閑話.地蔵峠の激闘はアバンチュールに大爆発 前編
2055年4月・・・。
時代は世紀末的な感じで風雲急を告げていた。
天は裂け地も裂けるような感じでだ。
降魔六学園の南西の位置に第5高校がある、その名は降魔金星高校であるが総生徒数1389名の当然男子校である。
降魔六学園の中でもまさに異彩を放つ高校である・・・二つの応援団の一部の特権階級の者が富や権力のすべてを手にしていた。
その学園の一番奥にある第一体育館は重苦しい雰囲気にあった。
―――ここは第5高校で最も大きな建物である・・・本丸と言ってもいい。
入り口も窓も締め切られており、照明も暗い。
一番奥に二つの椅子・・・まさに装飾からも大きさからも玉座と呼んで差し支えないものがあり、かなり巨大な人物が二人腰かけている。
そしその左右には綺麗に整列した学生服を来た男たちが足を肩幅に広げて立っている・・・全部で50名ほどの金星男子校の幹部たちだ。
現在閣議中なのである。
ただし今話しているのはその巨大な2人の人物だけである。
「第3高校3回生、降魔十傑の纐纈は豪傑だ・・・」
「その通り、気奴を破る1回生というのはにわかには信じられん・・・」
「が、事実であれば第5高校へ転校させる必要がある!」
「来るべき暴君・西園寺桔梗との最終究極決戦のため、是が非でも必要である!」
左側の椅子に座る人物の目がキラリと輝く。
「角田よ!そのものを第5高校へ編入させよ!」
角田と呼ばれたのは二つの玉座に一番近くに直立して立っている男子生徒のことだ。摂政のようなものだろう。
「ははーっ!」
とは言ったものの、角田の額には大粒の汗がにじみ出ている。
「し、しかしお言葉でございますが。如月葵は・・・ぉんなではないかと・・・」
「頼んだぞ!角田ぁ!」
「は、ははーっ!」
玉座に腰かけているのは第5高校を取り仕切る泣く子も黙る“ガリバー兄弟”である。
玉座の右に座すは神取秀武、生徒会長であり応援団(根性)の団長でもある。
その左に腰かけているのは瀬川春木、副生徒会長で応援団(黒潮)の団長である。
“ガリバー兄弟”は第5高校では教師ですら手出しできないピラミッドの頂点・・・最強の存在である。第5高校の生徒は全員が応援団“根性”か“黒潮”どちらかに属さなければならないのだ。
2人とも身長190センチを超えており、学ランの両肩から先はちぎれており逞しい腕が飛び出ている。
胸元も開き鍛え上げた大胸筋がはみ出ている、頭部は何故か剃っている。
双子のように見えるが全く血は繋がっていない。
・・・そこに学生服が穴だらけで血が付いている小柄な男子生徒が足を引きずりながら走り寄り片膝をついて報告した。
周りの男子生徒らに制止されたが跪く男子生徒は言う。
「神取さま、瀬川さま。恐れながら申し上げます、本日自分を含む本校の生徒が複数ヵ所で襲撃されました、重症者多数です」
玉座の一番近くに直立し長ランを来た男子生徒、角田が答えている。
「そのようなくだらん話しを持ってくるでない!お二人はお忙しいのだ!貴様らで対処せい!」
暗い体育館の中で怒声がこだまする。
左右にずらっとならぶ男たちは微動だにしない。
「し、しかし。どうやら憎き宿敵“ジュウェリーズ”の組織的な襲撃のようでございます」
いっきに体育館内はザワる・・・。
―――やはり!―――
―――なんだと―――
―――約定はどうなっている―――
―――魔女どもめ―――
・・・それだけは話しが別なのだ・・・。
急に体育館内は何℃も暑くなったかのような錯覚を受ける。
どうやらこの閣議は角田が進行役のようだ。
「間違いないのか!」
「ははっ!間違いございません」
銅像のように動かなかった神取と瀬川が少し動く。
静かに瀬川が話しだした、周りの50名ほどの取り巻きは汗を垂らしながら固唾をのんでいる。
「休戦の約定は破られた・・・!兄弟よ、是非もない・・・」
そして神取が劇画タッチに玉座から立ち上がった。
