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由無し一家番外編  作者: しめ村
王都の学生の日々
9/13

由無し一家・同番外編登場人物紹介・設定


※ここで紹介する人物の年齢は、本編完結時=番外編11話終了時点での年齢です。

 本編および番外編の、今後の進行とは無関係のネタバレ設定あります。


■王都の人々


●リベカ・エメリナ・コルネイユ(15)……中央下級貴族の娘。フェイディアス王立高等学校556年度入学生で現在3年生。

 黄味がかった茶髪、茶の瞳。中背だが出るべきところはそれなりに恵まれている体形。

 中央下級貴族のコルネイユ家の跡取り息子が女中と駆け落ちした末に、コルネイユの領地とも母方の縁故とも関係のない東方領の小村で生まれ育つ。11歳の時、地域一帯で猖獗を極めた流行病により両親を亡くし、天涯孤独となったと思われたところを父方の祖父母が住む王都に引き取られた。残るただ二人の肉親となった祖父母は、我が家の総領娘として恥ずかしくないようにと教育優先の接し方で、あまり家族としての交流はしてこなかった。

 約1年の猛勉強によって貴族子女御用達のフェイディアス王立高等学校へ入学。悪目立ちするのは仕方ないのでせめて大人しくして学生生活をやり過ごそうと考えていた中アンジェリンと出会い、以来それなりに楽しくやっている。成績は底辺で、毎年どうにか留年を凌いでいる状況。今はアンジェリンの鍛錬に同伴して行っている体力作りの時間を勉強に回そうか、それをどう友人に言い出そうかと悩んでいる。

 詮索するのもされるのも嫌う見えるとこだけ傍観者スタイルにつき、本作の出来事の多くは彼女が見てないところで進行し、終了する。傍観者を気取っている一般人が見届けられる範囲なんてそんなもの。

 好き勝手にどこまでも突き進んで行っては、一段落すると自分の傍に戻ってくるアンジェリンの鎹のような存在と自負している。最近では、もう少し家族と歩み寄りたいと思っている。

 親友アンジェリンから教わった魔法の中で唯一適性があって使い物になった魔法は、対象を猛烈な痒みで怯ませる、肉体操作系の感覚系に属する≪痒み≫の魔法一つきり。教わった当初は3秒くらいしか持たなかったが、4年生に進級する頃には8秒持続するようになった。リベカの魔法の素質はその程度。彼女はあくまで一般人。

 将来は王宮勤めの侍女か女官志望。


●アンジェリン・セミラミス・フェルビースト(15)……元辺境の豪族で今は王国有数の大貴族とされるヴォジュラ領領主の一人娘。フェイディアス王立高等学校3年生。

 赤味の強い狐色の豊かにうねる髪、焦げ茶色に橙色の火花が散る瞳、通称フェルビースト色。目の火花は激すると黄色から白に近く、強くなっていく。高慢に見えるつり目の美少女。背はすらりと高いが肉付きは薄め。

 本人は頭から脳筋だが、実はより適性が高いのは魔法の方で魔法学科の特待生として入学。魔法の得意分野は魔法操作系の魔化系・火霊系・風霊系・光霊系・闇霊系。魔法学科では入学以来2位を保持し、その他学科でも常に上位に位置する。武芸学科の成績ではジリアンに一歩譲るものの、授業という枷を外し本気で勝ちに行く勝負をすれば、彼女に敵う同級生はおろか上級生にも数えるほどしか存在しない。

 理想の男性像は毛もじゃの筋肉達磨と公言して憚らないが、彼女が世界一かっこいいと思っている男性はがっしりとしてはいてもすらりとしなやかな佇まいの兄の側近ジェオフレイであり、日頃の放言は隠れ蓑ではないかとリベカに推察されている。

