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魔界の少女  作者: YossiDragon
第一章:四月~五月 護衛役『現れし青髪の脅威(前)』編
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第二十話「ウンタカの鼻水」

 家に帰ると、俺が瑠璃に伝えたことが皆に伝わっていたらしく、全員が心配そうな眼差しで俺のことを見つめていた。


「大丈夫、大丈夫なの響史?」


「あ、ああ…何とか…うぐっ!」


「ああ、もうやっぱダメじゃない!」


 瑠璃は慌てて救急箱を取りに行った。何度か怪我をした際に、救急箱を取りに行ってもらったことがあるため場所は覚えていたようだ。


「え~っと、その怪我には何がいいの?」


――どうやら、中身についてはまだ全て理解してはいなかったようだ。



「え~っと、そうだな…。やべぇな、肝心な塗り薬とかが切れてる…。どうしよう」


「ええ~? どうすればいいの?」


 瑠璃に言われ俺は考え込んでしまった。


――どうする? 今の時間帯だと、恐らく薬局はしまっているだろうし…。運よく開いていたとしても、今日は特売とかいってたからもう売り切れだろうしな。



 俺は途方に暮れながらも懸命に考えていた。

 と、その時、霄が話し始めた。


「それなら、魔界に生えている薬草を使えばいい」


「魔界の薬草!?」


 俺は何だかよく分からないが、名前を聞いただけで身の毛がよだった。


「本当にそれ、大丈夫なのか?」


「さあな…」


「さあなって…あのな~」


「人間に使った事は今まで一度もないが、魔界の住人にとっては凄く効き目が良いとされて凄く人気なんだぞ?」


「へぇ…」


 俺は、魔界にも人間界と似たようなものがあるということを知った。


「とりあえず、今私が持っているのはこの薬草だけだが…」


「何ていう薬草なんだ?」


「ミント草だ!」


「ミント草?」


 俺は名前を聞いただけで、ス~ッとする気分になった。


「その名の通り、ミントの様な香りがする薬草でな。この薬草をすり潰して粉にして、それをある液体と混ぜ合わせて作った薬が凄く効果覿面(てきめん)なんだ…」


「どういう効果があるんだ?」


 俺は少し興味がわき彼女に訊いた。


「う~んと、確か…―」


「傷口を塞ぐ効果があります…」


 霄の代わりに零が言った。


「そう、それだ…! とにかく人気で、なかなか手に入らないといわれている薬草の一つだからな…」


「そんなに大事な薬草、俺に渡して良いのか?」


「あ、ああ…別に構わん! 困った時はお互い様だしな…」


――そらぁ…。



 俺は少し感激し思わず目が潤んだ。その時俺はあることを思い出した。


「所で、そのもう一つの液体って何なんだ?」


「ん? ああ……確か『ウンタカ』という怪鳥の鼻水だったかな…」


「ウ…何だって!?」


 俺がよく分からず聞いてみると、霊が答えた。


「え~っと、ウンタカっていうのはね? 凄く獰猛で大きな怪鳥なんだ~。鋭い爪と鋭いくちばしが特徴で、シッポは一年ごとに長くなるんだって。で、その怪鳥は十年に一度、魔界で有名な、北と南の領地を隔てる七つの深紅の湖を通っていくんだけど、その時に、激しい気温の変化に体が耐えられず一度だけ風邪を引くの…」


「鳥が、風邪!?」


 俺は少し意表をつかれ驚愕を露わにした。


「まぁ、私も最初は不思議に思っていたけど、今となってはどうでもよくなってきて…あっ、続き忘れてた…。それで、その時出てくる鼻水が凄く粘膜があって、その中に含まれる成分に、よく分かんないんだけど傷口を塞ぐ効果があるみたいなんだよね…」


「それって、要するにその鼻水の異臭を消すためにミントが使われてるだけじゃね!?」


「よく、分かったね! …使われている本当の目的はそれなんだよ?」


――えっ、当たった!?