「・・・戦の準備をせよ・・・根絶やしにするのだ・・・雌狐め!」
そしてもう一言付け加えた・・・。
「・・・あれを使う時が来たようだ・・・」
「まさか兄弟・・・あれを・・・」
―――休戦の約定が破られた―――
この大ニュースは瞬く間に第5高校を電撃のごとく駆け抜けた。
―――戦になるぞ―――
―――1回生は下校禁止!禁止である!―――
―――戦闘に備えろ!―――
―――ククク!これを待っていたのだ!―――
第4高校の降魔翠盛女学園と第5高校の降魔金星男子校は犬猿の仲なのだ。
私闘が絶えず・・・重症者も数知れない・・・。
戦闘で散っていったものは数知れず・・・無数の墓標があるらしい・・・。
まあ命を落としたものはいないらしいが。
そして退学者も数名でたために、第1高校生徒会長にして降魔六学園総生徒会長にして召喚戦闘の高校生チャンピオンである西園寺桔梗サマにド叱られて、第4高校と第5高校は生徒会長同士が・・・つまり蜂野薫子と神取秀武の間で・・・細かな取り決めが検討されて休戦条約が結ばれたのだ・・・その約定がなんと破られたのである。
・・・大事件だ。
平和な時代は一陣の風と共に未来永劫終わりをつげたのである。
まあ、ちなみに休戦の約束をしたのは5日くらい前だけど・・・。
僕こと・・神明全には全然関係ないけどね。
どうやら第5高校と第4高校は戦争になるようだ。
面白いからしばらく成り行きを霊眼で安全な所から覗いて見よう。
先日、第3高校も如月葵が降魔十傑の纐纈守人を倒したせいで大盛り上がりだが・・・。今日は少し気になることがあるのだ。
とにかく戦闘が盛り上がるといいなぁ・・・。
―――第4高校、降魔翠盛女学園は降魔六学園の南に位置しており、総生徒数1032名のお嬢様学校である―――
校舎まで上品で外には彫刻が多数・・・校舎内は様々な調度品が並んでいる。
「アハハ。そろそろ話してくださいよぉ由良さん」
昼間から会議室でワイワイ話しをしているのは第4高校を牛耳っているアライアンス“ジュウェリーズ”のメンバー数名だ、一部の幹部しかいない。
幹部が全員集められる定例会は数日先である。
軽快なトーンでピンクツインテールのキツネ目のリーダーである城嶋由良に話しかけている声が聞こえる。城嶋由良は副生徒会長だがこの第4高校の影の総帥と言っていい。
4月の行事である第一高校内で早朝から開催される“総生徒会”から帰ってきてからずっと由良は機嫌が悪いのだ。話しかけているまん丸いリツコは、あまり刺激しないようには気を付けている・・・まあ理由は大抵分かっている・・・世紀末覇王である西園寺桔梗に脅され叱られたのに決まっている。
「全く、菫子は無断欠席しているし・・・職務怠慢だわ。あれで生徒会長なんてね」
「はやく生徒会長になってくださいよぉ・・・由良さん。あんな女は罠にはめましょうよぉ」
「何かいい手はないの?ホント、生徒会長失格だわ」
「そうですねぇ。リツコの集めた情報だとぉ。穂村恵美とできてるらしいですよぉ」
ピンクツインテールは一瞬考えたがフルフルと頭を振った。
「そんなのでは弱いわね」
「あとぉ、何かぁ妙な会合に出席しているらしいですよぉ、穂村が誘っていたみたいですぅ」
椅子に斜めに腰かけている由良は少し首を傾けた。
「まさかそれで欠席したんじゃないでしょうね、何の集まりよ?」
「わっかんないですねぇ。あ、別件で報告がありますぅ・・・ざっといきますとぉ・・・新入生ですけどぉ入部希望者が殺到していますぅ、家柄を調べてから入部試験を行いますぅ、2高の五色曼荼羅からまた依頼がきていますぅ、あとメイコにカレシができましたぁ、それから1-Bの教室で下着ドロボーが出たらしいですぅ、それからぁ、カームフルのイケメン辞めたみたいですぅ、でも連絡先はわかりますぅ・・・」
球体のリツコの報告は続いている。
「菫子の関係しているのはないの?あの女のせいでひどい目にあったのよ・・・」
「生徒会長のネタはないですねぇ。華聯さんは何て言っていますかぁ」
