第4話 勇者、惑う
「ちょっとレオン、いる?」
宿屋の部屋をノックをするアズモナ。
しかし、部屋からの返事はない。
そこで、ブラムの部屋に行ってみると、ブラムはいた。
「レオンが部屋にないんだけど、どこにいったか知ってる?」
「さあ、わからないな。最近、ホーレン・パーティの人たちと仲がいいらしいけど… 急ぎの用か?」
「いや、べつに、大した用じゃないんだけど、ちょっと仕事のことで聞きたいことがあったからさ…」
「明日でもいいのか?」
「まあね…」
このまま帰っても良かったのだが、アズモナはブラムに気になっていることをきいてみた。
「どうでもいいんだけどさ、アイツ最近ハリキリすぎじゃない?」
「まあ、今日も仕事が終わったあとに、なんか段取り付けてたみたいだな。1人でできる仕事も入れてるみたいだし」
「でしょ」
「オレら、前は働きたくても働けなかったし、アズモナが来てくれたおかげで、今は仕事が入ってくるようになったからかな。稼げるうちに稼ぎたいんじゃないか?」
「べつにいいんだけどさ…」
「気になるようだったら、オレからもいっとくよ」
「いや、ホント、なんでもないんだけどさ。ちょっと気になったから」
今日も今日とて、仕事である。
野良ドラゴン退治の依頼。
レオンの目の下にクマがあるのを、アズモナは見つけた。
「アンタさ、ちゃんと寝てる?」
「ああ、寝てるさ」
「ホント?」
「本当だよ! 仕事には支障ないよ。ちゃんと働くから」
「そんなこと、いってないわよ。アンタ、大丈夫なのっていってんのよ」
「今は、大事なときなんだよ。ドンドン仕事取って、信用作って、それがさらにまた仕事を呼んでくるんだよ」
「わかってるけどさあ」
以前はドラゴン退治に、他のパーティの力を借りていたレオンたちだったが、今では3人だけで仕事をこなせるようになっていた。
このパーティは、成長しているのだった。
「ちょっと、レオン?」
部屋をノックすると、今日もレオンはいなかった。
「ブラム?」
そして、今日はブラムもいなかった。
「2人でいないのか…」
昼、部屋に行くと、レオンは帰ってきていた。
「昨日、どこ行ってたのよ?」
「仕事だよ。決まってるだろ」
眠そうな目をしてレオンが答える。
部屋から出て洗面所に歩いていくと、ブラムもやってきた。
「ブラムも一緒?」
「ああ、そうだよ」
ブラムは目をこすりながら、答えた。
「あんな夜遅くに仕事なんかあるの?」
「あのなあ、仕事っていっても、カラダ使って働くだけが仕事じゃないんだよ。つきあいだよ」
「つきあいって?」
「仕事を回してもらうために、他のパーティの人たちと、いろいろ付き合っていかなきゃいけないんだよ」
「飲んでたの?」
質問をしつこくされて、レオンは少しイライラとした様子で、アズモナにいった。
「ただ酒を飲みに行ってるわけじゃねえよ。仕事のやり方の細かいトコとか、教えてもらえるし。飲みに行くとな、そこでないと話してくれないこととかあるんだよ!」
「声でかいよ。うるさいな。わかったわよ」
ノックすると、今夜も2人の部屋から返事はなかった。
「今日もいないし…」
アズモナは寂しそうに独りごとをいった。
「また、1人でメシ食いに行くか…」
宿屋から出て、彼女は1人で道を歩く。
数軒ある食堂を物色していると、前を歩いている見覚えのある風体の男を見つけた。
レオンとブラムである。
「アイツら、今日も「つきあい」か…」
しかし、2人の周りには誰もいない。
「…アイツらだけじゃん」
アズモナは2人の後を追う。
「どこ行くんだ?」
2人は楽しそうに話し合いながら、道を歩いていく。
「なに話してんだ? アイツら…」
そして、2人はどんどん明かりのあやしげな路地に入った。
2人は、オプルフトという名前の店に立った。
半裸の女性たちが、2人の腕に手をまわす。
レオンたちはニヤケた顔で、少し会話をすると、女たちと腕を組んで店の中に入っていった。
看板には、1時間1万マニーとか書いてある。
「これ、売春宿じゃん!」
アズモナが後を追うと、店の中に後ろ姿で去っていくレオンとブラムの姿が見えた。
「なにやってんだ! オマエらッ!!」
聞き覚えのある声で、振り返った2人の目に、怒りに震えるアズモナの姿が見えた。
「あ! あ! お! お! おまえ! なんで、こんなとこにいるんだ?!」
「それは、こっちのセリフだよ! なにがつきあいだよ! おまえら、セックスしたいだけだったのかよ!」
レオンがいった。
「ちがう! オレは気付いたんだ!! どんなにコセコセと金を貯めても、ただ金を貯めてるやつには幸せは訪れないッ!!」
「?」
「ただそこにあるだけじゃ、金は人を幸せにはしないんだッ!!」
レオンは握りこぶしをつくるといった。
「金は使われてこそ、人を幸せにする…」
そして、その拳を突き上げていった。
「そして人間にとって、本当の幸せとは、数多くの女とセックスすることと、旨いもんを食うことなんだああッ!!!」
実に堂々とした様子だった。
「おまえ、心底うすっぺらいな…」
まだレオンは続ける。
「友情とか、誠実な愛が大事という奴もいる! しかし、そんな奴らは、本当の快楽を知らないだけだ!! 快楽だけがすべてなんだああっ!!!」
「はよ死ねよ…」
アズモナはつぶやいた。
アズモナは、店の中の2人に近づく。
レオンたちの胸を指で突くと、恥ずかしそうにいった。
「なによ。アンタたち…」
頬を赤く染めたアズモナがいいにくそうに、レオンの目を見上げていう。
「…アタシだって、女なんだぞ…」
レオンは、アズモナを見つめるといった。
「まさか、おまえ、オレたちのこと…」
アズモナは目を伏せると、レオンの胸を指で突いた。
「…わかってるくせに」
…そのあとのことは、ここでは書けない。
しかし、レオンたちは、今までの快楽を、はるかに超える快楽を味わった…
…そして気が付くと、レオンは店の花瓶と、ブラムは店の階段の手すりと抱き合っていた。
「…なーんて、するわけないでしょ」
2人は抱いていたものを、即座に手放した。
「すべては幻想魔法よ」
「…ええ、そうでしょうね。でも、きっとウソだとわかっていても、そうでなければいいと思ってしまうものなんですよ、人間って」
「うるせーわ」
「しかし、幻想がこんなに気持ちが良いものだなんて…」
ブラムも同じ気持ちだったようだ。
「高い金使ってセックスするのが、アホらしくなってくるぜ…」
2人は見つめあうといった。
「自分でヤるのに、勝るセックスなしってことか…」
宿屋に帰りながら、2人は呪文のように唱えるのだった。
「しょーもない。セックスなんて、しょーもない」
2人を見ながら、アズモナは思った。
「まあ、結果オーライかな…」
einde