 自分を理解し呆れつつも、付かず離れずの距離感を保ってついてきてくれ、振り向けば容赦のない意見をくれるリベカを信頼している。

 将来は卒業と同時に故郷に帰り叔母に弟子入りして、学びながら仕事を引き継いでいく予定。


●ジリアン・イグニシアス・サヴィア(15)……中央の大貴族本家筋の次男。フェイディアス王立高等学校3年生。

 淡い金髪、青い瞳の美少年。入学当初は女の子と見紛うような柔和な顔立ちだったが、最近は男らしさが出てきた。

 サヴィア家は王家の側近の中で歴代の筆頭武官を務め上げてきた騎士貴族で、王家直属の王宮騎士団団長や国軍を統括する将軍職を数多く輩出している名家。彼自身も長じれば王宮騎士団員になるものと無邪気に思い込んで勉学と鍛錬に励んできた。学校での成績も常に首位争いする位置をキープしている。

 幼い頃から文武両道で模範的な騎士の卵だった兄ザカリアスを尊敬し、また美しく優しい従姉のクラリベルに憧れており、両者を悩ませるフェルビースト家の二男には反感を募らせていた。

 その妹のアンジェリンに喧嘩腰で接するが、非公式の一対一という果たし合いもどきでこてんぱんに打ち負かされ、新しい扉を開いた。全知全能を尽くして戦い敗れた自分に、彼女がその時ばかりは惜しげもなく向けた満開の勝者の笑顔が、深く心に刺さったらしい(ブラム談)。以来彼女に恋情を抱き、彼女の価値観と独走に懸命に食らいついてゆく。

 将来は勿論王宮騎士団に入団するつもりでいるが、どうにかしてアンジェリンと結婚できないものかと模索中。


●ブラム・アラディン・バスティード(15)……サヴィア家の分家筋の三男。フェイディアス王立高等学校3年生。ジリアンの乳兄弟兼従者。

 黒髪、青い瞳の男前。

 ジリアンの従者としてクールな執事さながらの先回りしての行き届いた仕事……を、できる男になりたい。体を動かすのが好きなので、じっと控えているよりも雑用でも動く方が好き。ジリアンの護衛としては彼より体格に恵まれている分力強く、指揮するよりされる方として前線に率先して飛び込む思い切りもよく、剣の腕前は互角のため、主より前衛向き。

 ジリアンの気心の知れた親友でもあり、彼の恋を陰ながら応援する。が、時々アンジェリンの色に染まりつつある主人の空回りっぷりを、自分の気晴らしの肴にしている節あり。

 学校での成績は運動系、騎士学科に連なる座学や実習は優秀。その他は中の上くらい。

 ちなみに、不穏な噂はあれど、彼の家系にも毛生え薬は必要ない。

 将来はジリアンとともに王宮騎士団員になるつもり。ほぼ内定状態であるが、これがコネと言われるかどうかは、相応しい実力を備え維持できるかの、今後の努力にかかってくるであろう。


●エイジア・レリストラム・シェイファー(15)……王都の中級貴族の私生児。フェイディアス王立高等学校3年生。根の氏族との混血。

 灰がかった緑の肌、若葉色の髪、緑の瞳。樹を思わせる長身痩躯に繊細な美貌。

 母親は早くに死亡したが父親からは愛され将来を心配されている。父親の本妻筋からも、異種族の血ゆえ家督相続の敵手たりえないと見做され、遠巻きにされてはいるが積極的に危害を加えられたことはない。

 見聞を広め、自分のやりたいことを見つけて道を定めてほしいと願う父によって王立高等学校に入れられた。


●ザカリアス・フェリクス・サヴィア(26)……ジリアンの兄。王宮騎士団員。イズリアルと同期。髪と瞳は弟と同じ色。親しい者たちの間での愛称はザック。

 学生時代、手を抜かれた場合以外でイズリアルに一度も勝てぬまま卒業と別離を迎え、彼に勝ち逃げされたと感じている。本編終了時のメタ設定ではレベルがダブルスコア負け状態なので、どうしても彼に及ばない。それでも王都の騎士の中では最強の一角なのである。悲しいかな環境の違い。


