表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
なんで僕が!?  作者: へたれ度100%
38/79

布石

一夜が明けた。

昨日のせいで、喉がまだ若干痛い。


今日も絆同盟と学校まできたわけだが・・・

今日にはある作戦を実行する。

作戦名「空駆ける天馬」作戦。


ちなみに格好良い名前だな、と思った人。

・・・合唱曲からとった名前だ。

別に僕たちが考えた名前ではない。


そして、作戦自体の内容もまったく「空駆ける天馬」と関係のないことである。

この作戦には第3形態まであるわけだが・・・


まずその第1形態を開始するためにここまでやってきた。


絆同盟の皆は生徒会本部会議室の前に立つ。

いわば「殴りこみ」ということだ。

今や「絆同盟」は「殴りこみ」は大の得意となっていた。


「はい、おやすみなさいです。」


「シュ~」というスプレーの音がきこえる。

・・・いつもながら、見事な手際である。

時津風が竹刀で、生徒会警備部の武器を弾き、ひるんだところに「催眠スプレー」を放つ。


これは問題行動だが・・・

これは考え方の問題である。


今日、我々絆同盟は登校時に監視部につけられ・・・

生徒会室前に来たとたんに、警備部に襲われたのである。

いわば正当防衛といえる。



「・・・なんで襲い掛かってきたのでしょう?話しをするだけなのですが・・・」

「おそらく・・・「ベータ」が発動されたんだろう。」


川中が言う。



「ベータ」。

通称「戦闘態勢」。

生徒会の権限の1つで、緊急警備体制のことをいう。


生徒会が危険度レベル4以上で、なおかつ生徒会が「敵」と認識し、その「敵」が多数いるときに発動されるものである。


これが発動されると、どの公共施設も使用不能となる上に、生徒会監視部の監視が付く。

さらに、生徒会警備部には攻撃の許可がでる。

「追い払う」のではなく、「叩きのめす」ことで、生徒会の権力を象徴する、というのが目的らしい。




「ケッ・・・「戦闘態勢」まで発動してくるとは・・・いよいよ生徒会も本気となったわけだな。」


なんて時津風が苦笑する。



「まぁ、襲ってくれば眠らせればいいだけです。」


中島・・・

簡単にいってくれるが、時津風だって結構大変なんだぞ?




