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今世は聖女になります~魔力ゼロの無能と言われた私、魔術至上主義を物理で壊して自由に生きます~  作者: 流あきら
第二章 高等学院二年生編

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078 神竜

 破壊された砲台の場所から降り立った先は広間だった。

 正面に幾人かの姿が見える。

 周囲にもローブを着てフードを被った、魔術師だか神官だかが集まっていた。

 私は素早くカールの位置を確認する。


 部屋の隅に金髪の少年の姿が見える。

 だがその前にいるのは、仮面の男だった。

 周囲を暗黒教団の戦士や魔術師達がとり囲んでいる。

 どうやら仲間割れらしい。


「なんだお前は?一体何をした?なぜ魔導砲や巨人たちが……お前たちなにぼっとしておる。こいつを叩きのめせ!」


暗黒司祭(ダークプリースト)らしき、フードを被った男は叫んだ。


 幾人かの戦士や魔術師が私に立ち向かってきたが、槍斧(ハルバード)の一振りで全員吹き飛ぶ。

 魔法や剣なら私は恐れない。

 と思った私は嫌な事を思い出す。

 もし相手があのレーザー銃のような古代遺物(アーティファクト)を使って来たらどうするか。


 今更ながら、自分の無鉄砲さと無計画さを後悔するしかない。

 だが要塞に乗り込んでカールを助けない、という選択肢は私にとれるはずもない。


 私は一気にカールの所へと向かう。

 仮面の男は、カールを守るように戦っていた。 

 私もカールの前に立ち、振り返る。

 だが案の定というべきか、敵の一人が、バズーカ砲のようなものを持ち出していた。

 

(やば……ひょっとして古代遺物(アーティファクト)?)


