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リアルで女声で無口な僕が幻想美少女に!?~美少女Vチューバー達にヴァーチャルワールドでは愛されて困っているボクのゲーム実況録~  作者: 鮎咲亜沙
第10章 幻想の花嫁

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#281幕間:井上莉緒「私の後輩たちはVチューバー」

「紫雲院先輩! 卒業おめでとうございます!」

「ありがとう。 新生徒会長がんばれ烈戸くん」


 こうして私はこの1年間ロケで通い続けたこの学び舎の校門から、次の一歩を歩き出すのであった⋯⋯。




「──はい、カ~~トッ!」


 監督の声とカチンコの音が響く。

 緊張の一瞬だ。


「⋯⋯はい、オッケー! 撮影終了です!」

「終わったー!」


 そう私はその場で崩れ落ちそうなのをスタッフに支えてもらった。


「大丈夫ですか井上さん!?」

「うん⋯⋯なんとかね」


 私、井上莉緒はアクション俳優である。

 そして今の仕事は『校則戦隊セイトカイジャー』の紫雲院麗華役だった。


「やっとおわった⋯⋯」


 そう倒れこむ私はうっすら汗をにじませている⋯⋯。

 その原因はこの番組の終盤に行われた撮影で起こった事故が原因だったのだ。


 私がちょ~とやらかして高台から落下して足を骨折したのだった。

 アクションシーンはスーツアクターさんが居るから何とかなったが、こうして中の人の撮影中はギプスを巻いた足を映さないアングルでなんとかしのいだのである。


 まあそんな努力もあってこの『校則戦隊セイトカイジャー』は戦隊シリーズの中でも大傑作として歴史に刻まれたのだった!


 ⋯⋯だけど。

 この怪我が原因で私のアクション俳優としてのキャリアは終わった。


 こうして井上莉緒18歳の夢は終わったのだった⋯⋯。




 それからの私は何となく大学に通いながら普通の人に⋯⋯戻れなかった。


 うん⋯⋯セイトカイジャーという顔出しの仕事のせいでどこに行ってもサインを求められる⋯⋯そんな人生が続いたからだ。


「私が紫雲院さんだと思われるのはちょっとねえ⋯⋯」


 自分で言うのもなんだけど私は⋯⋯完璧超人だった紫雲院麗華とは全く違うズボラな一般人である。

 なのでその世間とのギャップに苦しむことになる。


 俳優を引退してもなおヒーローとして演じることを求められる人生⋯⋯。


 しかし辛いとは思わないんだなこれが!

 だって私は根っからの役者なのだから!

 むしろ苦痛だったのはもう舞台に上がれないこの体の方だったくらいだ。


「あ~演技したい! もっと世間から注目された~い!」


 そう、私は一般人に戻りたくなど無かったのである。

 そこで私は声優にシフトチェンジしてみることにしたのだった。


 元アクション俳優からの声優挑戦。

 しかしながら私が所属していたヴィアラッテア総合芸能事務所には声優科もあったのでスムーズに話は進んだ。

 こうして声優、井上莉緒が誕生したのだった。


 声優としての私はまあ⋯⋯中堅くらいのパッとしない立ち位置だった。

 しかし演じることこそ我が人生な私にとってはわりとどうでもいい事だった。

 ⋯⋯ところが!


「こんどのリリカルエンジェルのオーディションに参加してみないか?」

「は~い! やりま~す!」


 そう気楽に受けた仕事である。


 このリリカルエンジェルも私が参加した戦隊シリーズと同じくニチアサで20年も続けているご長寿シリーズである。


「⋯⋯ヒーローか」


 もう二度と演じることは無いと思っていた正義の味方役。

 それを今度は声優で出来るかもしれない。


 私自身にはそこまでヒーローにこだわりがあると言うほどではない。

 しかし⋯⋯遊園地でのヒーローショウで応援に来てくれた子供たちの反応は大好物だったりする。


 とくに印象的だったのはわざわざ海外から来てくれた銀髪の外国人の女の子までが夢中になって応援してくれた事だった。

 あれは嬉しかったなあ~!


