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第1の試練

祇梨蓮斗が妖人街に来て四日が過ぎた。と言っても4日たったのはこの神社内だけであるが。祇梨蓮斗は滝壺間宮の指導のもと、魔力の操作と魔法発動の訓練をしていた。滝壺間宮が言うには祇梨蓮斗が使う魔法は速射性に関しては問題は無いがイメージの問題で本来の性能を十分に発揮できていないと言う。

滝壺「やっぱり蓮斗君は魔法を発動させる時のイメージがやっぱり不完全だね。前にも言った通り魔法ってのは2つのイメージが同じレベルで完成された時が1番効果を発揮するんだよ。今君がやってるのは1つのイメージは完成してるけどもう一方のイメージがアヤフヤなんだ。だから最上位魔法は使えないし上位魔法の制御に苦労するんだよ。」

蓮斗「なるほど、1つのイメージは完成していて一方がダメと...。何かコツってあるんですか?」

滝壺「コツ?そうだな、2つのイメージを同時に、尚且つスピーディーに構築する事かな。」

滝壺間宮は少し考えてからそう言った。確かに滝壺間宮が魔法を放つ時詠唱から発動までの時間はおよそ0.0001秒。詠唱した瞬間には魔法が炸裂している。しかし、コツを聞いてみても実行できるか分からない。祇梨蓮斗が頭の中でそのコツについて考えていると後ろから新島杏の声がした。

新島「もし高速でイメージが作れなくて悩んでるなら並行思考と思考加速を同時使用してみたら?」

そんなアドバイスをしてくれた。確かに、そうすればイメージの構築に時間はかかからない。しかし、その2つを同時併用すれば脳に負荷がかかり魔法発動以前の問題では?と祇梨蓮斗が思った時

新島「今の蓮斗くんは前回黒王戦鬼になった事でその脳に対する負荷に対しての耐性を得てるんだよ。これは国防軍の精密検査で判明した事だから安心だよ。」

蓮斗「なるほど、分かりました。やってみます。」

そう言うと祇梨蓮斗は目を閉じ深く息を吐く。空気を吸った瞬間祇梨蓮斗は思考系の2つの魔法を同時発動させた。新島杏の言う通り、脳に負荷がかかり意識が無くなるなんて事はなかった。第1関門はクリア、そう判断した祇梨蓮斗は魔法を詠唱する。

蓮斗「火系統上位魔法・陽炎侵食」

思考速度を数十倍に高め複数思考でイメージの構築を高速化。祇梨蓮斗は今まで、魔法のイメージを意識して構築するのに要していた10秒と言う時間を3秒にまで短縮し、詠唱から発動までの時間を1秒にする事ができた。

蓮斗「やった、やった!どうですか!?今のは良かったんじゃないでしょうか、滝壺さん!」

滝壺「なるほど、その2つを併用すればイメージ構築が苦手な蓮斗君でもここまで時間を削れるのか。うん、俺も新しい学びがあったよ。あと、上出来だ。これから訓練してどんどん時間を短くしていこう。」

蓮斗「はい!あと新島さん、アドバイスありがとうございます。おかげで上手く行きました。」

新島「気にしなくていいよ。」

祇梨蓮斗達がそう話していると鳥居の方から月柳と知らない男性が歩いてきた。

月柳「何があったかは知らぬが、3人ともに笑っているという事は、上手くいったのかえ?童。」

蓮斗「はい!お2人のアドバイスで時間を大幅に縮める事が出来ました。これからこれを重点的に鍛えていく事になります。」

月柳「そうかそうか、成功して何よりじゃ。ところで童よ、お主に紹介せんといかん者はおる。」

そう言うと月柳はこっちに来いと言うジェスチャーをして1人に男を呼び寄せた。風貌は長身で細身、どこか存在が希薄に見える青年だった。

月柳「紹介しよう。こやつは我ら神6柱の一柱、黎明じゃ。まずはこやつからの試練をお主には行ってもらう。異論はあるか?」

祇梨蓮斗は月柳の言葉に少し迷った。4日経ち漸く少しだけ成果が出てきた所だったからだ。そんな絶賛修行中の身である祇梨蓮斗が神に一撃を与えられるかなんて考えなくても無理だと分かる事だ。断ろうと思ったその時

月柳「お主今断ろうと考えておるな?」

月柳は祇梨蓮斗の思考を読んだようにそう言った。祇梨蓮斗が驚き月柳の方へ目を向けるとその目はとても鋭い物に変化していた。

月柳「お主は今、お主の中におるソレを抑え込む為にここへ来たのであろう?ならば目先の強者から目を逸らすな。我らはお主が越えねばならん壁なのだ。我らを下し認めさせねば、いつか必ずお主の最も恐れる未来が来るぞ。」