 俺は自分の言葉が当たっていたことが少し信じられなかった。


「まぁ、いいや。それで、そのウンタカ? とかいう怪鳥の鼻水は今あるのか?」


「え~っと、確か…この間店で買ったような…」


 以前の記憶を手がかりに僅かな希望をのせて、霊が自分の荷物の中を探り始めた。


「あった、これだよ! これこれ…」


 そう言って霊が俺に手渡したのは、一本のボトルだった。

 そこには注意書きの様なものが書かれていた。


「え~っと、なになに? 〔使用上の注意…一つ…。この液体は凄まじい異臭を放つため、

換気は十分に行ってから使用してください…。二つ…この異臭を消す際には、ミント草を使うか、もしくはペパー草とミント草をすり潰して作ったペパーミント草を使うようにしてください…〕」


――ペパーミント草って何!?


「〔三つ…使用中には、いらない手袋か何かを使用してください…。手に悪臭が残ります。

また、この液体は強力な粘着力も持ち合わせているため非常に危険です。もしも、大切なものがこの液体に触れてしまった場合は、すぐに係員の人に頼み引き剥がしてもらってください…。専用の薬を使わなければ決して取れないので、無闇に取ろうとはしないでください…。四つ…前略…危険です!〕」


――何が!? そこ、ちゃんと記載しておけよ!!



「〔五つ…誰もいない場所には放置しないでください。…寂しくて爆発します!〕」


――えっ、何で!?



 俺はだんだんこの注意書きに不審さを感じ始めた。


「〔六つ…暗がりに放置しないでください。…怖くて固まります!〕」


――どういうこと!? 状態変化!!?



「〔最後に…あくまで注意ですので必ず守る必要はありません…〕――だったら、最初から書くなぁぁぁぁぁぁ!!!」


 俺は、いつしか心の中で思ったことを凄く大声で叫んでしまった。


「どうしたの響史? そんなに大声出して…、傷に触るよ?」


「はぁはぁ…そ、そうだな」


 冷静になった俺は、とりあえずそのボトルを机の上に置いた。


「まぁ、使用上の注意も分かったことだし…中身を…ってあれ? おい霊、これ中身が入ってないぞ?」


「そりゃ、そうだよ…。まぁこの紙を見れば分かるから…」


「は?」


 俺はよく分からず、とりあえず霊から何かの紙を受け取った。すると、そこにはこう書かれていた。


〔ウンタカの鼻水の組み立て方〕と…。


――えっ、何!? 本当に何なの? いたずらなの? …組み立て方ってどういうことだよ!



 瑠璃達は、俺が何をしているのか分かっていないようで、不思議な顔をしていた。


――不思議なのはこっちだよ! なんなんだよこの紙…。



 俺は意味不明なその紙切れに文句をつけ机の上に叩きつけると、腕組をしてそっぽを向いた。


「ちょっと、どうしたの響史?」


「どうしたもこうしたも、その紙切れがふざけたことぬかしてんだよ!」


「えっ!?」


 霊は俺が放置している紙切れを掴み中身を開いた。


「あっ、ごめん響史! 間違えちゃった!」


 俺は彼女のその言葉を聞いて少し安心した。


――ふぅ、出す紙を間違えたんだな! よくあることだ…。



 だが、実際にはそんな甘いものではなかった。


「これでよし! はい、響史…こっちが正しい説明書だよ?」


「ふぅ…さんきゅう霊――」


 俺は一気に言葉を失った。そこには、さっきの紙の“ウンタカの鼻水の組み立て方”という部分の、“組み立て方”が、ただ単に“作り方”に変わっていただけだったからだ。


「お、おい…これどういうことだ?」


「どうって…、だから文字を間違えてたんだよ! 私ったらドジふんじゃって。…ごめんね?」


「そういう問題じゃなぁぁぁぁい!! 俺は、このウンタカの鼻水の組み立て方じゃなくて、

作り方という言葉自体に問題があるって言ってるんだよ!」


 俺は紙切れの文字を指差して言った。


「このボトルだってそうだ! なんなんだよ、この説明は!!」


「えっ?」


 霊は俺から受け取ったボトルを見つめた。


「あっ! …響史、これ…違うボトルだよ?」


「えっ?」


「ほら…これ、外側をカモムラして隠してるだけだよ…。だから、これを外せば…」



ペロリ…。



 薄いシールのような紙が外されると、そこには本当の使用上の注意が書かれていた。


「ホントだ!」


 俺は驚きながら、霊からボトルと外された紙切れを奪った。俺は、


――一体誰がこんなことをしたんだ?