●グリゼルダ・アーネスティン・デュアー(15)……中央の大貴族の娘。フェイディアス王立高等学校3年生。教養学科主席。

 黒髪、青緑の瞳。学年で最も美しい女子学生と評判高い。


●ローナ・モス(19)……フェイディアス王立高等学校卒業生、招待学級(平民学級)生。黒髪、黒瞳。

 学習室委員を毎年のように努め、遠巻きにされがちなリベカにも親切だった。卒業後は東方領の故郷に帰った。


●バージル・ヘクト(17)……フェイディアス王立高等学校5年生。招待学級の学生。男子学習室委員。オリーブ色の肌、癖の強い黒髪、黒目。

 人当たりよく親切な雰囲気の先輩。リベカの見聞きした範囲内において多彩な能力を発揮しているが、氏素性や目的については唯一の接点を持つリベカが詮索しないため不明となっている。


●ニクス・フィンク(15)……フェイディアス王立高等学校3年生。招待学級の同級生。アンジェリンの好みの見た目。


●オルセン、ジュノー……王宮騎士団員。


●クラリベル・メリエル・フェードラ(26)……王太子(49歳)の娘。サヴィア兄弟の従姉妹。白金の髪、紫の瞳。

 フェイディアス王立高等学校卒業生で、ザカリアスとイズリアルとは同級生。イズリアルに想いを寄せ、卒業時彼といつかの再会を期して見送ったが、その「いつか」についての両者の認識には大きなズレがあり、いつまで経っても迎えに来てくれないので不安を募らせていた。

 従弟を通じて知り合ったアンジェリンとの交流を経てまさかの相互勘違いを知り、行動を開始。




■ヴォジュラ領の人々


●イスカリオット・ヒースコート・フェルビースト……ヴォジュラ領主。通称イサク。

 髪と瞳はフェルビースト色。基本的にフェルビーストの血を引く者は全員やや男性寄りの中性的な顔立ちと細マッチョ体形のイケメンで、他人が一目見ても一族だとわかる顔立ち、体形、体色素を備える。歴代の当主がどんな極端な外見の嫁を貰ってもその外見的特徴は一切子に引き継がれず、フェルビーストの血族の特徴しか表れない、主張の強い血統。


●アディーラ・ベリンダ・フェルビースト……ヴォジュラ領主夫人。旧姓セルウィン。淡い金髪、緑青色の瞳。王都から嫁いできた。


●ウェレスレイ・ルーサー・フェルビースト……ヴォジュラ次期領主。妻との間に一男有。髪と瞳はフェルビースト色。愛称ウェレス。

 次期領主として近隣の貴族との穏便な親交を心がけてはいるものの、辺境以北の希少な品や珍しい魔物目当てに招待してくれだの大型の手応えのある獲物の豊富なそちらの森で狩りをしたいなーチラチラと冷やかし目的のすり寄りが(特に若い頃は)多かったため、わざと危険度の高い魔物と遭遇するように仕向けて、二度と遊びに来たいと言われないように穏便にお引き取り頂くのが得意。その篩にかかってなお残った胆力の持ち主や武人は友人として歓迎する。

 できれば多くの他領の人々にヴォジュラに興味を持ち実際に来て見て知ってほしいと考えているが、実際に来てくれるのは圧倒的に物欲重視の前者が多く、一般的な意味での観光業が振るわないのが目下の悩み。


●ペトラ・エーヴリル・フェルビースト……ウェレスレイの妻。旧姓コラール。栗色の髪に淡褐色の瞳。王都から嫁いできた。夫との間に2歳の一男有。


●イズリアル・フィオン・フェルビースト(26)……ヴォジュラ領主の二男。現辺境の森管理人統括という名の配達屋。ヴォジュラ正騎士、資格魔術師。フェイディアス王立高等学校卒業生。

