未来世界からの贈り物
友人は俺を連れ出して、あるところへと引っ張っていった。
タクシーに乗りながら、友人と語り合っていたが、俺はそれより、さっきの出来事について、頭を整理しなければならなかった…
俺は友人に語る。
「この鍵の鍵穴は一体どこにあるのだろう?」
「さあ…これはただのフェイクで、そもそもこれに合う鍵穴なんてないのかもしれないし」
「そうも思われるが、しかし、俺はありそうな気がしてならない」
「そりゃ、鍵なんだからそれに合う鍵はある方が正解だよ、まあ単なる飾りに見えなくもないがね?鍵のカタチをしたキー
ホルダーもあるくらいだよね?あれは酔っ払った時には困っちゃうよね、間違った方で刺してうまくいかずに、眠り込んでしまうなんてことにもなりかねない」
「しかし…」
俺は更なる虚偽の記憶に蝕まれていった。
「俺は、この鍵はパンドラの匣の鍵で、例えばこの世の全ての悪が、この鍵のチカラで封印されているような気さえしている」
「またまた飛躍かい?」
「ああ、止まらないようだな。しかし!そして、なぜ、パンドラの匣の鍵を、俺のポケットは誘い込んだというのか…どうして、今、俺とお前はこの鍵を手にしているというのか…」
「この鍵の鍵穴のありかは解らないかもしれないが、この頑丈すぎる袋の構造くらいは解明出来るかもしれないよ…」
俺は、友人の話は半分に、更なる記憶の洪水に飲まれていた。この鍵はある密室の鍵で、閉ざされた部屋の中には死体がある。なぜその鍵を俺が持っているのか?
それは、俺がそいつを殺したからに違いない。
そして、俺はショックを受けた結果、ストレスとなる部分、つまり、俺がソイツを殺してしまったという事実の記憶の部分を一切消去してしまい、俺は部屋の記憶ごと、この鍵と鍵の入った袋だけを、忘れてしまったかのように今、見つめているのだと…
「この鍵穴のある部屋は、一体…どこにあるというのか…」
「君?僕の話の途中に割り込んで、何を言い出すと言うんだい!まあいい、それでね、そこへ行けばいい…」
俺は飲まれるままに任せていた…
友人は、俺を、どこへ連れて行くというのだろう?
「それで…その施設には高性能の顕微鏡があるのさ…」
「顕微鏡?一体何の話だ。お前にそんな知り合いがいたか!」
「知り合いもなにも…僕が十年来勤めていた研究所じゃないか」
「十年来…お前のそんな話…まったく…記憶にない……」
その施設はいかにも最新鋭の設備に満ちていた。
そして、促されるまま、その、高性能な顕微鏡へと、袋を設置した。
「お前…一体…どういう立場なんだ??」
「だから言ったろう…僕の古巣で、今だってたまに世話になってるし、逆に世話をしているよ」
迷宮…記憶が何ひとつ噛み合わない……
そして!
覗いたそのミクロの世界に、俺は更なる度肝を抜かれてしまった!
その袋のミクロの内部へとピントを合わせていくと、そこには、ありえないように精細に造られた、密室の部屋が!
そして、その部屋の中には、死体が転がっている。
その部屋は内鍵になっており、死体の男のポケットからは、袋に入った鍵が、少しだけ飛び出しているのが確認された……
「この袋の構造は非常に頑丈で…しかも、驚くべきことに、それを加工することは、現在の技術では出来ません。はっきり言ってしまうと、この袋を未来世界で製造し、それを過去へとタイムマシンで送った方が、可能性としてはありえます…」
「何の話かわからないが!それより!密室が見えないのですか!密室に転がった死体が、あなたは見えないのですか!!」
「それに頓着する必要はありません。我々の世界には見えなくても必要のないこともあります。ミクロ世界で密室殺人が起こっていたとして、それより、我々の世界に必要である事は、この袋が、いかに頑丈であるのか、そして、この袋をどうすれば加工し製造することが出来るのか、それにつきますから」
「でも、この袋は結局は開放することは出来ないんですよね?そうしたらやはり謎は膨れ上がる一方だ。この袋の中は完全な密室であり、出入りすることなど不可能、ならば、この密室の部屋に転がった死体の殺害者は、どうやって中に侵入し、どうやって、外へとにげたというのでしょう?」
「鍵……」
俺は顕微鏡のレンズ部から目を放し、セットされた袋へともう一度視線を移す。
「この鍵で…この内部にある部屋の内鍵を開放すれば…すべては解き放たれるのかもしれない…」
「でも…どうやって!」
友人は俺にまくし立てていた。
帰りのタクシーで、友人は、徒らにその袋に着いたリボンを触りながら、俺に話し込んでいた…
「結局、最新技術をもってしても、謎は更に強まるばかりだった…しかし、未来技術により、過去へと送られた贈り物…この発想はなかなか普通の科学者には生まれないものだな…」
「ところでお前、何もんだ!!」
俺は疑念が深まっていた…これは…悪だくみされた、書割の設定なのか……??
友人はそのリボンをくるくると弄んで…そしてとうとう…それを…解いてしまった……