「まぁ、実際ここの警備部を眠らせちまったし、これで2回目だ。生徒会が「ガンマ」を始動するのも、時間の問題だな。」



「ガンマ」。

通称「生徒会の宣戦布告」。

普段は「宣戦布告」と呼ばれている。


生徒会が、「ベータ」で対処できない。

注意したのに、きかない・・・

というときに使う権限。

いわば、生徒会危機レベル「5」。

・・・MAXの危機レベルである。


生徒会そのものが、その組織に対し、宣戦布告することを意味するわけだが・・・

面倒なのは、「治安維持部」が動き出すこと。

「治安維持部」は本来存在していない。

危機レベルMAXで「ガンマ」が発動されたときに、臨時で編成される「部」。

実際には戦闘専用の「部」なので、「部隊」といっても過言ではない。


「治安維持部」は運動部のみで編成されたる、いわば「霧島第3高校生徒会精鋭戦闘部隊」。

生徒会全体から、戦える運動部の連中を片っ端から、「治安維持部」にいれて、編成される「特殊部隊」ともいえる。

そいつらが、「治安維持」の名のもとに、いつどこから襲い掛かってくるかわからない。


「ガンマ」が発動されたとき、「治安維持部」は敵対している組織に何をしてもいいという臨時許可が出される。

代表格は「暴力」である。

唯一許されていないのが「殺人」のみ。

ルール無用の権限。


危険な芽は摘み取る。

邪魔者は力でねじ伏せる。

といった、「帝国主義」がモロにでている。


罪はすべて学校が打ち消すのである。

今まで世間に何度か公表されたことがあるが、すべて学校側の働きにより、被害者の勝手な妄想ということになっているらしい。


今までに「ガンマ」をだされた組織の連中は「フルボッコ」にあうことは確実らしい・・・


「ベータ」はあくまで、警備のために攻撃してくるわけだが・・・

「ガンマ」はあっちから、無差別に攻撃してくる。

生徒会の本気モード炸裂である。


これが皆が生徒会を恐れている真の理由である。

退学よりもずっと恐ろしい権限である。




「怖いですねぇ~。」


いや、中島・・・

スプレー缶を上下に振りながら、微笑むお前のほうが怖いよ・・・

いつ眠らされるかわかったもんじゃない。




「やはり・・・問題なのは、生徒会のそんな勝手な行動を学校が許してるってところだな。」


将軍は言う。


確かにその通りである。

せめて学校が味方についてくれれば、生徒会の動きもだいぶ制限される。

が!!

それでも、学校がとめられるのは、暴力行為のみ。

それは先生たちが教師として、生徒を注意するのであって・・・

「退学」までは阻止できないが・・・

学校側だって、世間に9人でこの秘密をいわれたらかなわないだろう。

・・・おそらく退学はないが・・・




「チッ・・・厄介な学校にきちまったもんだぜ。」

「ホントだっぺね。」



ったく・・・

まぁ、そのおかげで絆同盟と戦えるんだがな。

やりあうなら全力ってか・・・



「まぁ、家に帰るまでは全員かたまっていこう。」

「そうだな。さて・・・「空駆ける天馬作戦」始動といきますか!!」


これを始動すれば確実に生徒会は「ガンマ」をだしてくるが・・・

なぁに、こっちには剣道のできる「時津風」もいれば、腹黒女までいる。

なんとかなるだろう。



「まぁ、「ガンマ」があがれば、お姫様がなんとかしてくれるだろ・・・」


え?

川中も何ができるのだろうか?



「みんな、川中は空手の黒帯だぜ?下手に触ると、首の骨をへし折られちまう・・・」

「・・・」


川中が時津風をにらむ。


というか・・・

この絆同盟って何気に野蛮だな・・・

こんなに肉食系が多かったんだ・・・



・・・待てよ。

黒帯?

・・・ヤバッ!!


もしかして、時津風が川中を「お姫様」って呼ぶのって・・・

これが怖いからか?



けど、時津風と川中の参戦は思ってた以上に頼りになるぜ。



「まぁ、ガンマが発動されれば・・・全員1つ何か武器を持つのが得策だろうな。」


と桶狭間が言う。


おいおい・・・

マジですか・・・

僕、体育苦手なんですけど?



