか・・・」
お?初めて動揺が感じられる・・・。
これもよい実験結果になりそうだ・・・霊眼持ちの心を読む・・・。
「そう、竜族の召喚士は精神感応的な術はききにくい、さらにあなたは霊眼持ちで心は非常に読みにくい状態ですが・・・僕はドールさんほどじゃないですけど読心は可能なようです。これも貴方を残した理由です。“ニルヴァーナ”とやり合うなら情報がいりますからね。スリーセブンさんはまったく読心不可能でしたし、ジョーさんは隙が無い・・・戦闘になり、お互いテレポーター同士で・・・鬼ごっこになるでしょうから時間の無駄です・・・あなたは読心されないような魔術か抗術を身につけておくべきでしたね。それ以外のガード方法も友人と練習中ですが・・・」
彼は戦士で・・・一流の戦士なら死ぬのは怖くないだろう・・・だが自分の頭から情報が抜き取られるのは・・・大きな抵抗があるようだ。
(あれっ?)
ボンッ!!
それほど音は派手じゃなかった・・・。
残された魔力でケーイレブンは自分で自分の頭部を攻撃したようだ・・・。
ゆっくりと海へ落ちていった。
うーん。自傷行為は想定外・・・。
(まあ霊眼持ちの心を読むのは至難だが可能だったし・・・行動抑制を試すにはいい相手だったか・・・そして優秀なメンバーで構成された先遣隊が全滅で“ニルヴァーナ”はすぐに第二部隊を送って来るとは思い難い・・・)
「それにしても・・・ケーイレブンさん、念話で誰かと会話していたな・・・戦士系なのにそんな能力が・・・なにかで念話をブーストしているな・・・どこだろう・・・あ、その前に・・・」
緩やかに僕は海上に降り立つ・・・抗術の一種だ。
滑るように歩いて波間に浮いているケーイレブンの所へ行く・・・。
(脳の損傷次第だがもう少し心が読めないだろうか・・・接触テレパスならもっと心の深部まで潜れるかもしれない)
―――夕日に海が眩しい。
特殊な結界を張って僕は重力に逆らい上昇していく・・・海上保安庁のヘリコプターが魔力爆発を起こした海上の捜査にようやくきたようだ。
まあクルーザーの破片から何か分かるということももうないだろう。
―――僕の身体はそのまま音速を越えて上昇を続けていく。
結界周囲はオレンジに輝いているようだ。
大量の空気とともにどんどん上昇だ。
結界には放射線を防ぐ効果を足してある。
十分上昇した・・・成層圏を抜けたのだ・・・。
霊眼で目標を確認する。
宇宙空間だ・・・重力を感じない。
僕の左眼は紫に輝く・・・。
あの西園寺桔梗を倒した技だ。
竜殺槍の先端にありったけの魔力を集中する。
「一点集中。“基線細撃粒子貫通咆”」
槍の先から高出力のビームだ・・・まっすぐにエネルギー波は突き進む。
大気中と違って恐ろしい射程距離になっている。
霊眼で目標物を捕らえているから外すことは無い。
―――着弾だ・・・。
全長30メートルほどの静止衛星は音もたてずに爆発した。
どうも静止衛星を経由して念話を増幅していたようだ。
スリーセブンも静止衛星から降魔の地をスパイしていたようだし。
(ニルヴァーナに関係ありそうな会社の静止衛星はすべて古代竜語魔法で破壊しておこう、念のため。それにしても正解だった・・・地上からは減衰するしエネルギー波をコントロールしても少し曲がるため破壊困難だったのだが、やっぱり宇宙に出たのは正解だった・・・)
―――非常に静かな真っ暗闇の中・・・。
ゴツッと豪快に石の塊に頭をぶつけている・・・音は反響している。
「痛え!なんだここは・・・地獄か?」
静かな闇とは程遠い、ウルサイ男の声が響く。
「ああ全くもう騒がしい・・・ほらね。噂をすれば・・・嫌な予感はよく当たるのだ」
