介入
祇梨蓮斗は最上位魔法の負荷と2つの魂を無理矢理一つにした反動であと数秒で意識が途切れる。その前に目の前に存在する邪神は倒し切る事は出来ない。ならばと魔法の発動の傍ら、別種の魔法を展開する。
蓮斗「闇系統上位魔法・暗転黒視」
蓮斗「倒し切れなくても、視界だけは、奪ってやるよ.....後は頼みます、滝壺さん...。」
そう託す様に呟くと同時、祇梨蓮斗の意識再び途絶れ、闇に沈む結果となった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
滝壺「一旦お疲れさん、蓮斗君。じゃあ予定通り蓮斗君の回復を頼んだ。意識が戻るまでは時間を稼ぐ。」
月柳「了解した。ここら一帯にも認識阻害と結界を張っておる。少しだけなら問題は無い。」
滝壺「ありがと、じゃあ始めようか。」
滝壺「霊気解放・空狐長...1%」
滝壺間宮がそう呟いた途端先程まで荒れ狂っていた邪神がピタリと動きを止めた。その顔は何かを察したのか自我が無いにも関わらず冷や汗がとめどなく流れている。そして、変化が始まった。
滝壺「これ使うの、久々だからなぁ、上手く加減が出来ればいいんだが....」
月柳「(心配じゃ...)」
月柳がそう思った時、滝壺間宮が1歩踏み出した。次の瞬間滝壺間宮の姿は忽然と消え、邪神の悲鳴とも取れる叫び声が妖人街全体に響き渡る。邪神の方に目を向けると邪神は遥か後方まで吹き飛ばされた上で攻撃の要である両腕を切断されていた。
月柳「...相変わらず、早くて目で追うのは不可能じゃな...。桜陽...もういいのじゃ。」
刹那「1%でこれだからな...本気出したらどれだけ強いんだろうな...考えるだけで恐ろしい。」
月柳達がそう言っている最中も滝壺間宮はとてつもない速さで邪神に襲いかかっていた。
滝壺「ははは...さすがに頑丈だな、桜陽!」
そう言い殴る蹴るなどのシンプルな打撃のみで邪神を攻めている。
花園「それにしても、なんで魔法を使わないんでしょうね。間宮様って魔法の方が得意なのに。」
月柳「あぁ、そういえばお主があれを見るのは初じゃったな花園。あの形態はいわば、超がつく程手を抜いてるんじゃよ。だが、なにぶん力が強すぎてな、相手を殺してはならん時はああして物理で殴るんじゃ。」
花園「そうなんですね、間宮様があんな風に肉弾戦をするのはあまり見ないんで、ちょっと驚きました。それにしても、やっぱり悲しそうですね...」
神々の間で語り合う最中間宮を見ると、その顔には哀愁の漂う悲痛な表情を浮かべていた。あれは、相手を憐れむ者がする顔じゃ。
滝壺「......ん?」
邪神を追い詰めていた滝壺間宮の動きがいきなり止まった。その目は邪神とは全く別な方を見ており方角は南、妖人街の中央の方だった。
黄昏「どうしたんでしょうか、いきなり止まって...何かあったんでしょうか?」
月柳「いや、妾にも分からん。だが間宮は妾達が気付かんかった何かを感じたのか?」
そう思っていると滝壺間宮が邪神に向けて渾身の踵落としを食らわせた。その一撃が決定打だったのか、邪神は沈黙した。それを確認し月柳達は滝壺間宮に向けて声をかけた。
月柳「間宮よ!どうかしたのか!?」
滝壺間宮が邪神から目を離さない。此方の声は聞こえている筈だが、一向に反応しない。それに違和感を感じ刹那が動こうとした時だった。
???「水系統最上位魔法・溶解侵食〝蔓蓮華〟」
神々「!?」
いきなり月柳達神々を狙ったであろう魔法目が凄まじいスピードで飛んでくる。全員が間一髪で攻撃を回避、魔法が飛んで来た方向に目を向けると何者かが立っていた。
???「ハハハハハ!流石はこの地を守る6柱の神!これをいとも容易く回避するとは、お見事!」
月柳「お主、何者じゃ...?この世界に何の為に入った...?返答次第では...。」
月柳がそう威圧混じりで問いかけた。するとその男は驚くべき事を口にしその場に居合わせた神々を驚愕させた。
シルグ「お初にお目にかかります、俺の名はシルグザース。パンデモニウムの大幹部が1人、悪辣者だ!ここに来た目的は、この街にあるとされる秘宝の回収に来た!」
月柳「秘宝...まさかっ!」
シルグ「正しく貴女が考えている通りだ!ここ妖人街にあるとされた地脈結晶、それを貰う為に遠路はるばるここへ来た訳だ。」
月柳「お主、それがどう言った物か、分かっておる上で持ち出そうと...?」
シルグ「あぁもちろんだとも!だが、これは我らパンデモニウムの計画に必要な物でね、ありがたく頂く事にする。」
刹那「貴様、逃げられると思っているのか!?」
そう言いながら刹那がシルグ・ザースと名乗る男に飛びかかった。しかしすんでの所で滝壺間宮が止めた。
刹那「な!間宮様、なぜ止めるのですか!?」
滝壺「やめておけ刹那。お前じゃあいつに勝てない。死にたくなければ大人しくしろ。」
刹那「...!わ、分かりました。」
シルグ「おや?俺は神の検体も欲しかったんだが...お前、何者だ?」
滝壺「...それを聞いてどうするんだ?」
シルグ「いやな、神に命令できる存在がここに居るとは情報に無かったものでな、少々興味がそそられたんだよ。それで、お前は一体...」