 と思い開発者の部分を見てみると、そこにはこう書かれていた。“水蓮寺霄”と…。


「お前かぁぁぁぁぁああ!!!」


「ふっ、いつバレるかと待ちわびたぞ?」


「お前は一体何がしたいんだ!?」


 俺は傷の痛みがだんだん酷くなってくるのを感じ、急いで本物の使用上の注意を見た。


「〔一つ…暗がりには置かないで下さい…二つ、温度調節には気をつけてください…。常に温度を18℃に保ってください…〕」


――寒っ!!?



「〔三つ…日向ぼっこを始めるので、直射日光の当たらない場所で保管してください…。or太陽の光に当てると大爆発を起こしますので、直射日光の当たらない場所で保管してください…。さぁあなたはどっち?〕何でクイズ形式になってんの!?」


「そうだな…。私はやっぱり二番で!」


――えっ、答えんの!?



 俺は何がなんだか分からなくなってきた。止血するための道具が揃ってないため、血は出続け、既に俺は軽く貧血状態に陥っていた。頬がげっそりとして既に潤いがない状態だ。


「はぁはぁ…もう疲れてきた」


「ああ…大変! 響史が貧血になってる…。霊…早くウンタカの鼻水を用意して!」


「う、うん…。霰~、霰!!」


 霊は口の周りに手を構えメガホンの様にすると、大声で霰の名前を呼んだ。


「何ですかお姉様~♪」


「うぅ…、そのお願いがあるの!」


「お姉様のお願いでしたら何でも聞いてさしあげますわ!!」


「え、本当!? じゃあ、このウンタカの鼻水を今すぐ作って!!」


「ウエェ!? …う、ウンタカの鼻水ですの?」


「うん…何でもしてくれるんでしょ?」


――何だろう…いつもは霊の方がかわいそうなのだが、今日は霰の方がかわいそうに見えてくる。



「わ、分かりましたわ! この変態…のためというのは少しばかり尺に触りますが、…お姉様の頼みでしたら聞かないわけにはいきませんわ! この水蓮寺霰…。命に代えても、必ずやウンタカの鼻水を完成させてさしあげますわ!!」


 何だかよく、分からないが…俺が気絶しかけている間に色々あっているようである。


――☆★☆――


 そして…十分後…。


「完成ですわ~!!」


「えっ、出来たの?」


 霊は身を乗り出した。


「ああ、いけませんわお姉様! そんなに暴れたらこぼれ――」



ガタッ!バシャァアア!!



「にゃぁぁぁぁあああ!!!」


 霊の悲鳴が家中に響き渡る。


「うぅ…うぷっ臭い…いや~ん、ベタベタして気持ち悪い…」


「はぁ、お姉様…。ですから暴れたらダメだって言いましたのに。……でも、その姿もお美しいですわ!」


「えぇ~!?」


零が頬を赤く染めながら霊を見つめる様子に、さすがの瑠璃も少しひいた。




 時刻は既に十二時…。あの後霊はベトベトになってしまった体を洗いに風呂へ行って体を洗ってきた。

 ペパーミント草を作るために使われたウンタカの鼻水は最初は水色だったが、今ではペパーミント草と混ざり合いキレイな緑色をしている。例えるのなら翡翠(ひすい)色だろうか…。これが、元々はウンタカの鼻水だったというから不思議だ。魔界には摩訶不思議なものがたくさん存在しているらしい。

 何分経ったのだろうか…。響史が気絶したままで、悪魔の少女達が気絶した彼を囲むような形で座っていた。


「どうするの?」


「どうするって、やっぱり傷口を塞ぐためにはこれを塗るしかないでしょ?」


 瑠璃が言う…。


「でも、そのためには…私達の内誰かが響史の傷口に触れなければならないってことよね?」


 霊が気絶している響史を見ながら訊いた。


「やはりここは霰が行くべきだろう…」


「えぇ~!? どうして、私なんですの? 私はただでさえあのウンタカの鼻水を作ったんですのよ? その上、この変態に触れなければならないなんて絶対にイヤですわ!」


「姉上…。それはあまりにも響史さんがかわいそうです…」


 零が響史の心配をする。


「でしたら、あなたがやればいいじゃないですか!」


「む…それは遠慮しておきます…」


 気絶している響史に対してお構いなく否定の言葉を述べる零。

挿絵(By みてみん)