 髪と瞳はフェルビースト色。

 魔法の得意分野は肉体操作系の防御系・強化系。物質操作系の食糧系。魔法操作系の火霊系。

 おいらけ者を装った瓢箪鯰。敵意以外の人の感情には鈍感で、学生時代に両片思いだった女友達がいるが、彼女と最後に交わした約束の「いつか」を、現役引退して自由な余生を送れるようになった老後と認識し、頭を仕事モードに切り替えてあっさり身を引いた。

 彼女もいずれ身分と評判に相応しい結婚をして、自分と再会する時には学生時代の思い出を懐かしく振り返れるくらいのジジババ友達として会う分には問題ないだろう、などと暢気に考えていたら、未婚の彼女からの「ええ加減迎えに来いやゴルァ」との催促を里帰りしてきた妹に届けられて、激しく当惑している。

 ネーミングセンスは劣悪。


●アンスガー……イズリアル直属の8人の部下の一人。正式部署は辺境の森管理人統括支援部隊。大抵の場合は、下の若様のところの人とかイズリアル様の部下とかで通じるので、本人たちが口述する機会はまずない。部署の一番の古株で、代々ヴォジュラ騎士の家系の重装騎士。

●シーヴァー……イズリアル直属の8人の部下の一人。40絡みの小男。敬清的にはシーフ系。犬が嫌い。

●ジェスロ……イズリアル直属の8人の部下の一人。組合員上がり。上背はないが膂力に優れ、敬清的に言うならばドワーフ系。

●ハル……イズリアル直属の8人の部下の一人。資格魔術師。使い魔はキジ猫のルクレシアスで、通称は「眠り猫」。動物好き。

●ザン……イズリアル直属の8人の部下の一人。辺境の森北西部に住まう妖霊人翅の氏族ファタ部族出身。中年とも老年ともつかぬ年齢不詳の顔立ち。

●リス……イズリアル直属の8人の部下の一人。辺境の森北東部に住まう妖霊人牙の氏族ボロア部族出身。でっぷりと横幅広い直立した猪の姿をした心優しい戦士。

●ヒック(23)……イズリアル直属の8人の部下の一人。ヴォジュラ貴族出身。敬清的には近~中距離の射程に対応できるオールラウンダー。婚活中。


●オルソン・ウンベルト・フェルビースト……ヴォジュラ領主イサクの弟。先代の辺境の森管理人統括という名の配達屋。現在は東方の領境の関所兼魔境監視点、通称『砦』の司令官。ヴォジュラ正騎士、資格魔術師。

 髪と瞳はフェルビースト色。髪と髭を伸ばしっ放しで見てくれはもさい。彼も体毛と身だしなみさえ整えれば兄や甥たちとよく似た美中年に変身する。が、個性を求めてそうしない。体形も、ともすればすらっとした輪郭に落ち着きがちな肉が付きにくい血統に抗い、努力して沢山食べて鍛え、余計な筋肉をまとっている。

 のらりくらりとした放蕩オヤジ。イズリアルは仕事の前任者であり師でもあった彼に性格が似たと専らの噂。


●ゲルトルート・テルシェ・フェルビースト……ヴォジュラ領主イサクの妹。辺境と領内の魔法量の変動推移を観測し、異常あらばそれを読み解き領主に警告する代々の一族の女が受け持ってきた『魔女』の役目を担う。潮音の魔法の師の一人。

 髪と瞳の色はフェルビースト色。体が弱く、魔法に酔いやすい。ほっそりとした肢体の気だるげな雰囲気の美女。

 魔法適正の高いフェルビースト一族の中にあって随一の実力を誇る資格魔術師にして錬丹魔術師。魔法の得意分野は肉体操作系の治癒系・感覚系、情報操作系の感知系・伝達系・警戒系・隠蔽系・音声系、精神操作系の探査系・伝達系・治癒系、魔法操作系の幻覚系・光霊系・闇霊系・火霊系。