「んじゃぁ、いきますか!!」



皆の覚悟が決まった。

・・・「空駆ける天馬作戦」第1形態発動である。


生徒会本部会議室のドアを思いっきりあける。

「ガンッ!」という音がする。



「よぉ、朝早くからご苦労なこったな。」


時津風が竹刀を片手に言う。



「お・お前たち!?」


川口は焦る。



「・・・」


そして、天王山がにらみ、生徒会幹部の連中が呆然としている。



「なぁ?ここら辺で「帝国主義」を解除してくれねぇか?」


桶狭間が言う。



「我々生徒会は誇りある組織だ。そんなことはできんな。」

「誇りある?だったら、汚ねぇ真似はしねぇよな?」


時津風が目を細めて言う。


「汚い?」

「あぁ、「ガンマ」だよ。」

「フッ、今まさにその話をしていたところだ。」


天王山は笑みを浮かべて言う。

いやいや・・・怖い人だぜ。



「やはり諸君らはこの学校では危険な存在だな。」

「いや、生徒会にとって・・・だろ?」


時津風が笑みを浮かべて言う。

笑みには笑みを・・・

ってか。



「・・・どうだろうな?学校はこちらについている。」

「おい、お前ら。「ガンマ」を出される前に、諦めろ。」


川口が言う。


「へっ、川口・・・警告サンキューな。けど・・・もう俺たちは道を決めてるっぺ。」

「あぁ、やるときになりゃぁ、やるしかねぇだろう。」


生徒会の連中は目を細める。

やべぇ・・・こいつはマジで「ガンマ」発動されるっぽいな・・・



「なぁ、もう一度きくぜ?・・・帝国主義を捨てないんだな?」

「あぁ。貴様らこそ・・・諦めないんだな?」



なんか・・・

冗談抜きでやめたくなってきたぜ・・・



「諦めてもなんにもならないからな。」

「フッ・・・理解した。」


すると、天王山が笑みを消し、真顔になった。



「全指揮可能部に緊急連絡!!これより「ガンマ」を始動する!!!」

「はい!!」


あちゃ~・・・


幹部たちはいっせいに立ち上がり、部屋から出て行く。

冗談じゃねぇぜ・・・おい。



「生徒会を敵にまわしたこと・・・後悔するといい。」


天王山が自信満々にいう。



「へっ・・・てめぇこそ、絆同盟を敵にまわしたこと・・・いつか後悔させてやるぜ。」


桶狭間・・・

いってることは格好良いが、挑発はよくないぜ・・・マジで。



絆同盟は生徒会本部会議室をあとにする。



「やっぱ・・・普通に頼んでもダメだったか。」

「冗談じゃねぇぜ・・・「宣戦布告」始動かよ・・・」

「後に、「治安維持部」の連中が襲い掛かってくるぜ・・・」



・・・やっちまったな・・・こりゃぁ・・・

そんな軽いノリでいえることじゃねぇが・・・

これはマジで怖いぜ。



「さて、「ガンマ始動」がみんなに広まんないうちに第2形態をサクッとこなしちゃおうぜ?」


今、やれることは1つのみ。

味方を増やす!