今度は静かな男性の声がする・・・周囲は完全な闇である。
「なんだ?誰かいるのか!なんだここは!」
ウルサイ方の男は声量を落とそうとか考えないようだ。
「全く、集中できないじゃないか・・・肉食はこれだから良くないんだ」
静かに皮肉を語っている男は壁にもたれて座っているようだ。
「なんだあ!?はああああ?天国か?地獄か?」
「どちらでもないわ・・・ケー」
静かな空間に今度は清涼感漂う女性の声が静かに響く。
騒がしい声の主は赤髪のテロリスト、ケーイレブンである。
「・・・おおお?おお!その声はジョ、ジョーか?」
「全く君はどんな時も騒がしい・・・」
「その人を食った喋り方はスリーセブンだな・・・おまえら・・・生きてんのか・・・いや死んでんのか・・・」
思いがけずケーイレブンとスリーセブン、そしてジョーは真っ暗闇の空間の中、再会したのだった。
「生きているに決まっているでしょう・・・静かにしなさい、ケー」
「全く筋肉ばかりで品が無い・・・」
ケーイレブン以外の2人はとても冷静だ。
「なんだ・・・おまえら・・・生きてんのかよ・・・なんだ・・・まじか・・・まじかよ」
真っ暗で見えないが赤髪の顔・・・熱いものが目から溢れているようだ。
「いきなり何?ケー」
「泣いているみたいだね、ジョー・・・やれやれ厄介だ、とにかく騒がしい。こうやって静けさは破壊されていくのだ」
「バカヤロー、俺はてっきり・・・泣いてねえよ!バカヤロー」
全く光が無いため視力には自信があるケーイレブンだが全く周囲が見えては来ない。
「予測しよう。プリンス・アキラに手も足も出ずに負けてここに転移されたと、そんな感じだろうね」
「・・・ああ、そうだ・・・プリンス・アキラだ・・・そうなのか・・・そうだ、なんだあのバケモノは・・・」
「そう、ケー・・・負けたのね。残念ね」
「そうか。予想通り負けたのか・・・ジョー、賭けは僕の勝ちだね」
すこしずつケーイレブンは落ち着いてきたようだ。
どうやら石で四方を仕切られた四角い部屋にいるようだ。
「あのな・・・ここはどこなんだ?真っ暗じゃねえか」
バカにされるかと思ったが聞かずに入れなかった・・・まだまだ理解不可能なのだ。
明かりの下でも全身黒い服に包まれているスリーセブンは仕方なく説明する気のようだ。
「ここは古い石棺のなかだね・・・石棺にしては広いけれどね。4000年前の王家のお墓の中のようだね」
「ケー、ここはアンステーブルよ・・・」
「おまえら・・・分かるように話してくれ・・・」
ケーイレブンも墓の2人のように壁にもたれて座ることにした。
―――次元環アンステーブル・・・現在は次元環ポラリスと呼ばれている・・・異次元を漂う4000年前の都市“フランヴィーネ”の一部である。御所と呼ばれる王家の墓地である。
ここは“ニルヴァーナ”にとってはある意味、特別な場所なのだ。
次元環ポラリスは西園寺グループが管理しているが公的には存在すら隠されているのだ。
つまり西園寺グループがポラリスを発見し独占しているわけだ、これは国際法違反である。
4000年前の次元環の遺物には非常に強力なマジックアイテムや禁呪があり、現代でも危険すぎて研究が進んでいないものもある。この王家の墓地はそういった危険な遺物の宝庫なのだ。
「そうか、ここか。探しても見つからないわけだ。Xシリーズは異次元で作られてやがったか」
「そうよ。ケー。世界中の研究施設を襲撃して“母の無い子”を救ってきたけれど最後の一ヵ所は分からなかった」
「それがここというわけだ、ケー。だからとにかく静かにしたまえ・・・」
と言われても何故・・・自分が、ジョーも・・・いやいやスリーセブンも何故生きているんだ?