花屋敷華聯は第4高校最強の女子生徒である・・・常に由良の命令で動いているのだ。“神の目”を持ち諜報活動も神がかっている。
急に由良はスッと立ち上がった・・・何か思いついたようだ。
「ああ、いいかもしれないわ。下着ドロボーね。第5高校の犯人を捕まえましょう」
「えぇ?男子校のゴリラたちが犯人とは決まっていませんよぉ?」
「いいのよ。誰でもいいから攻撃して犯人にしたてましょう、それで菫子が勝手に作ってくれた休戦条約とやらを破棄してしまいましょう」
その手があったかとばかりにリツコは手を叩いた。
「・・・さすが由良さん。えぐいですねぇ。全部生徒会長のせいにすればいいですもんねぇ」
「善は急げよ、リツコ。攻撃部隊を編成しなさい。イライラするし時代錯誤のキモイ猿たちをついでに駆逐しまくりましょう」
「・・・はい、もう送信しましたぁ。15分もすれば下着ドロボーの犯人を何人か逮捕できると思いますぅ・・・」
「さすがね・・仕事が早いわ。リツコ」
―――そして戦いの火ぶたは切って落とされたのである。
その日の午後、“ジュウェリーズ”メンバーは魔装して下校中の第5高校生徒を数か所で突然襲撃した。
その襲われた一人がガリバー兄弟たちが閣議中だった体育館に逃げ込んだのだ。
第5高校にはサイレンが鳴り響いて生徒たちは武装蜂起した。仇敵の“ジュウェリーズ”を迎え撃つのだ。
30名ほどの“ジュウェリーズ”に対し“根性”“黒潮”の応援団メンバーは100名前後で応戦したが光角結界をはりつつ遠距離攻撃主体で戦う魔女たちに苦戦を強いられていた。
基本的に5高の戦士にとって後退は負けであり戦術よりも心意気を重視していたのだ。
敵前逃亡は重罪であり前線の戦士は敵である“ジュウェリーズ”よりも粛清を恐れていた。
機動力にも優れる“ジュウェリーズ”は隊列を乱さずに後退しながら応戦していた。
長ランの角田が陣頭指揮をとっているが被害は拡大するばかりで敗戦濃厚であると5高生たちが思い始めていたところ・・・。
「神取さま、瀬川さま!雌狐どもは予想通り地蔵峠に誘いましてございます」
神取は筋肉の塊のような腕を組んだまま無言で頷いた。
それを見て角田は右手をスッと上げた。
―――地蔵峠では爆炎が上がっていた。
後退しながら戦っていた“ジュウェリーズ”だが突然背後から火だるまの伏兵が現れて特攻を仕掛けてきたのだ。
「リツコ・・・どうなっているの?囲まれているみたいね」
「どうやらぁ、そうみたいですねぇ・・応援団“根性”の幹部たちみたいですぅ・・・」
「どうして見落としたの?珍しいわね・・・」
「あいつらぁ・・・土に埋まって待ち伏せしていたみたいですぅ・・・」
丸っこい体形のリツコはあまり慌てていないが“ジュウェリーズ”も数名が負傷している。
「完全に囲まれましたね。リツコ。円陣を組ませなさい。応援も呼びなさい・・・それと・・・華聯さん、緊急事態です。ヘルプをお願い・・・」
由良は誰も居ない中空に向かって話しかけている。
花屋敷華聯は長身の女性で第4高校最強である・・・近くにはいないようだが戦闘では由良の右腕として、普段は“神の目”を使って諜報活動に勤しんでいて近くにはいないようだ。
地蔵峠は小高い山だが木々が生い茂り岩肌の露出もあり、肉眼では死角が多いため危険を承知で植物の少ないやや開けた平らな場所に“ジュウェリーズ”は陣を作った。連戦連勝だった“ジュウェリーズ”にしては珍しい展開だ。
四方八方から制度は低いが第五高校魔法砲撃班から攻撃を受けているが現在は防御結界のために大きな被害は免れている。
30名ほどの“ジュウェリーズ”は円陣を組み防御結界を球体に変換し負傷者を円の中心で回復させつつ遠距離戦で相手を近づけさせない戦法だ。
だが今回ばかりは多勢に無勢であり魔力に限界があることを考えると持久戦はミスチョイスである可能性が高い。
第5高校の戦士は増員され200人超が戦闘に参加して、30名の女性戦士を取り囲んでいた。
