最終日・異空間
学園都市に来て今日で7日目、最終日だ。1週間継続して行っていた為か魔力のコントロールは、1週間前よりも格段に成長し以前とは比べられない程、自由自在に出来る様になっていた。今日は楽海界人に呼び出されている為、統括組合に向かっている。ふとスマホを見ると物凄い量の通知と不在着信が来ている事に気づいた。
新島「わぁ!すごい着信の量だね。何かやらかしたの?蓮斗くん。」
蓮斗「いやぁ、思い当たる事は特にないですけど、何かあったんでしょうか...?」
そう思いつつ祇梨蓮斗はスマホを開いた。そこには美月和香織と天羽綾人からの凄まじい量の連絡が入っていた。
蓮斗「あ、」
新島「蓮斗くん、もしかして休む事伝えてなかったの...?」
新島杏がそう言いながらこっちを見た。その目は何かを察している様な、若干引いた目で見ていた為祇梨蓮斗はいたたまれなかった。
蓮斗「はい、伝えるのすっかり忘れてました.....」
そう言い訳のような事を口にしているとタイミングよく着信がかかってきて、画面を見れば相手は美月和香織だった。。
新島「これ、出た方がいいと思うよ、蓮斗くん。」
蓮斗「はい...」
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蓮斗「はい、もしもし、香織さ.....」
香織「やっと出たー!!心配したんだよー!?」
電話に出て口上を述べようとするも美月和香織の勢いは凄まじく、祇梨蓮斗は口を噤む他無かった。
蓮斗「ほんっとにすみません。伝えるのをすっかり忘れてました...」
香織「もぉーーーー!!気をつけてよねー!」
そう電話の向こうで拗ねたような怒った声が聞こえた。すると美月和香織とは別の、声だけでも憤慨していると分かる人物が話し出した。
天羽「おい祇梨、お前今どこにいんだ?いきなり3週間学校休むとかいきなり朝礼で言われたと思ったら、家にも居ないしどこいってんだ!?」
そう天羽綾人の怒号が響いた。正直鼓膜が破れるかと思ったが今の祇梨蓮斗にそれを咎める資格は無い。
蓮斗「えーっとですね、今は学園都市エーゼルファリアに居るんですよ。」
香織「学園都市!?確かそこってほぼ女の子しかいないくて男の人は入っちゃダメな都市じゃなかった!?なんで男の子の蓮斗が入れてるの!?」
蓮斗「え、そうなんですか?」
祇梨蓮斗はその言葉を聞きすぐに新島杏の方へ目を向けた。すると新島杏はよそを見て目を合わせない。
新島「国防軍と学園都市の統括組合が正式に許可を下ろしたから入っても大丈夫なんですよ〜...あはは...」
そう笑いながら言った。もちろん祇梨蓮斗はそれについて一切の説明をされていなかった為知らなかった為、大いに慌てた。
蓮斗「(ん?男性が入っちゃダメなのに、なんで楽海さんは統括組合に普通に居るんだ...?)」
混乱する最中祇梨蓮斗がそんな考えがふと湧いた時、美月和香織が呼んでいる事に気づいた。
蓮斗「あ、すみません。なんでしょうか?」
香織「それにしてもなんでいきなり学園都市に行ったの?何か用事でもあったの?」
そう質問され、祇梨蓮斗は素直に分けを話そうとした。しかし今の状況を説明しようとした瞬間新島杏が祇梨蓮斗の口を慌てた様子で急いで塞ぐ。
蓮斗「(な、何ですか!?)」
新島「(君の中に黒王戦鬼が居るってことは超極秘事項なの!どんなに親しくても君のご両親以外に不用意に言ったらダメ!)」
そう小声で静止され祇梨蓮斗は別の理由を考えた。
蓮斗「えーっとですねぇ、私が高校生で上位魔法を使えるのが凄いらしくて、学園都市の偉い人が会ってみたいってなったらしく、急遽学園都市に来たんですよー。あはは...」
蓮斗「(これでいいですか!?新島さん!)」
新島「(これなら大丈夫だと思うよ!多分!)」
祇梨蓮斗はこの時新島杏という人物が結構ノリと勢いで生きてる人なんじゃと思った。
蓮斗「私はそろそろ用事があるのでここまでです。すみません、また何かあれば連絡するので安心してください。」
香織「えー、もう行くの?...分かった!じゃあまた連絡するね!」
天羽「今度はちゃんと話せよ馬鹿。」