「いやちょっと待て。分からねえことだらけだ・・・よく考えたらお前ら2人とも偉そうにしてるけど負けたんだよな、あのプリンス・アキラに・・・だからここに転移させられたんだろ?俺はなんで生きているんだ?」
「そんなことは問題にならない、これからどうするか、だ。・・・ここに焦点を注ぐべきだろうね」
もともとケーイレブンはスリーセブンが一番苦手だ・・・今回、どうやらもっと苦手な人間ができたようだが。
「スリーは話にならない。ジョー、元の場所にテレポートで出ようぜ。あのバケモノ王子からは十分離れたところに出してくれ」
「次元跳躍能力はないわ。テレポートでは帰れません」
「それぐらい分かりそうなものじゃないか。ケー」
赤髪の大男以外は全く動く気配がない。
「テレポートできないならできないで、こんな辛気臭いところぶっ壊して早く出ようぜ!いくぜ!」
「ああ!待ちなさい!ケー!」
「・・・ああ?なんでだよ?」
「これだから肉食は脳がおかしい・・・」
「いやいやお前・・・ジョーだって食ってるぞ・・・」
「君に説明しても分からないかもしれないが、ここはポラリスの研究施設の真下で出ればハチの巣だね、防衛システムはとても高度なレベル・・・突破するのは困難で・・・」
「さらにね。ケー。上にはGE持ちが数えると80人はいるわ・・・Xシリーズでしょうけれどね。テレポートではポラリスからは出れないし、この石棺からは出れても探知されるわ。結局、テレポートできることもバレるでしょう?」
「まじか。80人も弟たちが・・・いるのか?もう起きてるのが80人か?」
「80対3だよ・・・無謀だね」
「ふん!あのバケモノ王子でなけりゃ怖くないぜ・・・」
「・・・珍しいねジョー。ケーが負けを認めているよ」
「よっぽど怖い目にあったのね。いつもだったらリベンジに燃えそうだけれど?」
「いやあれはな・・・あの王子は見た目は美少女だが、中身は別モンだぜ・・・全く隙がねえ・・・人間かアレは・・・」
「ふーん、会って喋りたかったわ。2人が羨ましい・・私は突然ここに飛ばされたから・・・そしたらもうスリーセブンがここにいたわけよ」
「ふっ・・・」
「なんだよ、カッコつけてるけどよ、おまえも人のこと言えねえじゃねえか」
「戦術的撤退は時として必要だよ。まあ君には分からないだろうけどね・・・」
「で、どうするんだ?じゃあ」
「待つわ・・・」
「プリンス・アキラが言ったんだ。近日中にここ・・・ポラリスでニルヴァーナとXシリーズの全面戦争が起きると・・・」
「まじか・・・いや、それまじか?・・・本当にしても近日中っておまえら・・・信じてんのか?つうか・・・それまで待つ気かよ?腹減って死ぬぜ・・・」
「ふむ・・・水は合成できるし・・・」
「空気はバレないように私が入れ替えるわ・・・プリンスは食料も置いてくれたみたいだし」
「食料・・・このゴロゴロ置いてある袋のことか・・・これは・・・ポテトか・・・生の?」
「まあ数日なら特に問題ないと考えるのが妥当だね、まあ潜入してのミッションだと思えば全然問題ない・・・音を立てないようにね、ケー。われわれの最重要任務と言えるだろう、弟たちを解放しなければならない」
「ゆっくり待ちましょう・・・キリマンジャロの地下での戦闘よりずっとマシでしょう?ケー。あんまり騒がないでね・・・」
「いや、お前ら・・・マジか・・・この石棺のなかで3人で何日も過ごす気か・・・?ポテトも生だぜ・・・酒もねえし・・・マジでか・・・俺は文明人だぜ・・・」
―――星が降り注ぐ世界。
予想の斜め上の光景は僕の網膜に焼き付いてる。
さてボーッとしているいる暇はない。
宇宙空間を飛び回りニルヴァーナが関係してるっぽい静止衛星もいくつか撃墜したし・・・
そして僕は地球を見ながら思案に暮れる・・・取り敢えず第6高校に帰るか・・・。
もどってアフロと計画を練らないとな・・・。ニルヴァーナと西園寺グループを戦わせよう、共倒れでいいし。