月柳は祇梨蓮斗の目を見てそう言った。祇梨蓮斗が最も恐れる未来、それは黒王戦鬼が、祇梨蓮斗自身が大切な人を殺し、大切な日常を壊す事。それだけは絶対に起きてはならない未来。祇梨蓮斗は今一度考えた。考えて考えて、考え抜いた時

蓮斗「お願いします...!」

恐怖はあった。だが、足踏みしている暇は無いと本能が叫んだのだ。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

新島「だ、大丈夫なんでしょうか...いくら蓮斗くんが人一倍才能があると言っても、まだまだ子供。流石に神と戦うの早いんじゃ...」

滝壺「そうかもしれない。でも、彼は決心したんだ。外野の俺達がどうこう口出しする事じゃない。今はただ、見守ろう。」

新島「そう、ですね...」

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

月柳「黎明よ、お主が使って良いのは権能1つじゃ。それ以外は使用禁止。それ以外ならば何をしても良い。本気でいけ。」

黎明「...分かった......」

蓮斗「よろしくお願いします!」

滝壺「両者準備はいいかな?それじゃあ始めっ!」

蓮斗「(まずは軽く相手の出方を見るか...)」

蓮斗「水系統中位魔法・水蛇侵攻」

祇梨蓮斗は小手調べでジャブ感覚で中位魔法を放った。小手調べと言っても一切手を抜く事は無く、水の蛇が数体同時に黎明と呼ばれた神に襲いかかる。しかし、当たらない。何故か魔法は神をすり抜け消えてしまった。

蓮斗「なっ!?」

黎明「権能解放.....明けの明星.....」

黎明はそう呟いた。瞬間、その場から光が失われた。否、まるで今たっている場所が夜明けの時と言わんばかりに薄らと月の出る白んだ空に変わっていた。呆気にとられていると黎明が動き出した。

蓮斗「(出し惜しみしてる場合じゃない...!!)」

蓮斗「土系統上位魔法・土流衝波」

しかしまたしても当たらない。何が起こっているのか祇梨蓮斗には分からない。確かに当たっている筈なのに魔法が空を切る。

蓮斗「(滝壺さんみたいに魔法に対しての絶対的な防御能力があるのか?いやしかし、滝壺さんなら少なくとも当たったという感触はある。でもこの神は当たったという感触が一切ない...!まるでそこには何も無いかのように...こうなったら!)」

蓮斗「強化系統魔法・身体強化!」

祇梨蓮斗は魔法による牽制を止め、身体強化を自身に施し神と一気に距離を縮めた。射程圏内、そう祇梨蓮斗は判断し渾身の蹴りを放つ。しかしその蹴りは虚しく空を蹴り抜いていた。祇梨蓮斗が蹴り抜いた瞬間、黎明の体はまるで煙のように消え、足を退かすと一瞬で再生した。

蓮斗「(分からない...!どんなからくりがあるんだ...!?さっきあの神は〝明けの明星〟と言っていた。それがなにか関係があるのか!?)」

祇梨蓮斗がそう思考を巡らせていると不意に後ろに気配が出現した。咄嗟に防御魔法を展開した瞬間強烈なパンチが飛んできた。

蓮斗「グゥッッ!!」

祇梨蓮斗は5m程後ろに飛ばされた。張った筈の防御魔法もいとも容易く破壊されていた上に、軽減されたとは言えダメージを負った。

蓮斗「冗談でしょ......?」

顔を上げるとそこには2人目の黎明が立っていた。祇梨蓮斗は目の前で起きている不可思議な現象に驚く。

蓮斗「(分身か...!?いや、どちらも本物?)」

祇梨蓮斗が半ばパニックになった頭で考えていると2人の黎明が同時に走り出す。

蓮斗「くっっ、二重詠唱・火風ノ大竜巻」

展開された炎の竜巻で2人を足止めしつつ祇梨蓮斗は後方へ飛び距離を取ろうとしたがそれは叶わなかった。

蓮斗「3人目...!?」

またしても突然出現した黎明に背中に強烈な蹴りを食らう。瞬間背後にとてつもない激痛が走り私は一瞬意識が飛びかけた。

蓮斗「一体、どうなってるんですか...!」

黎明の攻撃に翻弄される祇梨蓮斗がそう漏らすと同時に火の竜巻が破られ2人の黎明がこちらに向かって猛スピードで突っ込んでくる。そう、今の祇梨蓮斗が置かれた状況で、ゆっくり考えてる時間は無いのだ。

