第9章:ふたりの決断
戦いは熾烈を極めた。
レイリアンの剣が異形の影を斬り裂き、精霊の力が結界を張って森を守る。しかし、敵は尽きることなく現れ、世界の裂け目はさらに広がっていく。
アリアはその光景を見つめながら、胸の奥で何かが崩れていくのを感じていた。彼女の存在そのものが、この破滅を招いていると理解していたからだ。
「もう、やめて・・・レイリアン」
彼女の声は穏やかだった。戦いの最中とは思えないほどに、澄んでいた。
「私を、手放して」
レイリアンは剣を振るう手を止めないまま、叫ぶように返す。
「できるものか!やっと君に会えたんだぞ!」
「でも、あなたが壊れてしまう・・・私のせいで・・・」
アリアの足元に、光が集まっていた。精霊たちが彼女の魂を包み、導こうとしていた。穢れになる前に、還すために。
「私の中にある想いは、本物。だから、もう・・・終わりにしていいの」
レイリアンはアリアの手を握りしめた。
「行くな。もう一度、君と・・・」
「わたしは、あなたに生きてほしい。愛しているから・・・だから!」
その瞬間、ふたりの手の間から光があふれ出した。精霊たちの祈りと、アリア自身の意志が共鳴し、彼女の魂が浄化されていく。
「さよならじゃないよ。あなたの中に、わたしはいる。これからも・・・ずっと」
そう言って微笑んだ彼女は、光の中に溶けていった。
レイリアンは膝をつき、剣を地に落とした。
空は晴れ、森のざわめきが戻ってきた。
静寂の中で、彼はただひとことだけ、呟いた。
「愛している。愛しているんだ・・・アリア!アリア・・・アリア・・・」