4-2. 賎民調教犬チ・ワーワ
この物語はフィクションです。
作中の人物・団体などの名称は全て架空のものであり、
特定の事件・事象とも一切関係はありません。
その中継映像では公園内を動き回る人影がアップになった。
サトウが公園で出会った上半身だけムキムキの車椅子の男だ。
男は逆立ちのまま賎民調教犬チ・ワーワから逃げて回っている。
賎民調教犬チ・ワーワ。
賎民とは下級国民。主にFランクの人々のことを指す。
調教犬とは言うが、単に狂犬病に感染させられた小型犬のことである。専ら上級国民が下級国民を襲わせるときに用いられる。
一応、狂犬病に感染させてもいい犬種が定められており、チ・ワーワとパ・グーの二種となっている。
「へへっ、やるじゃないですか」
逆立ちでチ・ワーワから逃げる男を見ながら、サトウは鼻を擦る。
やはりあの男の筋肉は飾りではなかったのだ。例え歩いたことが無くとも、その太い両腕さえあればあの男はどこへ行ってもやっていけるはずだ。
『『行けぇえええ!やれっ!やれぇ!差せぇえええ!噛めっ!噛めぇ!』』
取っ組み合って喧嘩していたはずのコメンテーター二人が肩を組んでチ・ワーワのことを応援し出した。
全く、あの男が負けるわけがないだろう。何のための筋肉だと思っているんだ。とサトウが思ったところで突如テレビ画面が真っ暗になった。
「!?」
「あラ。画面消えちゃったナ」
「せっかく応援してたのに。何とか直せません?」
「このテレビも古いからナ。ヨンケー対応とかいウ、化石みたいなテレビだからヨ」
「犬が可愛いからって不謹慎だぞ。応援なんて」
「あの犬が可愛いわけないでしょ!逆立ちのほうだよ!」
「いや、可愛いだろ。チ・ワーワ」
「結構近い距離で見たけど目とかガンギマってたし、何ていうの?アルカイックスマイル?みたいな顔で迫ってきて怖かったよ」
「まるで見てきたみたいだな。あの場で」
「まぁ、さっきまであの場に居たからねぇ」
イナガキとワンが飛び上がるようにサトウから距離を取る。
二人の突然の行動に、サトウが怪訝な顔で注意する。
「何ですか、突然はしゃがないでくださいよ」
「サトゥ。噛まれてないだろうナ」
「は?」
「噛まれてないだろうな。あの犬に」
「噛まれてないですって。そもそも狂犬病って人から人に感染するんでしたっけ」
サトウの言葉に「驚かせやがって」というようなリアクションをしながら二人がテレビ前に戻る。
イナガキはテレビの主電源ボタンを何度か押したり、背面を軽く叩いたりしてテレビの再起動を試みるも、テレビは沈黙したままだった。
こんな話を書きましたが犬派です。猫は怖くて触れないので。
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