それだけだ。





「諸君、朝早くだがきいてほしい!!」


教室で桶狭間が大声をだす。

・・・昨日、あんなことがあったのに、よくそんなに大声をだせるもんだ。

僕は喉が痛くて痛くて・・・




「昨日、俺が集会で話したことを覚えているだろうか?」


そう・・・

それは、昨日の奇襲作戦の失敗をいかした作戦。


皆が「生徒会の権限」からの「恐怖」で立ち上がれない。

そういう結論がでた。


なら個別に少しずつ立ち上がらせれば、あとには勝手に立ち上がってくれる人もいるだろう。

みんなでやれば怖くないというやつである。


その第一歩として・・・

わずか2ヶ月だが、共にすごして来たクラスメイトを立ち上がらせることにする。




「・・・」


皆からの反応はやはり冷たい。



「昨日、俺はひとつ間違ったことをいった。それは俺一人が生徒会に宣戦布告するということだ。」


誰も立ち上がれないのなら・・・

仲間がいるということを自覚させればいい。



「俺には頼もしい仲間がいる。それが・・・こいつら、絆同盟だ。」


桶狭間が黒板の前に立っている僕たちを指指す。



「俺たち9人は生徒会に宣戦布告する。この歪んだ「帝国主義」を消し去り、この学校に華を咲かせるためだ。」


というか・・・

仲間がいないと、僕たち・・・

「フルボッコ」にあうんじゃぁ・・・



「先ほど生徒会に確認したが、帝国主義を捨てないときたもんだ!これでいいのか!?」

「俺たちはこんな生徒会の好き勝手にやらされてていいのかよ!?」


やはりダメだ・・・

どいつもこいつも生徒会が怖いらしい。

僕たちだって、怖いさ・・・

現に「ガンマ」が発動されたし・・・



「お前ら!どうか、立ち上がってくれ!!」


・・・しかし、誰一人と言葉を発しなかった。




2時間目終了後。

皆は他クラスの友達を手当たり次第に集めて、各自話をつける。

これが第3形態。


僕と五月雨も友達をつれて、ある会議室を1つ使って話す。



「・・・ということだ。」

「頼む、協力してくれ!!」

「・・・」



が、やはり友達は困っていた。

何しろ、生徒会とやりあうなんて・・・

命知らずもいいところである。




「共に「ひぐらし」で感動した仲じゃないか!!」

「・・・」



いくら小中高と同じの同級生も・・・

こればっかりはダメなのか・・・





そんなこんなであっという間に放課後がきてしまった。

結局、その日、誰一人動こうとはしてくれなかった。



「くっ・・・打つ手なし・・・か。」


関ヶ原が下を向く。



「・・・」


皆も下を向く。


もう明日には「ガンマ」が始動されたこが学校中に知れ渡っていることだろう。

つまり、明日になれば、話すことすら拒絶される可能性がある。

今日だけがチャンスだったってのに・・・


校長と桐山先生も、頑張って多くの先生を説得しているらしいが、あまり成果はでていないらしい。

そう・・・桐山先生からきいた。


やることなすこと、八方塞。

どこもかしこも、恐怖による洗脳。

どいつもこいつも、立ち上がろうとしない。



「・・・」


暗い空気となる。

昨日、校長と桐山先生がついたときの明るさとは裏腹である。


・・・こんなんじゃぁ・・・お得意のプラス思考も働かない。


どう・・・プラスに考えろというんだ?

やはり相手は「生徒会」。

所詮、僕たちのいっていることは実現不可能だったのだろうか・・・



「諦めるには また早すぎる~♪」

「!?」



すると、この暗い空気のなか、中島が歌を歌い始める。

これは・・・「Northen Lights」か。




「私の知っている曲の歌詞にこういうものがあります。」

「・・・」


皆は「だからなに?」という顔をしている。




「ホントに、諦めるにはまだ早すぎますよ・・・まだすべての手段が遮断されたわけじゃないですか。」

「・・・」

「それに・・・少なくても私たちはまだ退学していません。これだけのことをしでかしておいて、退学させられていないというのは、むしろ皆に勇気を与えているはずです。」


・・・たしかにそうだが・・・




「私たちは「絆同盟」。単なる同盟とは違います。・・・最後の最後まで奮闘しましょうよ。」


中島がにこやかにいう。



「奮闘・・・か。」



一騎当千・・・ってか。

1人1人が弱くても、9人もいれば大丈夫ってか・・・

9人だからこそ、強い力が出せる・・・




「一撃ヒットがダメなら連打あるのみ・・・って前に教えてくれた人がいます。」

「!」


・・・咲良が顔を上げた。

・・・こいつか、教えたの。



「連打攻撃なら、いくら頑丈な相手でもダメージが少しずつ蓄積していきます。」

「・・・」

「戦い続けることが、皆の勇気となるんですよ?」



一撃ヒットがダメなら・・・

連打あるのみ・・・か。


たしかにそうだな。

前原圭一。

お前も・・・そういってたな。




「私たちは退学覚悟済みです。それにいつ退学になるかわかりません。・・・なら、退学になるまでの間、連打攻撃を少しでもして、相手にダメージを与えませんか?」

「・・・はぁ・・・」



五月雨がため息をつく。




「まぁ、そうだな。何もしないよりは格段にマシだろう・・・な?みんな。」


そう五月雨が言う。



「・・・たしかにそうだな。」

「連打攻撃・・・か。まぁ、退屈よりはマシだろ。」



なんて皆が言い出す。

まぁ・・・せめてものやる気だしか。



「だな。それに「宣戦布告」がだされちまった以上・・・あとにはひけないだろ。」




すると足音が聞こえた。

皆の目つきがかわる。



「・・・おいでなさったか・・・」



「治安維持部」。

生徒会・・・

そんな暴力で、絆同盟は絶対にくじけない。

そうわかっているだろう・・・

わかっているのに、なぜ「治安維持部」を動かす?





生徒会本部会議室・・・



「・・・もうこの高校には一般生徒はいないだろうな?」

「確認済みです。」


「治安維持部」のリーダー。

1年にして、剣道部エース・・・

「陽炎」が言う。


「これ以上・・・生徒会の立場を危うくしてはならない!」


天王山は目を細める。



「治安維持部、全チーム、予定配置場所につきました。」

「これより、「闇討ち」を開始する。」




                          「布石」  完


なんか、暴力的になってきてしまいました・・・


・・・どうしましょ?(苦笑

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