●グラント……ゲルトルート宅の執事。

●グラント夫人……ゲルトルート宅の女中。

●フリーダ……ゲルトルート宅の使用人。組合員上がり。


●アリステア・ミルン、ウーゴ・リリー、ハンク・レニー、ラシーン・クレア……フェルビースト家家臣。全員見た目は山賊の頭領の風格。

●ミュー爺さん……フェルビースト領主邸の厩番。元兵士。


●リルルちゃん……領軍の兵士であった頃のジェドが屈服させて連れ帰ったマズリ馬の群れのボス。ヴォジュラ領主邸で軍用馬に荷場に馬車馬にと大活躍しているが、今でも本当の主人はジェドだと思っており、彼の言いつけに従って領主邸で働いている。



■辺境の人々


●江見敬清(ケイセイ・エミ)(16)……ヴォジュラ領主邸使用人。資格魔術師。組合員志望。

 短い黒髪と濃い色の瞳、鳥の子色の肌。左耳に黒い石的な何かの耳飾り。

 地球出身の日本人。唯一の大人の肉親であった祖父の葬儀の日に、癇癪を起こして自宅の裏山に入ったところ、追ってきた姉とともに異世界に迷い込んだ。そのまま留まっていれば命が危なかったであろう魔境のただ中で幸運にもジェドに拾われ、彼の家で世話されることになった。

 剣と魔法の世界で怪物と戦う、といったファンタジーの世界やギルドハンターとしてランクを上げていくといったゲームに憧れを抱いており(日本の実家は貧しかったため現物は持たず友人のプレイを横で見たりちょっと遊ばせてもらったりした程度)、似たような組織があると知ってからは厨二心が駆り立てるままに所属を目指す。周りの年長者が過保護なので、彼らに認められるだけの実力をつけてからでなければ組合登録は認めないと申し渡されており、強さの限度もわからぬまま素直に修業を続け、街での知り合いからは鍛錬中毒者のような扱いを受けている。

 実家に熱愛中の恋人がいるが、彼女に安定して勝ち続けられる技量を示すという条件を満たせず、彼女の父兄から正式な求婚を認められていないため、更なる強さを求めて修業中。

 後に、魔法の素質は彼以上の姉から、奥義の結晶と自称する産廃剣なるアイテム(≪解析(アナリシス)≫での表記名)を贈られ、大いに扱いに困る。

 ネーミングセンスは厨二的。


●ゴーディアス(4)……敬清の使い魔。足元だけ白い靴下を履いたような黒い毛皮の、生まれて間もない仔山羊の姿。名前は敬清が日本暮らし時代に見た、友人がプレイしていたゲームに登場する草食動物型モンスターの名前。

 敬清が自分の魔法を完全に制御できない時期に魔法を暴投した末に生まれた、敬清に絶対忠実なる使い魔。主人の耳目となり魔法の発動体にもなる、イン・アウト兼用端末。

 生まれたてで使い魔になった弊害か、会話が成立する相手には「でしゅ、ましゅ」のような舌足らずな喋り方をするように聞こえる。

 主人とその荷物を乗せて走れるくらいの大きさにも変化できる。主の第二形態、第三形態の希望を汲み取り、更なる進化を果たしたいと考えている。


●江見潮音(シオネ・エミ)(21)……資格魔術師(錬丹魔術師)。魔境監視官見習い。敬清の姉。ジェオフレイの使い魔。

 長い黒髪に濃い色の瞳、鳥の子色の肌。

 魔法の素質は作中登場人物の中でも群を抜くが、暴走癖があり衆目下での魔法の行使や人の期待に応えようとする意気込みに反比例して魔法を失敗する、たいへん残念な性質。

 思春期女子にありがちな異性の家族への隔て心から、生きている祖父に最後に会った時に些細なものだが素っ気ない態度を取ったことを後悔し続け、自分を許せずにいた。赤犬変身事件によって、一応の心の整理を果たしえたことは、彼女にとって幸いだったかもしれない。

