真性
ー町の目の前ー
「え?!何?!」
小川に投げ捨てられた少女は目を覚ますと同時に、腰に腰元に隠してある筈の短刀に手をかけた。
「あれ?ない?!」
そう。それは先程、意識を失うと同時に落とした短刀のあるはずの位置だった。当然あるわけもない。
しかし聖騎士。されど聖騎士。やっぱり聖騎士。さすがは聖騎士。短刀がないと気づくやいなや両腕にしこんだ短刀を引き抜き琢人にかまえた。
「何者?!私の必殺の一撃が全く通じないなんて!化け物!」
何物と問われても琢人には答えようがない。なぜなら琢人はただの人類を超越した一般人なのだから。
「一般人。」
「んなわけないじゃない!」
バカにされたと勘違いした来好は顔を真っ赤にしてさらに続けた。
「私の短刀はプラチナ製!それに自分で言うのもなんだけど、短刀の扱いにおいて右に出るものはいないと自負しているわ!」
確かに、来好の短刀の動きには一切の無駄もなく、最小限の力で最大限の力を出せていた。それに当たり前だが獲物に向かって寸分の狂いもなく真っ直ぐ向かっていっていた。それほどの技術があればたとえ地球上で二番目に固いと言われるロンズデーライトさえも切り裂くことが可能だろう。しかし切れなかった。
「なのに!なぜ表皮に傷ひとつもつけられないの?!」
自分の技に絶対の自信を持つ来好。自分に切れない人間以前に、自分に切れない物体の存在を認められなかった。
「なぜと言われても、、、」
辺りは静寂に包まれ、来好の唾を飲む音すら聞こえてくる。
「何もしていないから答えようがない。」
唖然。来好の怒りは限界点に達した。
「なにもしていないだと?!己、聖騎士を愚弄するか!その愚かさ、その身に刻んでやる!」
来好は左手の短刀を琢人に向けて一直線に投げ、それを加速させるため空中で回転しながら足で蹴る。と同時に腰にかかったもう一本の短刀を引き抜き思いきり地面を蹴った。
「聖騎士?!いきなりなんだ?!危ない!」
助けたと思った少女にいきなり襲いかかられ、琢人は瞬時にその場を離れる。
しかし、来好は予想通りとばかりに琢人の避けた方向に短刀を蹴りつけ自信も迫る。
短刀は更に加速し琢人に迫る。
それが何度も続き、どんどん加速していく短刀に危険を感じてきた琢人は、仕方なく、制圧することにした。
短刀が蹴られこちらに向かってくる、さっきまでは避けていたが今度は避けない。別に受けようと言うわけでもない。
「観念したか!散れぇ!」
だんだん口が悪くなっていく来好。
お下品だと思いながら琢人は右手を握り左肩の辺りまで持ってくると、短刀の接近に会わせて短刀の腹めがけて振り抜いた。
琢人が拳を振り抜くと同時に短刀の刃は粉々に砕け散り、柄はどこかへ飛んでいった。
「なっ!」
常人には目にも止まらぬ早さの短刀を破壊した琢人に来好は顔を歪めた。
ああ、なんて強烈な拳。と思って。
短刀は砕かれたが本命は自分自身、来好はそのまま突っ込む。瞬時に後ろに回ろうかとも考えたが、それが意味に事を戦いの中で学べないほど、来好もバカではなかった。
(気は乗らないが。なにもしてないのに殺されちゃたまったもんじゃない。ごめんよ!)
なにもしていないとはよく言うが、琢人は心の中で謝りながら迫ってくる来好を死なない程度に動けなくなるくらいの力で殴った。
ぐちゃ。という音がして来好は後方に吹っ飛ぶ。
(ああああああああああああああああああ)
数本木をへし折りながら飛ばされて行き、ついに地面に転がる。
(想像以上!)
地面に転がり悶絶する来好。その顔は、だらしなく口を開け、目は泳いでいた。とても今しがたぶん殴られた人のそれとは思えない。何かに例えるのなら、オークに○○された挙げ句○○○○した女騎士のそれだ。
(もう一発)
そう。来好はドMだった。
少し加減に失敗し、ありえないくらい飛ばされた来好の様子を見に来た琢人。
そこに転がっている来好を見てその場をそっと後にした。
(こいつは関わらない方がいいな)
ごめんなサイヤ人