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過去と可能性

蓮斗「ん、ん.....?」

目が覚めるとそこは知らない天井が目に映る。目だけを動かし隣を見れば祇梨蓮斗の腕に点滴が打たれ、謎の機械から出る多くの管で繋がれている状態だった。周りを見回すとそこは一面がガラス張りの部屋だった。

蓮斗「ここは一体....私は一体...」

そんな事を考えているとこの部屋に1つしかない扉が開き一人の男が入ってきた。

荒山「祇梨よ、気分はどうじゃ?」

蓮斗「荒山総司令官...気分は普通ですが、ここは一体どこなんですか?なんで私箱の部屋に...?」

祇梨蓮斗が不思議そうな顔でそう聞くと荒山厳十郎はベットの隣にあった椅子に腰かけ話始めた。

荒山「簡潔に言えば、お主が暴走し、国防軍本部で暴れまわったのじゃよ。」

荒山厳十郎の口から出た言葉に祇梨蓮斗は耳を疑った。

蓮斗「私が暴走して、本部で、暴れまわった!?」

唐突に突きつけられた事実に祇梨蓮斗の脳は理解を拒み、一時的な混乱状態に陥る。

蓮斗「ど、どういう事ですか!?私が暴れまわったって、一体どういうことですか!?」

祇梨蓮斗は冷静さを欠いてしまった。自分が何故、どう言う目的で?そんな思考が入り乱れ目の前が歪んで見えた。その様子を見て荒山厳十郎が重い口を開いた。

荒山「お主には伝えるかどうか本部内で話し合ったが、やはりきちんと伝えねばという意見が多かった。故にこうして今話している。」

蓮斗「.......!!!」

荒山「お主がなぜ暴走したのか、それは...」

蓮斗「それは...?」

荒山「それは、お主の中にある闇魔法の防衛本能が暴走し、魔力の強い者を殺すという行動原理で動いたからじゃ。」

蓮斗「闇、魔法...?」

祇梨蓮斗は荒山厳十郎の言い放った言葉の意味が分からなかった。「何故、なぜ自分に闇魔法が...?」と思った瞬間、脳裏に一つの光景がよぎった。

蓮斗「黒王、戦鬼...?」

荒山「...!お主、知っておったのか?」

祇梨蓮斗がそう呟くと荒山厳十郎が驚いた表情で聞き返す。

蓮斗「あ、いえ、以前魔法についての授業で闇魔法についての話が出た時、私気を失ったんです。そして目が覚めたら知らない場所にいて、音がする方に行ったら黒い鬼がいたんです。」

荒山厳十郎は祇梨蓮斗が話す奇天烈で、摩訶不思議な話を神妙な面持ちで聞き入っていた。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

荒山「なるほど、そんな事が。だが、あながち間違いでもないかもしれんぞ。」

蓮斗「と、言うと?」

荒山「黒王戦鬼とは500年前に突如として出現し、一国を壊滅寸前まで追いやった本物の怪物だ。しかし、あまりにもその力は強大でその時代の最強が手も足も出ず敗北し、殺された。」

蓮斗「だったら、何故黒王戦鬼は倒されたのですか?話を聞いていると、その国は滅んでないんですよね?」

荒山「ああそうじゃ。どのようにして倒されたのか、それは簡単な話じゃ。冠位が介入したんじゃよ。」

蓮斗「冠位が...?」

荒山「ああ。その時介入したのが破滅龍だったんじゃよ。破滅龍の介入を受けて黒王戦鬼は敗北、その魂は天界へと送られた。」

蓮斗「天界に?聞いた感じですが、黒王戦鬼は少なくとも数百万人は殺してるはずですが、何故冥界じゃなく、天界へ送られたんですか?」

荒山「ここからは「覇王」から聞いた話じゃが、黒王戦鬼は破滅龍が情状酌量の余地アリと判断されたらしい。」

蓮斗「何故、そう判断したんでしょうか…?」

荒山「答えは簡単、その国の人間がほとんど腐っておったからじゃ。」

蓮斗「腐っていた...?」

荒山「ああそうじゃ。黒王戦鬼の大元となった青年はとても優しい存在だったらしい。じゃが、闇魔法という見た事もない前代未聞の属性を持って生まれてしまった。それが故親からも国の人間からも虐げられ続けた。じゃが、そんな青年にも自身を理解し、一緒に暮らす妻ができた。その二人の間には子が1人でき、暗い森の中であったが、順風満帆の生活をしていた。」