滝壺「...それ以上喋るな。お前、あっちで何人に重傷を負わせた?」
シルグ「ん〜、そうだなぁ...30人程度の民間人の血を採らせて貰ったよ。まぁ、何人か虫の息でしたが、ハハハハハ!」
滝壺「...そうか、あと1つ。お前が、桜陽の封印を解いたのか?」
シルグ「あぁそうだ。アレは神に対しては弱いがそれ以下の存在に対しては無類の強さを誇る。だから利用させて貰った。」
月柳「貴様っ...!そんな事の為に桜陽を...!?」
シルグ・ザースの言葉に月柳が激昂しそうになった時、一瞬にして激情が消し飛ぶほどの怒気がその場を支配する。
神々「「「.....!?」」」
シルグ「ふむ、やはりお前の正体が気になるな...」
滝壺「喋るな...あと、もう死ねよ。」
そう言った瞬間、滝壺間宮は既にシルグザースの眼前に立っていた。魔法を放つのかと思ったが、間宮はシンプルな抜き手を放ち奴の心臓を抉り出していた。
シルグ「ハハハ!素晴らしいな...!出来ればお前を検体にしたかったが、俺はこれにて失礼させて貰う...。また会う時は必ず、お前を殺して俺の検体にしてやろう。楽しみにしていろ、謎の男.....!」
滝壺「やれるものならやってみろ。異常性癖野郎」
そう言うとシルグザースは霧のようにして消えた。今まで感じていた気配がまるっきりこの世界から消えていた。
月柳「間宮、大丈夫か?」
滝壺「あぁ、俺は大丈夫だけど、今すぐ何人か街の方に向かえ。怪我人を全員治療してくれ。」
花園・黄昏・麻姫「了解/OK/分かった〜」
そう言い神々の三人娘はすぐに街の方へ向かった。かと言うその場に残った月柳達は倒れている邪神の近くへ来ていた。
刹那「致命傷を受けて再生も停止、死ぬのも、あと少しでしょうね。」
月柳「あぁ。もって、あと3分と言った所か...」
月柳は泣いてはならないと分かっている上で少しだけ涙が出た。
黎明「大丈夫...?やっぱり、辛い...?」
月柳「あぁ、いくら狂ってしまったとはいえ、かつての親友が死ぬのだ...少しだけ泣かせてくれ...」
滝壺「あぁ...今は起きてるのは俺たちだけだ。気が済むまで泣くといいよ。」
そう言われた月柳は堰き止めていた涙が嗚咽と共に溢れ出した...
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
蓮斗「ん、ん...ここ、は...はっ!」
祇梨蓮斗はすぐにその場に起き上がった。しかし、先程まであった邪神の強大な気配が嘘の様に小さくなっているのに気が付き、困惑していると誰かが泣く声が聞こえた。そちらに目を向けると、月柳が邪神に向かって泣いているのが目に映った。
蓮斗「え、どうしたんですか…?大丈夫ですか?」
滝壺「起きたか、蓮斗君。さぁ、君がこいつに、トドメをさしてやってくれ。」
祇梨蓮斗はその言葉を聞き少しだけ、何かが引っ掛かった。何がかは分からない、それでも何か言葉に違和感を感じた。だが、当初の目的を忘れてはいけない。祇梨蓮斗は邪神の前まで行き魔法を放った。
蓮斗「できるだけ、苦痛の無い終わり方で...」
蓮斗「水系統上位魔法・水淵夢郷」
魔法を発動した時、祇梨蓮斗の脳内に直接声が聞こえた。
「「ありがとう...」」
ただ、その一言だけだった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
戦いが終わり、祇梨蓮斗と滝壺間宮は二人で夕日を眺めながら神社の石階段に座っていた。
蓮斗「...滝壺さん、あの邪神、いえ、あの神と月柳さんは...えっと、何か深い関係だったんですか…?」
滝壺「...そうだね、奴に終止符を打ってくれた君になら、話しても良いかな。」
そう言うと滝壺間宮は静かでゆっくりと話し始めた。
滝壺「あいつに名前は桜陽。元はここ妖人街を守護する七柱の神の一柱で最強だった。アイツは人望が厚く、どんな存在からも頼られ、それに応える善神だった。だが、信頼されるが故に、心無き願いも多くあいつに寄せられた。アイツは長い時間をかけてその願いに蝕まれ、ある時ついに心が壊れたんだ。そこからは今まであったあいつの姿は無くただ全てを壊す邪神に成り果てた。」
蓮斗「そんな事が、あったんですね...」
滝壺「桜陽と月柳はとても仲が良かったんだ。だからこそ邪神に堕ちたあいつを殺す事が出来なかった。だから封印する様に俺に懇願してきた。俺はそれを承諾して桜陽を封印したんだ。」
蓮斗「だからあの時、泣いてたんですね...」
滝壺「あぁ。でも、気にするな。月柳は君に感謝してたよ。自分の友を救ってくれた君に。」
蓮斗「そう、ですか...あの神の過去を知ると、喜べませんね...」
滝壺「そう、だよな。」
蓮斗「でも、あの神様を救えて良かったです...」
滝壺「そっか.....」
2人の会話はどことなく寂しく、沈みゆく夕日が悲壮感と切なさを後押ししていた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
シルグ「リストにあった物、持ってきたぞボス。でも、本当にこれって必要なのか?」
???「あぁ、これで俺の目的にまた1歩近づいた...これまで通り、集めてくれよ、皆...」