「⋯⋯いっちょ本気でやってみますか」


 こうして私はこのリリカルエンジェルのオーディションに合格したのだった。


 しかしまあ⋯⋯このリリカルエンジェルというか今回の『リリカルエンジェル・Vチューバー』がとんでもない現場だと私が理解したのは、このしばらく後だった。




「あの⋯⋯星野ゆめこ役のVチューバー、アリスです⋯⋯。 その⋯⋯よろしく」


「あ~。 虹原かなみ役の井上莉緒です。 ⋯⋯⋯⋯キミ、男の子だよねえ?」


「⋯⋯はい」


 違和感すさまじい⋯⋯。

 脳が理解を拒むよ、だって私好みのキュン萌えな美少年クンからキュートな美少女ボイスが出ているんだもん。


「その⋯⋯1年間よろしくお願いしますね」


 私はその少年の手を取って。


「すばらしい才能だねその声は! 羨ましいよ!」


 そう私は言った。

 本心20%、そして残りの60%は打算だった。

 この1年間この少年とコンビを組みのだから仲良くなるための。


 残りの20%?

 そんなのカワイイ少年と握手する口実にきまってるじゃん!


 そんな私の演技ですが⋯⋯なにか?

 私は嘘を悪いとは思わない。

 悪いのは人を騙して傷つける事だ。


「はい! よろしく井上さん!」

「莉緒でいいよ! アリス君!」


 嘘からはじまる出会いだってあるさ、この世界にはさ。


 こうして私は上っ面のつもりだったこのVチューバーアリスと仕事をとおして⋯⋯本当に仲良くなるのだった。

 そうすると雑談なんかも増えてくる。


「へー、アリス君はまだ高校生なんだ! 若いなあ⋯⋯」

「そんな莉緒さんも若いじゃないですか!」


「もう24歳だよ私⋯⋯ああ、青春の学生時代が懐かしい」

「24歳ってボクの姉と同い年じゃないですか。 あ⋯⋯まだ23だっけギリ?」


「あれ? アリス君はお姉さん居るんだ?」

「はい。 Vチューバーマロンの中の人です」


 あー、その人は知ってる!


「うそ!? マロンってまだ23歳なの! 30歳くらいのオバサンかと思ってた!」

「ですよね! あははは!」


 そんな雑談の中から知る新事実!


「え!? アリス君って青海高校なの?」

「はい、それがなにか?」


「私、そこの卒業生なんだよね」

「そうだったんですか!」


 まったく人の縁とはわからない。


「私が青海高校に入学した時にすごい生徒会長が居てね⋯⋯エキセントリックだったなあ、あの人は」


 やたらと色んなイベントを企画して全校生徒を巻き込んだ問題ある生徒会長だった。

 おかげで翌年からは生徒会長という役職そのものが学校から消えたくらいに。


 ⋯⋯あの人、名前なんだっけ? わすれた。


「紫雲院麗華もけっこうエキセントリックだったような?」

「あはは! 後半はね! けっこう真似した、その生徒会長の!」


 うん、役者なんだし使えるものは使わないとね。


「紫雲院さんも最初は完璧超人なお嬢様だと思ってたけど、後半はだんだんキャラがはっちゃけてきて面白かったですよ」


「ありがとー!」


 ふふ⋯⋯嬉しいもんだ、こうして私の演技が評価されるのはさ。


「ところでアクション俳優は辞めたんですね?」

「ちょーと怪我してね」


「残念でしたね⋯⋯」

「なんで?」


「だってあんなに演技上手かったのに」

「演技ならしてるよ、今も声優として。 いいんじゃない? 夢は形を変えても続いていくものさ」


 まあ、すべての人がそうとは限らないけどね。


「夢か⋯⋯ルーミアの夢をボクが奪ってしまって⋯⋯」


 あ⋯⋯アリスのトラウマスイッチが入った⋯⋯めんどくさいヤツが。


「何回も言ったけどさあ⋯⋯アリス君がその声でルーミアちゃんの役を奪えるわけないでしょ? ぜんぜんタイプが違うんだし。 だから奪ったとしたらむしろ私の方だよ」


「そうかもしれないし⋯⋯そうじゃないかもしれないし⋯⋯」


 うわーめんどくせえ奴~!