蓮斗「......」

荒山「しかし、そんな生活はある日突然終わった。国にとある病が蔓延した。その病は発症者の体に黒い斑点が出て、最後には死ぬものだった。国王と国民はその青年の仕業と思い込み激昂。3人の住む森に騎士を派遣し火を放った。その時、その青年は森から少し離れた川に行っており襲撃は免れた。だが、騎士に見つかった妻と子は魔女とその娘としてその場で手足を落とされた挙句心臓を剣で貫かれ殺された。」

蓮斗「っ......」

唖然として言葉が出ない。何故そこまで惨いことが出来るのか、真っ当な倫理観を持つ祇梨蓮斗には理解できなかった。だが、荒山厳十郎は話を続けた。

荒山「川から戻る途中、森から大量の煙が出ていることに気づいた青年は急いで家に戻った。だがそこには惨たらしく殺された妻と我が子が柱に括り付けられ死体を晒されているのが目に入った。その時その青年は発狂した。すぐに妻子を柱から下ろし声をかけたが返事が返ってくる事はなかった。青年は妻子の死体を抱えながら泣き続けた。だが、青年は後ろから迫っていた騎士によって心臓を貫かれた。国が派遣した騎士達がまだ残っており青年が帰って来るのを隠れて待っておったのじゃ。青年は騎士に聞いた。何故妻子をこんな風に殺したのか、俺たちが何かしたのか、と虚ろな目で聞き続けた。すると騎士たちは」

騎士「「殺害目標がお前だけだったがそこに居たから見せしめで殺したんだよ!」」

荒山「そう言うと騎士たちは妻子の死体を踏み付けにしながら大声で笑った。それが決め手だったのであろう。青年はその場で呪詛を吐いた。永遠と吐かれ続ける呪詛に騎士達は恐怖し、トドメを刺そうとした。だが剣を振り上げた手が降りる事はなかった。その瞬間その場に居た騎士数十名が一瞬で肉塊へ変えられた。人々への尽きぬ怒りと憎しみ、憎悪が青年を鬼へと変えた。」

荒山「これが、「覇王」から聞いた黒王戦鬼が生まれた経緯だ。」

話し終えた荒山厳十郎は暗い顔をしていた。聞いていただけの祇梨蓮斗がここまで唖然とするのだ、喋っている本人はそれ以上だろう。だが話を聞いて気になる点がある。それは

蓮斗「黒王戦鬼の魂は天界へ送られたのになぜ私の中にそれがあるんですか...?」

そう、黒王戦鬼の魂が天界へ行ったのならば今も黒王戦鬼や闇魔法が祇梨蓮斗に憑く事自体が不可解なのだ。

荒山「それは簡単じゃ。闇魔法に憑いているのは黒王戦鬼ではなくその怨念。破滅龍曰く怨念が強すぎて魂と怨念の2つに分けたらしくその怨念は分けられた瞬間闇魔法に移ったと聞く。」

蓮斗「形のない、概念に憑くっておかしな話ですね...」

荒山「じゃがそんな特異な現象を起こしてしまうほどその青年の怨念が強かったって話じゃ。」

蓮斗「それで総司令官。私は今からどうすれば...?正直どうすればいいか分からなく、」

荒山「そうじゃ、それじゃ。ここからが本題なんじゃが、お主には今日からとある場所に行ってもらいたい。そこに行けば恐らく黒王戦鬼の怨念を制御し、その力を扱えるはずじゃ。」

蓮斗「そうなんですか...!?是非、教えてください!」

荒山「いいじゃろう。だが1つ条件がある。その場所とは計3箇所あるが、そこのとある人物は絶対に怒らせるな。分かったな?」

蓮斗「え、はい。分かりました。」

荒山「お主の両親にも話は通してある。明日から1箇所につき1週間。計3週間の遠出になる。平気か?」

蓮斗「はいっ!」

こうしてこれからの予定が唐突に決まった祇梨蓮斗は3週間学校を休学する事になった。突然突き付けられた自身の力とそれを制御するための遠征?が始まった。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

荒山「新島。祇梨蓮斗を調べて何か変わった所はあったか?」

新島「はい、以前ここに来た時より保有する魔力の総量がここ二日で約10倍になっております。そして、ほんの僅かではありますが、周囲の悪意を呼び寄せていると調べが着きました。」

荒山「それはつまり?」

新島「恐らくではありますが、黒王戦鬼の力を使った反動ではないかと思われます。」

荒山「反動、か...新島、祇梨蓮斗の動向を調べる隠密をもう3人ほど増やせ。大至急だ。」

新島「了。」

荒山「ふぅ、年端もいかん少年に、明らかな厄介の種...これからどうなるか.....」

あの少年のこれからを思うと、どうしても、悲惨な未来が待ち受けるのではないかと誰もいない部屋でたった1人、荒山厳十郎は暗い表情で思うのであった。

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