 その時私の頭の中にあの声が響く。


神力無効(アンチザディバイン)発動中。銀の体(シルバーボディ)は第一文明期のβランクまでの武器を無効化します』


「セシル先生!」


 カールに当たる可能性がある以上、今更よけるわけにはいかない。

 私は頭の中の声を信じ、カールの前に仁王立ちになる。

 複数の銃口から発射されたビームは私の体にあたると、跳ね返って壁を焼いた。

 続いて暗黒の炎の魔法攻撃が襲い掛かってきたが、当然神力無効(アンチザディバイン)で無効化される。


 デギル教徒たちの目は信じられぬようなものを見たように、見開かれる。

 もちろん私は、そのまま大人しく突っ立ってはいなかった。

 槍斧(ハルバード)で数人まとめ吹っ飛ばし、腰の剣を鞘ごと抜いて殴りつける。


 外部の魔物や要塞自体の攻撃を止めたリュウジの聖なる咆哮(ディバインボイス)は、要塞の中には効果を発揮していないらしい。

 時間や空間の制限があるのかもしれない。

 その時、外の砲台を全て破壊したのか、リュウジが室内に躍り込んでくる。


「リュウジ、気をつけろ!」


 私の心配は無用だった。

 リュウジの身体が光ると、魔法攻撃はリュウジの鱗一枚すら傷つけることはできなかった。

 古代遺物(アーティファクト)での攻撃すら同じだった。 


「キュルルルルルルル」


 炎や氷の塊を浴びながらリュウジはむしろ嬉しそうに鳴く。

 魔法もビーム攻撃すら吸収していた。


「ば、化物だ!」


 とうとうデギル教徒たちは、ボスらしき暗黒司祭(ダークプリースト)含めて逃げ出した。


「よくやったぞ、リュウジ。帰ったらリンゴをたらふく食わせてやるからな」

「クー、クー、グルルルル」


 私が撫でてやると、リュウジは喉を鳴らした。


「カール、大丈夫?」

「ありがとうございます、セシル先生」

「早く追った方がいい。あいつはあそこの祭壇の隠し扉から逃げた。その先にこの要塞の(コア)がある。それを壊せば、この要塞も外の巨人も崩壊するはずだ」


 私は仮面の男を見る。


「あんたはデギル教徒でしょ?何が狙い?」

「デギル教徒同士だからといって、仲が良いとは限らんさ。あの暗黒司祭(ダークプリースト)はやりすぎた」


 私は一瞬考え込む。


「この男は僕を助けてくれたんだ、セシル先生」


 カールが私に言う。


「リュウジ、カールを頼む」

「クー」


 リュウジはひとつうなづいた。

 仮面の男が信頼できるとは限らないが、迷っている暇はない。

 この要塞を無力化する機会を逃すわけにはいかなかった。

 カールは、リュウジがいれば大丈夫だろう。


「この先にある(コア)を破壊すればいいんだな?」

「ああ。君の力ならたやすいはずだ」

「わかった」


 祭壇の奥の壁には、地下へと続く通路が空いていた。

 私は一気に駆け降りる。

 しばらく走り抜けた後、目の前に現れた扉に体当たりする。

 異音をたてて扉は吹き飛んだ。


 私の視線は広間の正面に吸い寄せられる。

 それは巨大な肖像画だった。


 黒髪に短髪、釣りあがった目に、口元に牙がのぞいている。

 どことなく見覚えのあるその顔は――


(え?私?)


 一瞬自分かと見間違えるほど私に似ている。

 あれは一体なんだろう?

 祭壇に掲げられているということは、あれはまさか魔神ザイターン……

 それがなぜ私に?

 

「お前は何者だ!なぜ一部のものしか知らぬ、ザイターン様のお姿をしている?なぜわれらの邪魔をする?」


 暗黒司祭(ダークプリースト)は叫ぶ。


「お前たちの陰謀は全て潰えた。大人しく降伏しろ」


 だが暗黒司祭(ダークプリースト)は私の言葉を聞いていなかった。


「ザイターン様。あなたの忠実なる信徒に、今一度お力をお与えください」


 その言葉に暗黒の(コア)は暗い血の色に光る。

 そして見る間にその周囲にいた人間を吸い寄せ始めた。


「な、なぜ……なぜ……ぎゃぁあああああ」


 デギル教徒たちの断末魔の悲鳴が響く。

 私は一瞬何がおこったかわからず、硬直してしまう。

 おそるおそる(コア)に近づいてみる。

 吸い込まれた男たちの姿はもう見えない。

  


「仮面の男が言っていたのはこれか」


 こんな不吉なものは、さっさと壊してしまうべきだろう。

 私は(コア)目掛けて拳を叩きつける。

 鈍い音とともに、(コア)にひびが入り、それはやがて部屋中に広がっていった。

 私は急いで元の広間に戻る。


(コア)は破壊した。これでいいんだな?」

「ああ、もうすぐこの城も崩れ去るだろう」

「じゃ、ぐずぐずしてる暇はないな、脱出するよカール」

「待ってくださいセシル先生。彼らを連れて行ってやってください」


 カールはガストンとディアーヌの遺体を指し示す。

 執事たちの遺体をリュウジに担いでもらい、私とカールもリュウジにまたがる。


「あんたは?」

「俺は平気さ。また会おう」

「今回ばかりは礼を言うよ。ではな」

「ああ、ひとつ教えよう。高等学院へちょっかいかけていた集団は壊滅した。あの跳ね返りどもにはこちらも困っていたのさ。君たちへ手を出すデギル教の派閥はもういない。……当面の間は、だけどね」


 私はその男をじっと見る。


「わかった」


 今後の事を考えれば、この男を野放しにするのは良くないのかもしれない。

 だがこの男は確かにカールを助けてくれたのだ。

 捕らえたり殺したりすることは、私にはできなかった。


 仮面の男は広間の外に出ると、何やら念じている。

 しばらくすると、黒い大鳥がやってきて男を乗せて去っていった。

 その時地鳴りのような響きが強くなる。


「さぁ、行くよ、リュウジ!」


 リュウジは広間の中央の空間から高く飛び上がる。

 しばらくして眼下をながめると、周囲の巨人たちとともに、鋼鉄の城は跡形もなく崩れ出した。

読んでいただき、ありがとうございます。

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