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第5話 勇者、潜る

ゴブリンの巣穴が発見されたので、ギルドでは退治のパーティを募っていた。

「なあ、アズモナ、参加しないか?」

野良のゴブリンたちは、人里から離れた場所に巣穴を作って、そこから人間の村を襲う。

巣穴は、大きいものもあれば、小さいものもある。

ゴブリンたちは、人間から奪ったものを、巣穴に持ち込んで貯め込んでいる。

そのゴブリンたちを退治し、巣穴に貯めこんだ宝を冒険者たちの報酬とするのである。

ゴブリンには、光るもの、とくに金貨を貯めこむ習性があり、結構な額になる場合もある。

ただ、宝の額はゴブリンを退治して、それを見てみるまではわからず、賭けでもあった。

レオンはこの退治に参加して、その賭けに乗りたいと考えたのだ。

「好きにすれば?」

アズモナがこう答えたので、レオンは参加することに決めた。


参加するパーティはレオンたちの他に5組だった。

トラース、クラーセン、コステル、メーデル、フリートのパーティ。

巣穴の近くで、ゴブリンに見つからないように、準備をする。

合同チームのリーダーのトラースがレオンに声をかけた。

「おまえのところのアズモナの力を借りたいんだけど…」

巣穴に入る攻撃の端緒を手伝って欲しいという。

報酬の増額を条件にアズモナを加えることを約束する。


コステルのパーティの魔術師のフランカが、コステルたちに注意を与えていた。

「メイス、剣はちゃんと研いでるの? 腕のカバーのひもが緩くなってるわ」

「わかってるよ」

「ルート、靴紐ちゃんと締めて」

ルートは彼らの仲間である。

「うるせーな、わかったよ」

イライラしながら、ルートがいった。

「おまえはオレのオフクロかよ! いちいち言うんじゃねえよ」

「だって、準備しておかないと、なにかあったら…」

「子供じゃねえんだよ!」

フランカが口うるさいことは有名だったので、これもまた日常の風景だった。


「そろそろ、始めるか」

メンバーの用意も終わったので、トラースがいった。

姿勢を低くして、ゴブリンたちの巣穴に近づく。

打合せ通りアズモナに合図すると、アズモナが呪文を唱え、ゴブリンの巣穴の入口に、火の玉を落とした。

見張りのゴブリンたちは黒こげとなった。

トラースたち上級レベルのパーティが、巣穴の中に入っていく。

レオンたちも、待っていたアズモナと合流して、後に続いた。


トラースたちは、ゴブリンたちを倒しながら、先へ進む。

レオンたちからは、もう見えなくなっていた。

アズモナがいった。

「いいけどさ、これじゃ分け前は、ほとんど上級レベルのパーティのものじゃない?」

ゴブリンに襲われる危険はないものの、これでは高い報酬は望めない。

内部で道が分かれていた。


「トラースたちは、右にいったみたいだから、オレたちは左にいこう」

ブラムとアズモナはうなづいた。

ゴブリンたちの地下迷宮には、侵入を防ぐための罠が仕掛けてある。

レオンとブラムは、それを恐れるあまり前に出す足が遅れていく。

自然、アズモナが前に出た。

「おい! 魔術師がいちばん前って、どういうことだよ!」

彼女が文句をいう。

「おまえら、勇者だろ!」

「だって、オレら、アズモナと違って、かよわいんだもん」

「うるせーわ! ちゃんと治癒してやるから、前へ出ろよ」

それでも、なかなか前へ出ようとしないレオンたちにアズモナがいった。

「おまえら、なにしに来たんだよ。経験を積まなきゃダメだろ!」

「…わかったよ。しっかり助けてくれよ」


おそるおそる前へ出るレオン。

そこに罠の仕掛け矢が飛んできて、レオンの頭に刺さる。

「アズモナ!」

アズモナが治療する。

また歩き出すレオン。


ゴト…

レオンが踏んだ地面に音がして、床が崩れ落ちる。

レオンは真っ逆さま。

穴の下にある槍に、彼はカラダを突き抜かれていた。

「アズモナ!」

アズモナが治療する。

また歩き出すレオン。


ガチ…

またレオンが踏んだ石が音を立てた。