蓮斗「馬鹿は余計ですが分かりました。善処します。」
そういうと電話は切れた。一瞬危なかったが、何とか事実を伏せた状態で話を切り上げられてほっとした。安堵の表情を浮かべていると新島杏に軽く背中を小突かれた。
蓮斗「すみません....」
新島「私も伝え忘れてたからこれでチャラって事で。いいね?」
その表情を見た祇梨蓮斗は了承する他なかった。
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新島「楽海さーん!来ましたよー!」
統括組合の扉を開きながら新島杏がそう言った。しかし統括組合には誰も居ないのかしんと静まり返っていた。
蓮斗「?今は留守にしてるんでしょうか?」
新島「え?確かにこの時間に来るようにって、ほら、スマホにも履歴が残ってる。」
蓮斗「ホントですね...何かあったんでしょうか?」
新島「んー、どうなんだろうね。ここで待ってるのもなんだからそこのカフェで待っとこうか!」
蓮斗「そうですn、ん...?」
何気ない会話をしていると祇梨蓮斗は少し、原因不明の違和感を感じた。
新島「蓮斗くん?どうかしたの?」
祇梨蓮斗のその様子を見て新島杏が怪訝そうな表情を浮かべる祇梨蓮斗の顔を覗き込んだ。新島杏はどうやら何も感じていないらしい。それを理解し状況を共有しようと祇梨蓮斗は気になる場所を指を指す。
蓮斗「新島さんの特殊異能って千里眼でしたよね?もし良ければあそこ見てくれませんか?」
新島「別にいいけど、急にどうしたの?」
蓮斗「いえ、何かあそこから違和感を感じるんですよね。何かにか見られているような...」
新島「そうなんだ...?分かった。」
新島「特殊異能・千里眼【透視】」
そう言うと新島杏は特殊異能を発動させた。5分ほど祇梨蓮斗が指を差した場所とその周りを見ていたが特に変わったものは無かったらしい。
新島「これといった変なモノは無かったよ。蓮斗くんの気のせいだったんじゃない?」
蓮斗「そうだったんでしょうか?何か、気持ち悪いですね。」
新島「大丈夫?具合でも悪いのかn、えっ?」
祇梨蓮斗の不可思議な態度に心配が生まれたのか祇梨蓮斗の身を案ずる言葉を発したと同時、新島杏がなにかに反応した。何かを目の端で捉えたのか顔が一瞬で青ざめ冷や汗が滲んでいる。
蓮斗「新島さん...?大丈夫ですか、ちょっ!?」
新島杏に声を掛けた瞬間、突如として新島杏が祇梨蓮斗の体を突き飛ばした。それはまるで、ナニかから守る様に。祇梨蓮斗は咄嗟の事で対応できずにその場に倒れ込んだ。
蓮斗「ちょ、いきなりどうしたんですか!?新島さん!?」
新島「逃げるよ蓮斗くん!アレはやばい!」
起き上がった祇梨蓮斗の手を掴んで新島杏は走り出した。その表情には鬼気迫るモノがあった。
蓮斗「新島さん!アレってなんの事ですか!?」
新島「今一瞬だけ見えたんだけど、あれ、生物じゃなかった!しかも、私の千里眼を騙すほど強いモノだった!捕まったら終わるよ!」
そう言い新島杏は走り続ける。表情と気迫から嘘では無いのは分かるが、何故いきなりそんなモノが出てきたのか祇梨蓮斗には分からなかった。訳も分からず走っていると、祇梨蓮斗はある事に気がついてしまった。
蓮斗「新島さん、足音、なんか多くありません?」
新島「たし、かに...」
そう言葉を交わした瞬間必死に走る祇梨蓮斗達二人は、同時に凄まじい怖気に襲われた。だが、アレというのがどんな物か祇梨蓮斗は見ていない。焦りと状況確認の為走っている最中一瞬後ろを向いた。そこに、「ソレ」は居た。そこには形容し難い〝ナニか〟がいた。手足は人間の手足を幾つもつけたような形で四肢以外の全体像は見えないが、全体的に溶けているのか虫が湧いていた。
蓮斗「やばすぎじゃないですかぁ!!!」
祇梨蓮斗は瞬時に新島杏から腕を離し、抱き抱えるようにして新島杏を担いだ。それと同時に
蓮斗「風系統中位魔法・風ノ帳」
蓮斗「強化系統魔法・脚力増強!」
魔法を発動した瞬間祇梨蓮斗は全速力で駆け抜けた。祇梨蓮斗は一切後ろを見ずに全速力で走り続けた。するとこの一週間ずっと訓練していた山が見えてきた。