 その赤犬事件で、イズリアルとの魔法の接続をジェオフレイに割り込み強制遮断された際に、うっかりジェオフレイとの使い魔契約の取っ掛かりを築いてしまっていたが、本人はおろか彼さえも気付いていなかった。当たり前だがその後の主からの任意の魔力供給や命名などはなく(あったのは赤犬事件の時のみ)、以来3年近くかけて時々会える彼の気を取り込みながらのゆっくりとした変化の末、弟が街に出ている間に使い魔への変化を完了。

 判明後も何か変わるでもないしと現実をすんなり受け入れる。ちなみに敬清の≪解析(アナリシス)≫で表記される種族は、地球人から使い魔に変化している。

 保護者一家の家庭の事情には、ウルリカが父の血を引いていないことにまでは気が付いているが、なぜそれをウルリカに知られて困るのかまではわかっていない。

 ネーミングセンスは悪い。


●ジェド(四捨五入で500歳に迫る)……フェルビーストの使い魔。ヴォジュラ辺境の森中央区域第6地点管理人。ジェオフレイの父。ウルリカ、敬清、潮音の義理の父。ジェドという名は主から与えられた名の略称。

 元は灰色だったごま塩頭に薄青の瞳。2メートル超の巨漢。とてもつよい。

 恵まれた体格と膂力を頼りに追剥などの悪行を重ねた末、捕殺の手から逃れて魔境に迷い込み死の淵に沈むも、祖の獣より救い上げられ使い魔となった。以来改心し、辺境の安寧のため働く。フェルビーストへの忠誠とヴォジュラへの義務感も同様の理由に因る。

 贖罪の意識が強く、善きことをしようとする根底には常にそれがある。寂しがり屋で、その分子供たちへの愛情が深い。

 ネーミングセンスは古めかしい。

 彼の妻はフェルビースト家当主が彼とのつながりを深めるためと、孤独になるであろう彼に伴侶を宛がおうと紹介したもの。取り立てて美人ではなかったが、心身ともに健全で思いやり深い女性だった。結婚初期には、奇跡的に息子ジェオフレイを授かった。同時に、彼との交わりで総身に漲った力の恩恵で、彼女の肉体は妖しいばかりの魅力を放つ美しさを湛えるものへと変容した。

 しかし彼女はやがて、歳をとらない年配の夫とその背後にわだかまる不気味な力持つ存在を感じながら、家事に育児に仕事にと追われる暮らしに挫折。それと同時期に、刺激と真実の愛を求め、不純異性交遊に耽るようになる。

 ウルリカの父親は不明。その男性と、生まれたウルリカが普通の人間であることは確かである。ウルリカがこの世に生れ出るとともに、母親の肉体を満たしていた美と活力が全て赤ん坊に移ってしまい、みるみる容色が衰え(元に戻り)始めた彼女は錯乱。美しさを取り戻そうと、生まれて間もない娘を自らの手で殺めかけて捕縛される。

 当時の彼女の男遊びが美しさに任せた性分だと捉えられているだけならよかったが、彼女の錯乱状態は治らず、あの赤子は赤子のふりをした寄生虫だ、それが自分の美しさを奪ったのだと喚き散らし、ジェドにもう一度自分に情けをくれ、美を授けてくれと取り縋る。そこにはもはや一度は彼の孤独を癒す家庭と家族をもたらしてくれた思いやりある家庭的な女性の面影はなかった。再び彼が抱いたところで、彼女に美が戻ることはないだろうとも彼にはわかった。

 ジェドとフェルビースト家は合意の下、彼の秘密を吐き散らし続ける狂人の口を封じた。以来ジェドは人間社会に混じることを諦め、5歳の息子と生まれたての血の繋がらない娘を連れて森の奥に移り住み、辺境での職務を忠実に果たし続けている。この事実を知る者はジェドとジェオフレイ、先代と当代のフェルビースト領主とオルソン、ゲルトルートの6名のみである。


