第9話 勇者、引き合わせる
「…じつは、相談があるんだ」
ここはギルドに近い喫茶店。
レオンは、ブラムとアズモナを呼び出していた。
「なによ、相談? バウマンとかにまたダマされる話とかじゃないでしょうね」
「このまえは、悪かったよ」
レオンは頭を下げた。
「いや、べつにいいけどさ…」
アズモナも素直に謝ってこられると、攻めがいがないらしい。
「それで、もう少し、手びろくやるために、メンバーを増やしたいと思ってるんだ」
「ふ~ん。べつに、いらないんじゃないの?」
アズモナは興味なさそうだった。
「いやいや、より大きな仕事をするためには、このままじゃ人が足りないと思うんだ」
「そうかなあ」
「そうなんだよ! オレとブラムだけじゃ、ちゃんとオマエを守れないときもあるし」
「アタシの身は、自分で守るよ」
「それだけじゃなくて、作戦で2人じゃやっぱりキツイんだよ。な、ブラム?」
「まあ、そういうときもあるかな」
ブラムがいう。
レオンが続けた。
「だからさ、もう1人剣士をメンバーに入れたいんだ」
「ふ~ん、そうなんだ。まあいいけど…」
「そこで…」
レオンが、店の奥に座っていた剣士に振り返って、手で合図する。
剣士が、3人のテーブルにやってきた。
「このセシリアをメンバーに加えようかと思うんだ」
セシリアを見た、アズモナが興奮していった。
「はああ?! 女あ? おまえ、バカか?」
「え?」
「剣士なら、男だろ?」
しかも、セシリアは見事なプロポーションをしていた。
剣士ゆえに鍛え上げられた、美しいカラダ。
女のアズモナが見ても、キレイな女性だった。
「彼女は腕も立って…」
アズモナが立ち上がって、レオンの胸ぐらをつかんだ。
「おまえ殺すぞ。ありえねーだろ。なんで女なんだよ」
「いや、ちょっと…」
セシリアを見て、アズモナはピーンときた。
「ははーん、セックスか? おまえ、そんなにセックスしたいんか?」
「いや、そんなつもりは…」
「だまれッ! この性欲のかたまりがっ!!」
レオンを床に押し倒す。
レオンの顔に、自分の顔を近づけて、アズモナがいう。
「性欲と仕事はわけろっつーのッ! どーせ、アタシのこともエロい目で見てんだろッ! エロザルがッ!」
レオンが冷たくいった。
「それはない」
アズモナが続ける。
「おまえ、前々から、気になってたんだけどよ、なんなの、それ?」
「?」
「アタシに対する性欲否定、なんなんだよッ!!」
「え?」
「ふざけんなよ、てめえ!」
「おまえなんかに、エロい目で見られてると思うとゾッとするけどさ。なんだよ、アタシに対する魅力ゼロ発言はよッ!!」
「……」
「失礼だろッ!! あやまれよッ!!」
「悪かった」
レオンは素直にいった。
アズモナがこのモードに入ると手が付けられないことを知っているレオンは、ただただアズモナの怒りが過ぎるのを待つしかなかった。
だが、アズモナは許さない。
「悪かったじゃねえよ。本気で思ってねえだろうが!!」
「…本気で思ってます」
「思ってますじゃねえよ…」
「……」
レオンは言葉が出なかった。
アズモナは本気だ。
一歩間違えば、死ぬ可能性すらあった。
ここで自分の命が終わるのだ。
自分から言葉を発しないレオンをじっと見ていた、アズモナは吐き捨てるようにいった。
「もう…やってられっか…」
「?」
「このエロ野郎! そいつと…」
と、アズモナは女剣士を指さして、
「セックスしながら、楽しくクエストしてやがれッ!!」
そういうと、立ち上がって、店を出ていく。
最後にレオンたちを振り返ると、こういった。
「バーカッ!!」
レオンたちは、顔を見合わせた。
彼らはパーティを、より良くしたいだけだったのに。
ノックの音がした。
アズモナは部屋のドアを開けた。
立っていたのはブラムだった。
「おまえか…」
アズモナはレオンが来ると思っていたのだ。
「なんで、アイツがこねえんだよ。ふざけんなよ、アイツ! ホントに!」
ブラムがいった。
「申し訳ない。おまえがアイツに好意をもってくれているのに、こたえられなくて」
「ホレてるとかじゃねえわ。オマエもエロザルか」
「オレはアズモナは魅力あると思うぞ」
「なんだ、それ?」
「……」
「同情で欲情か? ふざけんなよ、てめえら!」
「……」
「くそバカども!」
またしても、アズモナは例のモードに入りつつあった。
アズモナは、ブラムの後ろに向かって声を上げた。
「オイこら、いるんだろが! 出てこいよ、バカ野郎!」
レオンが顔を出した。
アズモナはレオンに向かっていう。
「あの女、どうした?」
「帰ってもらった…」
レオンは意を決したようにいった。
「オレはオマエが気に入らないなら、べつに…」
アズモナがその先を制した。
「なんだ、それ?」
黙ったレオンにいう。
「ふざけんなよ、てめえ」
レオンがいった。
「殴って気が済むなら、殴っていいぞ」
アズモナがキレた。
「なんだ、それ! てめえ、なめんなよ! そういったら、殴らねえと思ってんのか?」
レオンは嵐が去るのを待つしかない。
「おお! 殴ってやる! 思いっきり殴ってやるよ!」
アズモナがレオンの顔を殴る。
「クソッ!! ボケッ!!」
パンチが入るたびに、レオンの目から涙があふれた。
「ふざけやがって!」
そして、アズモナの目からも涙が出てきた。
「ちくしょうッ!!」
レオンは、人が人を殴るときは、自分も心を殴られるように痛いのだ、という言葉を思い出していた。
「バカにしやがってッ!!」
ブラムも涙を流していた。
そして、アズモナはこう叫んだ。
「アタシをッ!!」
涙とともに。
「アタシをッ! もっとあがめろッ!!」
einde