蓮斗「新島さん!一旦あの山に入ります!いいですね!?」
新島「うん、分かった!」
新島杏も抱き抱えられた事によってアレの姿を見たのだろう。その表情は怯え、体は小刻みに震えていた。
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10分程走り続けようやく山に着いた。後ろを見るとアレはまだ祇梨蓮斗達の事を追って来ていた。
蓮斗「新島さん、アレなんだと思います...?」
新島「分からない、あんな存在始めてみるから...あっ、もしかして...」
蓮斗「何か、何か心当たりがあるんですか?」
新島「心当たりと言うよりかは、勘に近いんだけど、あれってもしかしたら学園都市に昔から存在するって言われる怪物なんじゃ...」
蓮斗「怪物...昔から居るってどういう...?」
新島「分からない。ソレが発生した時期も原因も何もかも不明らしいんだけど、時折姿を現しては周辺住民を食って自分の体の一部にしていたらしいの。」
蓮斗「食...!?じゃああれって、この学園都市の生徒の成れ果てた姿って事ですか...?」
そういうと新島杏は首を横に振った。そこからは何も分からないらしく、対処法も不明。正しく怪物だ。だが、今はそれを嘆いてる暇は無い。
蓮斗「新島さん。今すぐ楽海さんと連絡してください。時間が掛かりそうでも続けてください。その間は私が作ります。」
新島「それってまさか...!」
新島杏は何か言おうとしたが、唇を噛み締めて電話を始めた。
蓮斗「ここからは私が相手になります。行きますよ!?」
祇梨蓮斗は戦闘態勢に移る。ここに来てやり続けた成果をアレにぶつける。
蓮斗「地脈接続・炎!」
この一週間で分かった事が有る。それは地脈には六大系統属性の魔力が流れているという事。ならば、その6種類全てではなく、1つの属性に絞れば接続した際効率がいいのではないかと。祇梨蓮斗の考えは当たりだった。
蓮斗「行きますよ!」
蓮斗「二重詠唱・焦炎縛糸!」
蓮斗「(やっぱりだ!アレは極端に火を嫌がってる。あの溶けた部分は火で燃やすと消えて体に湧いてる虫も死んでいってる!このまま押し切る!)」
蓮斗「火系統上位魔法・爆炎樹林!」
蓮斗「火系統中位魔法・炎身乱舞!」
祇梨蓮斗は火系統の魔法で猛攻を仕掛けつつ自身も高速で攻撃しながら動く事で相手を撹乱する事に成功した。しかし
〝ナニか〟「ーーーーーーーーーーーーー!!!」
怪物が雄叫びを上げた。瞬間、怪物を包んでいた炎の糸が引き千切られた。それと同時に体に湧いていた虫が急速成長。成虫になりこちらに向かってきた。
蓮斗「くっ、あれだけやったのにまだ全然元気だし、何より、早いっ!」
成虫「キェエェェェェェェェェェェ」
蓮斗「しまっ...!!!!!」
前方に集中していたせいで地中から背後に回った成虫に気付かず背後から攻撃を食らった。怪我こそしなかったが前方に吹っ飛ばされ体勢を崩した。
蓮斗「チッ!アレだけでも硬いのに周りの虫が鬱陶しい...!めんどくさい!!」
蓮斗「火系統上位魔法・炎界之暴獣!」
蓮斗「(地脈接続しているとは言え、この物量だと新島さんを守りきれない...!)」
新島杏の方へ目を向けるとまだ連絡が取れていなかった。そして、気が付いた。彼女の背後に虫の1匹が抜けていることに。
蓮斗「新島さん!そこから離れて!」
新島「えっ?キャア!」
その瞬間新島杏が虫に覆い被さられた。間一髪で防御魔法を展開できたらしいが、長くは持たない。
蓮斗「お前!!お前ら、邪魔だ!どけっ!!!」
祇梨蓮斗はそう声を荒らげたが退く筈がなかった。ピシピシと新島さんの張る防御結界からヒビの入る音が聞こえる。新島杏は恐怖と絶望でその場から動けずにいた。
蓮斗「どけっ、どけぇぇぇ!!」
蓮斗「(目の前で人が死ぬ!それだけはダメだ!守らないと!助けないと!邪魔する奴は殺せ、今すぐに!!!)」
徐々に自身の思考が黒いナニかに塗り潰されていく。その黒いナニかが弾けようとしたその時。
???「障壁破壊。」
