針とケムリ
久しぶりにモニタを凝視する全員。
ディノが示す。
「皆さん、こちらをよ~く凝視してください…」
首なし死体のサーモグラフィがズームされていく…
先程より…熱が奪われている…
頭部のあたりで。
「皆さん、無くなった頭部の近く、これ…」
ズームした映像が…
ペラペラと次々めくられていく……
「これは同じ映像に見えますが、すべて違った部屋です。それを並べてみました」
「……」
「次に…」
再びズーム、そしてスライド…
「たとえばこれです…これを更に拡大していきましょう…」
すると…
見える!
サーモグラフィに感知された、温度がそこには…
「なにか、紐のようなものが…ワタシは最初、蛇のようなカタチをした殺傷兵器ではないかと推理しました…」
「!」
「しかし直ぐにその推理を破棄した。なぜなら、これがたとえば本当に蛇であったとしても、あまりに動きがなさすぎるのです…というよりも、全く動いていない」
目を凝らす一同。
「ええ…つまり…これも…これも…これも…」
次々に画像をめくっていくディノ、それらが皆一様に、ひも状の温感を感知して写されていた…
「そこで、こう考えました。これは、恐らく部屋に設置された備え付けの形状であると。そして、多分推測するに、血液などの飛沫が、ここにだけ着いた、ということです。この首なし死体は、驚く程に血液の漏れ出た形跡がなかったから、不審でした。じゃあ何故ここにだけ付着したのか…ここからは、もう、ワタシの手には負えません…」
「いえ」
畠、口を開く。一同、畠に注目する。
「ディノさん、あなたは素晴らしい仕事をしました、「見事です」
「もしかして、この正体を?」
「…いえ、そこまでは…しかしあるいは…」
「畠さん?とうとうあなたに手綱を渡す時が来たということですか?」
水先案内人は先を促す。
「ええ。多方。」
「!!!」
「これまでの皆さんの推理は見事でした。という訳で、私は、皆さんの意見を一つの結論へと総合させた、一つの回答にたどり着いたのです…」
「!!!!!」
「なんと!それは実に頼もしいではありませんか!では、はやくお聞かせください!」
水先案内人は、司会冥利に尽きるのだった。
「いえ、ひとつその前に…」
一同息を飲む。
「ディノさん」
「!…はい?」
「これは…この紐は…もしかして、コードではないですか…」
「!紐、という意味の?」
「ええ。ある意味…暗号という意味でも。いえ、これはジョークです」
「……」
「ええ、コードですよコード…電化製品についている…プラグを先に付けた、あの…コード」
「!では、室内には電化製品が?」
「英さん、ウィークリーマンションではないのですよ、ここは…それどころかここは地獄です」
「…わかってますよ!興奮しただけです」
膨れる、英。
「すいません、すこしいいかたが乱暴でしたね」
「いいです、気にしません」
「ありがとうございます。それでは進めましょう。プラグというのは、無論、部屋の片隅にあるコンセントへと繋ぐためのものでは無い!」
「?????」
「そうではなくて、つまり皆さん、これらは皆一様に、首元に転がってるではないですか?」
「…ええ」
「プラグはコンセントではなく…ここへ…」
畠、自らの頭頂部を指差す…
「ここに閉じ込められていた人々は皆、意識を共有していたというではないですか?」
「しかし!」
ディノがムキになる。
「それは霧状のナノマシンによってのものではなかったのですか?」
「ええ…それはそうでした。しかし、こう推論することもできませんかね?より、ダイレクトに、たとえば、煙ではなく、注射器があるように…」
「…麻薬?」
「ええ。これは無論推理です。間違った部分もあるかもしれない。しかし!こんな…意識の共有みたいな話があるなんて!それは麻薬や幻想みたいなものではありませんか!!!」
「!!!!!」
「プラグを差し込めば、より強く作用する…などということは、もちろんひとつの推論でしかなくて、それを皆が同時性を持って繋いでいた、という想像力は、余りにも出来すぎている。しかし!これが一種の麻薬であったとするなら?そういった同時性は、ジャンキーならずとも起こりうる気はしませんかねえ…」
「……」
一同、ある種の強引ではあるが説得力を持って響かせた畠の意見に同意せざるを得ない。
「そして、何らかのはずみで人々は首を撥ね、その飛沫が並列してそれぞれのプラグを染め上げた!」
「……」
ある意味、美しい推理のようだった。
「さて、ここまで推論したところで、とうとう、皆さんの意見を総合して、ひとつの私なりの結論へと到達しましょう……」




