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到着



 テライアの街を出発してから二十日後の朝。

 僕たちは無事、目的地であるランダルに到着した。

 ちなみに、生きているという一点のみに注視すれば無事というだけで、道中さまざまなごたごたがあったのだが……思い出したくない。

 対抗戦に火を燃やすアウレアに命じられ、修行と銘打ったモンスター退治を繰り返していたことだけは伝えておこう。

 今はとにかくベッドが恋しい。


「はあ……早く寝転びたいです、切実に」

「エルネと同意見になって嬉しいけど、どうして君がそんなに疲れてるのさ。戦闘も修行もしてないのに」

「嫌味なこと言わないでください……私はか弱い羊の仔……」


 意味の分からない弱音を吐きながら、エルネはトボトボとランダルの大通りを歩く。

 王都に近いだけあって、この街の発展具合はかなりのものだ……一目見ただけで田舎との違いを思い知らされる。

 大通りにある商店の数も人通りの多さも桁違いで、僕的には全く馴染めそうにない。

 山、サイコー。


「ボケっと歩くと危ないぞ、エルネ。こっちにくるんだ」


 人波に流されそうになるエルネを抱き寄せるナイラ。

 背中には例の如くアウレアを背負っているのに、よく周りを見ている。


「悪いがウィグ、マスターをおぶってもらえるか? エルネの疲労もピークらしいから、肩を貸してやらねば」

「おっけー」


 別に僕がエルネに肩を貸しても良いと思ったが、身長の問題で彼女を持ち上げてしまうので、この配役が丁度いい。

 ナイラからアウレアを受け取り(それはもう手荷物が如く)、背中に配置。

 すると。


「……――なんじゃこのゴツゴツは‼ 寝づらいわ‼」


 枕にうるさいアウレアが飛び起き、後頭部を殴ってきた。

 普通に痛い。


「す、すみませんマスター! ほら、ウィグも謝るんだ!」

「いや、僕が何をどう謝るんだよ」

「お前の背中が無駄に筋肉質なのがいけないのだろうが! 早くマスターに謝罪するんだ!」

「理不尽……」


 ちらっと振り返ると、渦中の人物は既にスヤスヤと寝息を立てていた。

 寝づらいと言いつつ、ちゃっかりご就寝してやがる。


「お眠りになられたか……全く、日頃からコンディションを整えておけとあれほど言っていただろう」

「誰がマスターのために背中を平らにしとけって意味だと思うんだよ。って言うかできないよ」

「平らなだけではダメだぞ。しっかりと柔らかさもなければならない」

「へー……ってことは、ナイラの背中はぷにぷになんだね」

「そうそう、いつマスターが寝にこられてもいいよう常にぷにぷにに……って、やめんか! セクハラだぞ!」


 背中がぷにぷには果たしてセクハラなのだろうか。

 コンプライアンスに厳しいギルドだ。


「全く……お前のあり余る性欲は目に余るぞ」

「僕がいつそんなエロ猿みたいなことをしたんだよ。思春期の男子じゃあるまいし」

「とぼけるなよ、ウィグ。今回の旅で、お前が何度も風呂を覗きにきたのを知っているのだぞ」

「いや待って。それは本当に身に覚えがない」


 マジで濡れ衣だった。

 宿場町に泊まった際、何回か入浴する機会はあったけれど……誓って覗きなどしていない。


「ほう、しらを切るつもりか。出るところに出てもいいんだぞ?」

「まあ確かに、ナイラの出るところは出てるよね」

「ほら見ろしっかり覗いているではないか!」

「いやごめん、冗談」

「冗談だと! 私の体型が出るところの出ていない寸胴ボディだとでも言いたいのか!」

「言葉尻を捉えないで」

「尻⁉ 尻はでかいが胸はないとでも⁉」

「言ってない言ってない。落ち着いて落ち着いて」


 ナイラ嬢、フルスロットルである。

 少しでも下ネタが絡むと冷静さを欠くので、見ている分には面白いが。


「その覗きは儂じゃぞ。最近一緒に風呂に入ってくれなくなったから、ちと成長を確かめたくてな……むにゃむにゃ」


 後頭部から自白が聞こえてきた。

 思わぬ犯人である。


「……ってことらしいです」

「……疑ってすまなかった、ウィグ」


 気恥ずかしそうに目線を逸らすナイラ。


「ねえ、一つ気になったんだけどさ」

「なんだ?」

「僕が風呂を覗いていると思ったなら、どうしてその時に言わなかったの? それじゃまるで、ナイラが覗いてほしがってるみたいじゃ……」

「【怪力無双(アギト)】‼」

「ごめんごめん嘘嘘」


 こんな街中でスキルを使うな。

 冗談じゃなく死人が出る。


「……まあいい。それより気を引き締めるんだぞ。『明星の鷹』の連中は既に街中に散らばっているだろうからな」

「……わかってるよ」


 旅の始まりにエルネと交わした会話を思い出しながら、僕は柄の位置を確かめた。



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