蓮斗「風系統上位魔法・斬風鬼刃「連斬」」

放ったはいいものの、やはり祇梨蓮斗の魔法は当たる事は無く黎明をすり抜ける。祇梨蓮斗が黎明に一撃を入れるにはやはりと言うべきか、この奇妙な技を封じなければいけないらしい。

蓮斗「(考えろ、黎明、明けの明星、この2つの共通点、なんだ.....)あ.....」

祇梨蓮斗の中で何かが繋がった。瞬間瞬間的に動きが止まった祇梨蓮斗に向かって3体の黎明が別方向から同時に飛びかかる。祇梨蓮斗はそれを間一髪で躱しきり地面を転がる。だが祇梨蓮斗の中には一つだけ確信に近い何かができた。

蓮斗「(黎明、明けの明星、この2つは共通して明け方を指す言葉。つまりこの共通点である明け方があの厄介な能力の攻略の鍵になる!)」

そう半ば確信に近い答えに辿り着いた祇梨蓮斗は並列思考と思考加速を発動させ超高速で攻略の糸口を探す。

蓮斗「(明け方、それは日が昇る時間、時間?)」

祇梨蓮斗は黎明の攻撃を捌きつつ、一つの仮説に辿り着きその仮説を立証するために手を打つ。

蓮斗「火系統下位魔法・陽光収束」

それはただ陽光を1点に集中させる魔法。攻撃性能は無いに等しい物だが、即座に発動させた。焼け石に水かと思われた行動だった。しかし何故か三体の黎明は同時に動きを止めこの魔法に近づこうとしなかった。

蓮斗「っし!ビンゴです!」

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

月柳「ほぉ....」

滝壺「もう気付いたのか、早いな。」

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

蓮斗「神黎明!貴方のその能力、ようやく理解しました!あなたの能力は彼は誰時です!」

新島「彼は誰時...?それって明け方を指す言葉じゃなかったっけ...?」

蓮斗「彼は誰時の語源は薄暗くて人の顔の見分けがつかない時刻を表す言葉です。故に貴方は意図的に明け方の明るさに空間干渉して、正しく彼は誰時と同じ環境を作った!その複数存在しているのはあくまで貴方の力を分けた分霊。だが本体はここにおらず、本体は戦場を俯瞰出来る場所に陣取る!故に....そこ!!」

祇梨蓮斗は高く跳躍し空に出ていた月に魔法を放つ。

蓮斗「雷系統上位魔法・響雷光牙」

祇梨蓮斗が放った上位魔法は月に直撃。その瞬間先程まで月だった者は黎明へと姿を変えた。先程までそこにいた黎明達は姿を消し黎明の体へと戻って行った。

新島「これって、」

月柳「まさか、やり切りおった...!」

滝壺「勝負あり!勝者、祇梨蓮斗!!」

滝壺間宮がそう言うと緊張の糸が途切れたのか祇梨蓮斗はその場に頭から墜落する。正直、祇梨蓮斗が今までに戦って来た者の中で一番苦労したと断言出来る厄介さだった。だが、祇梨蓮斗の勝利条件、神に一撃を入れるを達成し祇梨蓮斗は晴れて第1の試練を突破する事に成功する。

蓮斗「や、やったーーーーー!!!」

祇梨蓮斗はガッツポーズをとって喜んでいた。正直とても嬉しい。ここまで搦手に特化した戦い方をする相手は初めてだったので勝てたのがとても嬉しいらしい。

月柳「童よ、第1関門突破おめでとうなのじゃ。それにしても先程なぜあの場面で下位魔法を放ったんじゃ?」

蓮斗「簡単な事ですよ。これは私の中で推測でしかなかったんですが、私の中であのすり抜ける能力=彼は誰時の応用だと思ったので強い光には寄り付こうとしないんじゃないかと思ったんです。正直博打(ギャンブル)が過ぎましたが...結果的にあれが確信に繋がる物でした。」

祇梨蓮斗がそう答えていると後ろから黎明が歩いてきた。

黎明「...僕の、負け...。だから、これあげる....。」

そう言いながら黎明は祇梨蓮斗の額に触れた。瞬間祇梨蓮斗の中に何かが入ってきたのが分かった。

蓮斗「これは?」

滝壺「生命の因子だね。これで君が所有する因子は2つ目だ。これからどんどん取得していこう。」

蓮斗「はい!」

こうして祇梨蓮斗は修行開始4日目にして試練の第1関門、黎明戦を勝利を収めた。

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