まさに女子高対男子校のバトルはクライマックスを迎えようとしていた。
―――だが魔法砲撃の爆発音が止んでいる。
このまま物量作戦で第5高校に軍配が上がるかと思われたが、突如第5高校からの魔法砲撃と火だるま特攻攻撃は止んだ。
2人の巨体がゆっくりと茂みの中から出てきて“ジュウェリーズ”の女戦士たちが造っている円陣に近づいてきた。
「みなさん・・撃たないように。私が話をします・・・リツコは着いてきてね」
「はぁい、由良さまぁ」
荒涼とした風が吹く中、第5高校の支配者ガリバー兄弟と第4高校の支配者である城嶋由良と付き人のリツコの計4名は静かな緊張感の中で相対することになった。
「約定を破ったな!雌狐め!今日こそ息の根を止めてくれるわ!!!」
「約定を破ったな!雌狐め!今日こそ息の根を止めてくれるわ!!!」
何故かガリバー兄弟はハモっている。
「約定を破ったのはそちらが先でしょう!あなた方が下着泥棒をかくまっていることは分かっています・・・隠し立てするとタダではすみませんよ!」
第5高校に犯人がいる確証も何も無いのに由良は自信満々に言い切った。
「今日にでも第5高校の校長先生に言いつけますからね、性犯罪者をかくまうんですね?同罪ですよ!!」
・・・。
筋肉の塊のガリバー兄弟は頭を捻っていたが突然喋り出した。
「訳の分からないことをいうな!」
「誰が犯人か・・・訳の分からに事を・・・」
「瀬川!!噛んだな!!鉄拳制裁ぃぃぃぃいいいい!!!」
ゴスッ!!!
瀬川と呼ばれたガリバー兄弟の片割れは何故か殴られて鼻血を出して負傷した。
「今日は貴様に贈り物があるのだ!!!あれを持ってこい!!!」
「今日は貴様に贈り物があるのだ!!!あれを持ってこい!!!」
数名の第5高生徒が大きな青い樽と巨大ハンマーを持ってきた。
ガリバー兄弟の片割れ神取が巨大ハンマーを軽々と持ち構える。
「聞け!!!由良よ!!!これはコンヒュージョン爆弾グレートである!!!爆発すれば周囲の者共は大混乱必死であるぅ!!!」
「聞け!!!由良よ!!!これはコンヒュージョン君デラックスである!!!爆発すれば周囲の者共は大混乱するので・・・必死であるぅ!!!」
―――どうやら爆発させてほしくなければ全員無条件降伏し投降せよということのようである。意味が僕には分からないけど・・・。あと瀬川さん噛んでるんじゃ?名前はグレートなのかデラックスなのか・・・?
丸っこいリツコが小声で喋っている
「ここで爆発させたらあの筋肉ゴリラたちも混乱しませんか?罠ですよね?由良さまぁ?でも向こうの方がこのまま続ければ優勢だったのにぃ」
「もうすぐ華聯さんが別動隊と来るはずです。時間を稼ぎましょう・・・バカで助かったわね」
さらに小声で由良はヒソヒソ返答している。
そして一歩、ピンクツインテールの女帝・城嶋由良が前に出た。
ガリバー兄弟は2人とも一歩下がった・・・ひょっとしてビビっているんじゃ・・・。
「いいでしょう。お2人とも。ただし無条件降伏するにはいくつか条件があります。いいですね?まず我々は女性です。手を触れるのは厳禁です。分かっていますよね?捕虜の扱いに関しては―――」
ガリバー兄弟は頷いている・・・けど。
無条件降伏に条件を付けるのか・・・由良の方が頭良さそうだな、かなり。
その刹那、崖の上から放物線を描いて4人のいるあたりに落ちてきたものがある。
最初に気付いたのはリツコだった。
「あ!由良さまぁ!」
だが遅かった。
落下物が何か僕の霊眼ははっきりと捉えていた。
パッと見は石像だ・・・直立して合掌しておりお地蔵さんに見えなくもない・・・。
チュッドォォォ――――ンンン!!!
その石像はハゲ頭からコンヒュージョン爆弾デラックスに突っ込んでそして・・・大爆発が起きた・・・あたり一帯に煙が充満した。
見えていた僕にも謎だ。
(え??“Z班”の青木くんじゃないか・・・石化して飛び込んでくるなんて・・・ってなんで?)




