後編
−−−おかしい、どれだけ走っても会社に着かない。道は間違っていないはずだ、あの建物に向かったときはこんなにも車を走らせていない。
(訳がわからない)
何故、どうして会社に戻ることが出来ない。気づかないうちに道を間違えたか?いや、そんなぼけっとしていたら事故っている。どこかおかしな点はなかったか?思い出せ、思い出せ、思い出せ……っ!
「あ」
(僕は、どうやってあの建物に行った?)
会社を出てからあの建物に向かう間の風景が、外の様子が思い出せない。確かに車を運転してメモの住所に向かった。何もおかしなところはなかった。なかったはずだ。
一度車を止め、深く深呼吸して混乱気味の思考を半ば強制的に落ち着け、思い返していく。
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混乱しすぎて、考え過ぎて頭が痛い。いつの間にか僕は顔を抱えていた。ガンガンと痛む頭を抑えながら顔を上げる。
「…は?」
暗闇だった。車内はぼんやりと見えるのに、外は真っ暗で何も見えない。前も、後ろも、左右も真っ暗だ。あまりの事に呆然とするが、直ぐに車のライトを点ける。それでも地面が見えるだけで、周囲は一切見ることが出来ず、暗闇に包まれたままだ。
(…………)
僕はアクセルを踏み、車を走らせる。地面があるのを確認し、ただひたすら真っ直ぐに走らせる。
(…………)
相変わらず周囲は闇に包まれている。ライトに照らされているにも関わらず、地面以外は何も見えない。
(…………)
ふと、何かの音が気こえてきた。聞いていて不快に感じる音だ。
(……うるさいなぁ)
その音は一向に止まない。心なしか、どんどん大きくなっているように思える。
(……?)
何故だか喉が痛くなってきた。なんとなく左手で喉に触れる。
(……………あぁ、)
この不快な音は、自分の悲鳴だったのか。
「あああああァアアアァアァアアアァあぁあアアアアアアアアアァアアアァあぁあアアアァアアアアアアァあああああぁぁアァアアアァア゛ア゛ア゛ア゛ア゛アアアァあぁあア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ァアアアァアァアアアァあぁあアアアアアアアアアァアアアァあぁあアアアァアアアアアアァあああああぁぁアァアアアァア゛ア゛ア゛ア゛ア゛アアアァア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛」
一度意識すれば音は、自分の悲鳴ははっきりと聞こえた。悲鳴をあげていると自覚できるのに、止めることができない。そんな状態なのに、何故か思考は冷静なままだ。
前に意識を向ける。
(…あ、真っ暗だ)
見えていたはずの地面も消えていた。そして車内も暗くなり、僕の視界は暗闇に染まった。
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「おい、おい大丈夫か?倉橋!起きろ!!」
「どうしたんで……て倉橋!?課長、コイツどうしたんですか?」
「分からん…企画書を受け取った後、急にふらついて倒れたんだ」
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「躰を落とさぬよう、お気を付けて……フフッ」