「もう、皆の意気地なし! …もういいよ私がやるから!」


「姫がやるのであれば私がやろう!」


「では、私も…」


 姉である霄の言葉に零も続く。


「私もやる!」


「お姉様がやるんでしたら私もやりますわ!」


 霊の言葉に感化された霰が手を上げた刹那――。


「「「「どうぞどうぞ!」」」」


 と、一斉に霰に向かってみんなが権利を明け渡す。


「ええぇぇええええええ!!!?」


 どこかのお笑い芸人がやっていたようなことをやっている五人の悪魔…。そんなことをやっている暇があるのならば、早く響史の傷口を塞いであげてほしいものだ…。


「分かった…。じゃあ、ここはマジメにジャンケンで決めよ?」


 霊が仕方ないと言った顔で皆に提案する。


「うむ、それなら運任せだから、文句の言いようもないだろう…」


「うぅ、仕方ないですわね…」


 それぞれ何やかんや文句をいいながらも結局ジャンケンで決まる事になった。


「じゃあ、いくよ? 最初はグー……」


 と、言って、本当はジャンケンが始まるはずなのだが、何故か霰以外のルールは少し違っていた。


「「「「最初はパー!!」」」」


「え~!? そ、そんな…最初はグーのはずではないですの?」


「そんなルールないよ?」


 瑠璃が少し笑みを浮かべながら霰に言う。霰は姉妹を見たが、誰も彼女に何も言ってくれなかった。


「さっ、真剣勝負に負けたんだから霰が響史の傷口にこの薬ちゃんと塗ってね?」


「わ、分かりましたわ…。理由はなんであれ、負けてしまったことに変わりはありませんものね…」


 憐れな霰。

 彼女は気絶して仰向け状態になっている響史の側に歩み寄りゆっくり座ると、彼の上着を脱がし脇腹から胸にかけて出来ている大きな傷口に薬を塗り始めた。


「うぅ…。どうして私が、こんな変態の体に薬を塗らなければならないんですの?」


「口を動かしている暇があるならちゃんと手を動かせ!」


「はい…ですわ」


 霰は霄の注意を受けしょんぼりとした表情で響史の体に薬を塗った。




 1分後…。響史の傷口は薬に覆われ、赤い血にまみれた傷口は見えなくなった。


「ふぅ…これで一応は大丈夫のはずですわ…。後は治るまで待つしかないですわね」


「でも、そろそろ寝る時間だけど響史はどうする?」


 霊が言った。


「そうですね…。響史さんはとりあえずここに寝かせておきましょう。看病は明日から交代で回していけばいいですし」


「それはいいとして、誰が布団運んでくる?」


「やっぱりここは、ジャンケンで決めたほうが――」


「ううん、私がやるからいいよ!」


 瑠璃が言った。


「ですが姫様には…」


「私が、元々響史をこんな目に合わせるはめになったんだから、これくらいはしないと…」


 静かに寝息を立てながら寝ている響史を眺め呟く瑠璃に、霄が鼻で笑って言った。


「申し訳ないな姫様。姫様のパジャマは私が持ってこよう!」


「うん、ありがとう…」


 瑠璃は笑みを浮かべて霄に礼を言った。


「じゃあ、私達は先に着替えに行こっか!」


「そうですね…」


 こうして瑠璃が床に敷布団を敷き、その上に気絶している響史を寝かせると、五人の悪魔はリビングの電気を消して二階に上がっていった……。

というわけで、何とか傷口を塞ぐための薬を完成させた瑠璃達。ウンタカの鼻水という何とも名前を聴いただけで不潔感ありまくりですが、魔界では結構有名な薬らしいです。

ペパーミント草は名前の通り、ペパーミントの様な香りです。

最近、学校に通っているところを書いていませんが、決して休んでいるわけではなく、休みの日ばかりを書いているからなので、ご了承ください。

次回は、以前登場した謎の少女について語られる話です。

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