●ウルリカ(21)……ジェドの養女。ジェオフレイの父親違いの妹。

 眩い金髪と濃い青い瞳、白磁の肌、絵にも描けない美しい顔立ち。左耳に敬清とお揃いの耳飾り。

 脳筋系箱入り娘なので人の機微や悪意に疎く極めて素直で純真。一方で人間社会のルールを解さないゆえに、非情ともとれるシンプルかつ割り切った物の考え方をする。

 敬清と相思相愛だが、現状彼に連勝を許さない程度の強さを持っているため、まだ正式な求婚を受けていない。本人はいたって悠長に微笑ましい気持ちで、敬清が自分に追い付き追い越される時が来るのを待っている。

 ネーミングセンスは独特。


●ジェオフレイ(26)……ジェドの実子。ウルリカの兄。イズリアルの乳兄弟で側近。敬清の義理の兄。

 灰色のおどろ髪、青い瞳。2メートル弱の巨漢。とてもつよい。

 祖の獣の使い魔である父の能力を丸ごと受け継いで生まれた。それで父の力が削がれたわけではなく、ほぼコピー。生まれた時にそれが初期値だったうえ、更に私淑相手に恵まれた成長期を通過したことで、力の使い方は父より上手い。

 森育ちが長かったため家族と故郷の森への愛情と防衛意識は高いが、それ以外の人の営みには大抵の分野において無関心。人の強さ弱さを事実としてしか受け止めず、それらを構成する心理的要因をあまり理解できない。血族への忠誠や掟(家訓とか遺言といったもの)は尊重する気質だが、お世辞にも感受性豊かとは言えない。父はそういう点を危惧して、人間社会へ奉公に出した。お陰で少しは人間心理がわかるようになってきた。

 かつて彼が、お前にはお前の仁義があるだろうと潮音の行動を容認したのは、ただの事実として。潮音が一人で牛熊二頭に立ち向かった結果、森で待つ家族が悲しむ結末になりかねなかったことがわからないのかと怒ってやったりはしない。潮音が例え死んだとしても、潮音自身がどうなろうとも受け入れると覚悟したという前提で、彼女の選択を認め、事実を受け止めるのが彼流。

 うっかり彼女を自分の使い魔にしてしまったが、当事者含め誰もその事実に気が付いていなかった。≪解析(アナリシス)≫を使用できる敬清の里帰りを機に、可愛がっている義弟から涙ながらに責任を取って下さいと訴えられ、どうしたらいいのかを真剣に考えることになる。

 ネーミングセンスは普通。


●ビタ/ミン……ビタは茶色と白の毛皮のオス、ミンは黒地に茶色の毛皮のメス。

 一家が飼っている元野山羊のつがい。この地の哺乳類の多くは、年間通じて春~夏が最も短い地域でより確実に子育てをするために、繁殖期は年に一回、その時期に合わせて。毎年生まれた仔ヤギが親離れの時期を過ぎると消息不明になることに関しては、巣立ちを済ませたからと関与しない姿勢。

 ビタは放し飼いでその辺の草を好きなように食べているが、ミンはお乳の味を一定に保つため、紐に繋がれて決まった餌を貰っている。


●ラル(3)……ビタとミンの間に生まれた山羊。白の毛皮。オス。

 元は食用となる運命だったが、毒グモに噛まれて死に掛けたところを、潮音がお試しで作った霊薬を大量投与されて生き延びた。霊薬の製作者である潮音を含め、その肉を食べることに不安を覚えた一家はそのまま放し飼いを続けている。

 おや? ラルのようすが……


●お喋りなトゥトゥ……真っ青な羽の人懐っこいやつ。奥さんあり。


●ケーンのおじいさん(年齢不詳)……いつ死んでもおかしくないくらいよぼよぼのキツネの姿。

 祖の獣のアバター。膨大な意識のごく一部のみを浮上させて現在の物質界にチャンネルを繋げて世界の在り様を見詰めている。あまりにも長い時を経て肉体が弱っており、時々チャンネルがしっかり合わなくなるというアクシデントも。

 潮音の魔法の師の一人。

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