声がしたと同時に新島杏に覆い被さっていた虫が勢いよく消し飛ばされた。その場に居た祇梨蓮斗と新島杏、ナニかは理解出来なかった。その場所には空間そのものに穴が空いてるという摩訶不思議な光景を目の当たりにした。するとその穴は徐々に崩れ、大きな穴へと変わった。その穴から1人の男性が中に入ってきた。
蓮斗「楽海さん!」
楽海「時間になっても組合に来ないと思って探してみれば、厄介な奴の異空間に囚われたものだ。」
パチンッ、という音が聞こえた瞬間祇梨蓮斗は何故か楽海界人の隣にいた。
楽海「あっちにいると君も巻き込んじゃうからこっちに来てて。あと、新島ちゃんが気を失ってるから介抱してあげて。」
蓮斗「は、はい!」
楽海「さてと。それにしてもお前、今まで随分と好き勝手してくれたなぁ...今日がお前の命日だ。」
そう言った瞬間場の空気が凍りついた。凍てつく様な殺気。楽海界人からは静かだが、とてつもなく強い怒りを感じた。
楽海「とりあえず周りの虫は死ね。」
楽海「虚無支配・根源滅却」
そう楽海界人が声を発した瞬間大量にいた虫が一瞬にして灰になった。
蓮斗「え、え...?」
しかし楽海界人の攻撃の手は止まらない。続けてナニかに攻撃を始める。
楽海「改帰魔法・状態反転...」
瞬間怪物は雄叫びを上げながらのたうち回る。全身の穴という穴から血を吹き出し、悶絶している。だが、楽海界人は攻撃を辞めない。
楽海「能力操作・再生不可」
蓮斗「(今、相手の能力を操作しなかったか...?)」
何かを呟いた後楽海界人はシンプルな打撃を繰り出した。しかし、先程まであった怪物の超速再生が発動していない。
楽海「お前見てると不快だな...もう、死ね。」
楽海「物語の果て、繰り返す運命 、守れぬ命、発狂せし者、無力に落ち、空を仰ぎ、終わりへ歩け」
「次元侵食・終ノ空」
そういったと同時に怪物はどこかに姿を消した。まるでそこには最初から何も無かった様にその場を静けさが包んだ。
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気がつくと祇梨蓮斗は統括組合のソファーで寝ていた。体を起こし周りを見るといつも通り多くの人が作業をしている。さっきのあれは夢だったのだろうか?などと考えていると楽海界人がコーヒーの入ったカップを持ちながら声を掛けてきた。
楽海「おはよう。気分はどう?」
蓮斗「はい、特に異常はありません。元気です。」
楽海「君のお陰で間に合った。感謝する。」
蓮斗「...?何がですか?」
楽海「さっきの事だよ。君が黒王戦鬼に呑まれかけた時、君の魔力がでかくなってね。そのおかげで場所を特定できた。」
祇梨蓮斗は楽海界人の言葉に耳を疑った。あれは夢ではなく現実だったのだから。口を手で覆い俯いているとふとの脳裏に新島杏の顔が浮かんだ。
蓮斗「新島さんは...!?無事なんですか!?」
楽海「うん。君が守ってたのと、防御結界がしっかり機能していたからね。少し怪我してたみたいだけどもう完治してるよ。」
蓮斗「良かったー...それが聞けて安心しました.....ところで、アレは一体なんだったんですか?ただの...真っ当な生物には見えませんでしたけど...」
楽海「あれはね、殺神の悪食っていう怪物だよ。神って着いてるけど実際には神じゃない。神出鬼没で人を攫って食う。そういう怪物だよ、アレは。」
そういい楽海界人は溜息を着いた。だが祇梨蓮斗には他に気になることがあった。
蓮斗「さっき楽海さんが使ってた魔法ってなんですか...?全く見た事ない性能でしたけど...」
楽海「あーっと、それは秘密なんだ。だから教えられない。ごめんね。」
蓮斗「あ、いえいえ。踏み入った質問をしてしまい申し訳ありません。」
楽海「そこまで謝ることじゃないよ。さてと、本題に入ろうか。」
蓮斗「本題?」
楽海「あぁ。君のここ1週間の生活を見せて貰って、もう教えられることもないと判断し、次の場所に行くことを許可する。」
蓮斗「はい!ありがとうございます!」
楽海「出発は1時間後らしいから準備しておくように。」
こうして最終日にとんでもないハプニングがあったものの、無事1つ目の目標、学園都市エーゼルファリアでの修行生活を終えたのだった。




