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幸い土地の端に小さな川があって、脱水で死ぬことは免れた。けれど、そう遠くない未来に用意された食糧が尽きてしまうことは明白だった。
生きるために、ほんの昨日一昨日まで学んでいた知識を、最大限に活用することとなった。慣れない農作業に体はすぐ限界を訴えたけれど、休んでいる間などなくて、固く乾いた土を耕し、何の植物かわからない種をまいた。腹いっぱい食べたいところを我慢して、少しの食べ物と沢山の水で空腹をごまかして。種をまき、水をやり、土を耕し、また種をまいて、水をやって、時々見えない壁を越えようとあがいてみて、空が暗くなると同時に疲れ果てて眠った。
何日も繰り返したその日々の間に、考えた。ここはどこで、私はどうしてここにいるのか。もう、逃避はできなかった。……ここは絶対、日本ではない。外国でもない。地球上のどこでもない。突拍子もないことだけれど、ここは私の世界とは、異なる世界。
考える毎日の中、私を訪ねる者はなかった。いくつかの種が発芽し、またいくつかは何日経っても芽吹く気配すらなくて、ただ生きるため以外の目的もない異世界の一日が、刻一刻と過ぎていく。食糧はもう一掴みほどでなくなってしまう。芽吹いた植物は当然、まだ本葉すら数枚出した程度だった。それから数日、水ばかりで飢えをしのぐのにも限界はきた。
私はその日、生まれて初めて、土がついたままの苗を夢中になって貪った。