 でも私は嘘つきだからね、言わないよ。

 あのルーミアをモブの役に使うわけないじゃん、あれ絶対に追加戦士になるキャラでしょ。

 そう私は確信していたのだった。


 だからまあこのアリス君とは深刻さがぜんぜん違うんだよね~、まあ他人事だしね、私はどこまで行っても。


 私もそれなりにこの業界は長い。

 だから監督の考えはなんとなく読めている、きっと素人のアリス君に先入観を持たせないでモブのルーミアと演じさせるためなんだろう⋯⋯たぶん。


「ルーミアは才能あるよ、声優の。 私よりも人気出るんじゃないかな? そのうちに」


 わりと本心である。

 というか私はあんまり他人との人気の比較を気にしないタイプである。

 大事なのは自分がファンからどう見られるかである!


「だといいけど⋯⋯」


「もっと彼女を信じてあげなさいアリス君!」

「か、彼女!? いやボクとルーミアはつき合ってるわけじゃ⋯⋯まだ!?」


「あれ? そうなの?」


 ⋯⋯いや、思いっきりラブラブじゃんアンタ達。

 は~めんどくさいカップルだね~。


「そ、それよりもボクの友達の子が莉緒さんの大ファンで!」


「その子もVチューバー?」

「ええ! マスクド・ブルーベルの中の人で!」


 ごまかすの必死だねアリス君。

 まあそれは置いといて~。


「あー、あのヒーローオタクのVチューバーで有名な子じゃん! そっかー、私のファンなんだその子」


「それで話したら会いたいなーとか言ってましたよ」

「ほうほう⋯⋯」


 うーん、でも会うのは難しいかも?

 ⋯⋯そうだ!


「アリス君⋯⋯もうすぐ文化祭だよね、青海高校の」

「はい、そうですけど?」


「私の妹もそこの生徒なんだけど⋯⋯こんど文化祭に呼ばれててさ。 それでそこでなら会えるかも」

「そうなんですか! じゃあちょうど良かった! そのブルーベルもそこの生徒なんで!」


 ⋯⋯どうなってるのかな、私の母校?

 なぜそんなVチューバーの巣窟になっている?


「じゃあ文化祭で私と握手だね! そう伝えておいてねブルーベルに」

「はい! そうしますね」


 こうして私とアリス君は仲良くこの仕事を続けるのだった。


 そしてもう1人⋯⋯も。




 リリカルエンジェル・Vチューバーの収録開始から2か月たった頃だった。


「天宮える役のルーミアです。 今日からよろしくお願いします!」


 やっぱりこうなった。

 そして──。


「ルーミア! 良かった~!」

「ちょっとアリス!? 抱きつかないで! みんなが見てるし!?」


 ⋯⋯これでつき合ってないのこの2人? ⋯⋯マジで?


 私はそんな若いお二人さんから目をはなして台本のチェックを始める。


 あの子たちはあの子たち。

 私は私だ。


 そしてふと⋯⋯台本に書かれていたキャスト名簿に目が行った。


 星野ゆめこ: VCアリス。

 虹原かなみ: VC井上莉緒。

 天宮える : VCルーミア。


「ふーん。 ゆめ、かな、える⋯⋯か」


 これは私にとってはずっと続いていく声優としてのお仕事のほんのひとつのエピソードでしかない。

 でも⋯⋯私のキャリアを彩る、すばらしい1年間の奇跡でもある。

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