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プロローグ2


確かに彼人間であるというには大きな問題点がそこにあった。

「それに関しても、私がずっと生体反応を追跡して参りました。」

そう、真子は詠が生きているという印、生体反応のビーコンを20年間ずっと追っていた。

詠がこの世界に戻っているのもわかっていた。だから、短い休暇を装って帰宅した。自宅が出現地点を示していたから。

「確かにそのおかげで個体名『ヨミ』が野に放たれる事は無かったのだから。」

真子は驚いた。

「個体名で呼ぶなんて。詠を化物みたいに言わないで下さい。」

「これは失敬。君の心情を無視した言い方だったね。だがね。その個体名を付けたのはルーム対策局なのだよ。」

維新の話し方がゆっくりになる。そして、徐に真子に尋ねる。

「唯の一度も反応が消えた事は無かったかね。」

ハッとする真子。やや、口籠もりながら答える。

「・・・それは。」

確かにそういった事は幾度かあった。時には1週間程反応が無かった。

「あった様だね。」

真子の反応を見て維新は言葉を続ける。

「検査も追跡も曖昧な状態ではあれを個体名『ヨミ』と言うしかない。」

維新はソファーから立ち上がり、自分のデスクに向かう。

「しかし、今回の遭遇は君の20年間の執念のの賜物だ。彼を詠として君に預けよう。そして、現状復帰出来るよう教育して呉れ給え。君も積もる話も有るだろうしな。但し。」

維新はデスクの上に置いてあった1枚の紙を真子に差し出す。

「私の方で用意させてもらった戸籍だ。姓は変えさせてもらった。」

渡されたのは戸籍謄本だった。

「常世。」

「常世詠。なかなか良い名前だと思わないかね。」

一応尋ねているかの様に聞こえるが、有無を言わせない響きがある。

(自分の子供である事を抹消してる。)

と真子は思ったが、口には出さなかった。

彼ほどの立場になれば、諸々の事情が有るであろう事は理解できている。自分もその権力や財力等に世話になっている口だから。

「分かりました。ありがとうございます。精一杯務めさせていただきます。」

真子は立ち上がって書類を受け取り、深々と頭を下げた。

「ああ、期待している。くれぐれも手綱を誤らないように。」

真子に対する更なる戒めの言葉の後に小さく呟いたのを真子は聞き逃さなかった。

「光で影は消える。しかし、光が無いと影は生まれない。闇は影を産まない。」

しかし、それがどういう意味なのかは分からなかった。


1ヶ月後。

防衛省ルーム対策局本部ビル。通称WORセンタービルは高さ158メートル地上33階地下5階の建造物である。

本部ビルではあるが、その門戸は広く開放されている。地上1〜3階は様々な形態の飲食店が立ち並ぶフードフロア、4〜6階はルームに対する知識を身に付けて、対策局の活動を理解してもらう為の施設『ルーム資料博物館』となっている。

6階までは一般人も自由に利用出来るが、7階以上は関係者以外許可無く立ち入ることは出来ない。

7~33階の概要は、

7〜10階は対策局の事務処理担当のオフィス。

11~12階は行動班及びサポート班のオフィス。

13~14階はトレーニング、実技訓練のフロア。

15~16階はリラクゼーションスパ、休憩所、仮眠室、フードコートのフロア。(班及びサポート班限定)

17~18階はルーム情報収集分析及び作戦行動指令指示メインフロア。ルーム統括管理室もここにある。

20〜24階は第1擬似ルーム実験室。

25〜30階は第2擬似ルーム実験室。

19階は擬似ルーム実験室の機能を維持する為の機器や機材が収められているメンテナンスフロアとなっている。

31~33階は他のルームに侵入する際にルームのドアを強制的に開放する為の巨大な装置『トレスパス』が安置されている。

また、地下1~3階は駐車場。

4~5階はサーバフロアとなっている。


「どうかな。詠は。」

真子は育成担当の鈴木麗蘭に尋ねた。

詠の育成。本来なら自分が担当したかったが、私情が入るのは極力避けるべきと苦渋の決断を下し、6人兄弟の長女として5人の弟妹を乳幼児の頃から面倒みてきた経歴を買って麗蘭に担当してもらう事にした。

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