背後から大きな音が聞こえる。

ゴゴゴゴゴゴゴゴ…

振り返ると、巨大な丸い岩が3人に転がってくる。

「うわーッ!!」

レオンは叫んだ。

「アズモナァ!!」


アズモナがなんとか止めた岩から逃れて、3人は息をついていた。

「はぁ、はぁ、はぁ…」

喘ぎながら、アズモナがいう。

「アンタ、全部罠に引っかかってんじゃないの!」

ブラムもいった。

「これはこれで才能だな…」


道がまた合流していた。

歩いていくと、女の悲鳴が聞こえる。

「きゃあああっ!!」

レオンたちは身がまえた。

「誰か! 誰か!」

女の悲鳴に混じって、ゴブリンたちの声が聞こえた。

レオンがいう。

「襲われてるぞ! 助けよう!」

「女だもんな…」

アズモナが冷静にいった。

「おまえね…オレは…べつに…そういうつもりじゃ…」

「わかってるよ、行け!」

レオンは飛び出した。

女に遅いかかるゴブリンを剣で倒す。

ゴブリンは集団で、10匹はいた。

ブラムも加勢する。

アズモナは魔法でゴブリンの動きを止め、2人を援護する。

格闘の末、ゴブリンを全員倒した。


女はコステルのパーティのあの口うるさいフランカだった。

コステルのパーティは、待ち伏せしていたゴブリンに不意打ちをくらったのだ。

フランカは青ざめて、口がきけない状態だった。

周りを探すと、コステルとルートが倒れていた。

すでに息はなく、アズモナでも蘇生ができない状態だった。


それを見たフランカがいった。

「みんな…、みんな、死んでしまった… 準備してたのに、みんな、ムダだった…」

レオンはこう答えるのが精いっぱいだった。

「そんなことないよ…」


フランカを1人で置いていけないので、レオンが彼女を支えて、奥に進んでいく。

アズモナが前へ出て、道を切りひらいた。

仕掛け矢が飛んでこようが、落とし穴があろうが、アズモナは魔法でそのすべてを防いだ。

それを見ていたフランカがつぶやいた。

「ムチャクチャだわ… 計画も準備もなにもない…」

そして、涙を流しながらいった。

「でも… 魔法の力があれば、なんでもできる…」


うしろめたさを感じたレオンがアズモナにいった。

「アズモナ。なにか手伝おうか?」

「?」

事情のわからないアズモナは、不思議に思ったが、レオンにいった。

「じゃあ、前に出て」

レオンは、フランカをブラムに預けて、アズモナの前を歩いた。


ゴト…

レオンの踏んだ石が音を立てて、地面が崩れ落ちる。

「ギャーッ!!」

落とし穴にレオンは真っ逆さま。

「アズモナ!!」

底の槍で串刺しになったレオンが叫ぶ。

アズモナは舌打ちしながらいった。

「手間を増やしやがって…」


巣の奥に着くと、すでにゴブリンの退治は終わっていた。

トラースがゴブリンの貯めこんでいた金貨を見つけている。

報酬として分け前が与えられた。

レオンたちは、金貨5枚。

25万マニーである。

フランカには金貨2枚。


フランカが金貨を見ながらいった。

「こればかりのお金のために、メイスたちは死んだのね…」

レオンが彼女にいった。

「そんなことはないよ。これでまわりの村にゴブリンの被害はなくなるんだから… コステルたちの死は、決してムダなんかじゃない…みんなのためになったんだ…」

フランカがレオンを見る。

「たしかに… そのとおりだけど…」

彼女は立ち上がった。

顔が怒っている。

「おまえが… おまえが、偉そうに、語るなーッ!!」

レオンの頬に、フランカのパンチがさく裂した。

彼は、その場に倒れる。

「な…、なんで?」

フランカは去っていった。


「帰るか…」

ブラムがそういうと、レオンたちは立ち上がった。

外に出る道を歩く。


ゴト…

レオンがまた落とし穴には引っかかった。

「ギャーッ!!」

アズモナがつぶやく。

「いいかげん学習しろよ…」


                       einde

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