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今世は聖女になります~魔力ゼロの無能と言われた私、魔術至上主義を物理で壊して自由に生きます~  作者: 流あきら
第二章 高等学院二年生編

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041 進路相談

「太陽の神サウルより与えられしこの光。病を退け、邪気を払い、悪神を屈服させん。聖なる光よ舞い降りよ。聖雨(ホーリーレイン)!」


 当然聖なる光は出現せず、精霊も降臨することもなく、私の声は夜のしじまに吸い込まれただけだった。

 私はため息をつくと山道を降り、寮への帰路につく。


 私は相変わらず魔法は使えない。

 だが授業で他の生徒たちが魔法を使っている姿にあこがれがある。

 やっぱりかっこいいのだ。


 この世界では、特殊な場合を除いて魔法に詠唱というものは必要としない。

 だが魔法の名前や、魔法を使った技の名前を叫ぶことはある。

 魔力の流れや使い方を身体にしみこませ、それを一瞬で意識の底から引っ張り出す意味合いがあるらしい。

 武術で言う気合のようなものだろうか。

 

 私は定期的に寮を抜け出して自主練習を行っていた。

 たまには昼にもでかける事がある。

 武器の素振り、教えられたサバイバル技術の復習、岩を砕いたり、大木と格闘したり。

 鋼鉄の身体(スチールボディ)が発動してから、さらにパワーが増した気がする。

 

 もちろん学校の剣術授業は真面目に受けているし、マルスとの模擬戦も続けている。

 だが学校では何かと目立ってしまう。

 物を持ち上げたり走ったりという私の何気ない動作でも、みんなはぎょっとしてしまうらしい。

 それに弓の練習はともかく、石投げの練習は学校ではできない。


 自分でも何でこんな自主訓練を、こんなに真面目にやっているのかわからない。

 やはり去年のあの学校での事件が頭から離れないせいだろうか。

 

(子供たちに勉強を教えたり、お菓子や薬を作ったりして、穏やかに暮らせると思ってたんだけどな)


 この世界で平穏無事に暮らす事自体が、かなり大変なのかもしれない。

 

 私は二年生になっていた。

 今年で様々な学科への振り分けが行われる。

 二年生の前期、すなわち七月終わりの試験までで、進級する学科が決まる。

 大事な年である。


 帝国高等学院には十個の学科がある。

 一学年五百人で、聖女科の定員は十人だ。

 当然女性しか志望できないが、倍率は高い。

 一応は七月の前期試験までの成績で決まるのだが、その前に見込みの無いものは他の学科への進学をすすめられる。


 翌朝、寮を出て登校しようとしたところをバート先生に声をかけられた。


「セシルさん、放課後寮長(ハウスマスター)室へ来てください」


 嫌な予感がする。

 エマがちらりと私を見るが、何も言わなかった。


 その日は気が気ではなかった。

 授業が終わると、全速力で寮へと戻る。

 嫌な事なら、なるべく早く終わらせたい。


「どうぞ」


 私がノックをすると、中から声が聞こえた。


「失礼します」


 私は目の前の椅子にどさりと座った。

 だがあわてて立ち上がると、バート先生に一礼する。


「どうぞ、座って。セシル君」


 バート先生の言葉で、あらためて私は椅子に腰かけた。

 先生はちらりと私の胸元に目をやる。

 

 私は最優秀生徒として貰った、金のメダルも黒いガウンも水色のベストも身に着けていない。

 最初はせっかくだからと、それらをつけて学校で過ごしていた。


 だが何かとじろじろ見られ、陰でこそこそ言われているのも目にして、何となく気づまりでやめてしまった。

 監督生(プリフェクト)でない者が黒のガウンや水色のベストを着ているのは珍しいからだろうが、皆の視線には嫉妬や反感の色があるように感じる。

 エマやマルスは気にする事はないと言ってくれたが、私の小市民的感覚ではやはり耐えがたい。

 

「あの……本日は……その……どのような」


 しばらく無言の時間が続き、私はしどろもどろに切り出した。


「まぁまぁ落ち着きたまえ。そんなに悪い話じゃない」


 バート先生は、私の進路についてと前置きする。

 二年生になる前に、全員希望学科を報告する。

 それによって、学校側からアドバイスがあるのだ。


「もしかして……希望学科の事でしょうか?」

「まぁそうですね」


 バート先生は話し始めた。

 バート先生なりに、少々言い出しにくかったのかもしれない。


 私の成績は、ほぼ問題ない。

 だが単位が足りないとのことだった。

 

「なぜでしょう?ちゃんと授業も受けてますし、試験だって」

「それが魔法に関することなのです」


 早い話が、教員会でもめているという。

 私が魔法を使えないということで、聖女科に進学するのを渋っている教官もいるらしい。


「でも、聖女科へ進むだけの単位と、試験成績があれば良かったはずです」

「セシル君の言う通りです。ですが長年の慣習というのは、なかなか改まらないものでね」


 そもそも、魔法が使えないのにこの学校に入学する事自体が珍しく、さらに聖女科へ進級するなど前代未聞とのことだった。

 

 それはそうかもしれない。

 感情的に納得できるかは別として、理解はできる。

 帝国高等学院と言ってはいるが、帝国政府からかなり自治を認められた、独立した機関であるらしい。


「それで、私はどうしたら?まさか、進級不可という事ですか?」

「まぁセシル君は成績も問題ないですし、学校にも多大な貢献をしたので、特別ということで」


 要は魔法実習等の授業を、追加で履修しろという話だ。


「あの……奉仕活動は……?」

「あれは、一、二年生を通じて一回しか単位として有効ではありません」

「その……どうしたら」

「なんでもいいのですが、あと二講座とってもらいたいのです」


 なんでもいいと言いつつも、魔法に関する講座も受けてくれとのことだった。

 実技に関してはできなくても仕方ないので、レポートを提出すればいいという。


 とはいえ、朝から夕方まで授業は詰まっている。

 なかなか厳しい条件だった。


「わかりました」

 

 とりあえず、そう言うほかはない。

 部屋に戻って一人考え込む。


(なんだかなぁ)


 聖女になるのがこんなに大変だとは思わなかった。


(もしだめだったら、どうしよう)


 といって他にやりたいこともない。

 今更あきらめるのも、なんだか癪である。


 ということで、翌日の放課後、私は図書室にいた。

 あまり褒められた理由ではない。

 ロマンス小説……はないので、替わりになるような恋愛物語を探しに来たのである。


 要は、試験前にマンガを読んだりゲームをしたりするのが楽しいというあれだ。

 つまり今の状況からの現実逃避である。

 もっとも前世の私はマンガもゲームも買ってもらったことはない

 無料のマンガやweb小説を読むくらいである。


 私は様々な小説や物語の本がある書架を見上げる。


(そんなにないんだよね)


 元の世界のように、毎年どころか毎日様々な小説、マンガ、アニメ等が生産され供給されるような世界とは違う。

 ここ一年は、それなりに忙しく、ゆっくりロマンス小説を探す暇もなかった。

 だが以前来たときは、めぼしい小説らしきものは、図書館にみあたらなかったはずだ。


(『ゲオルグとエリザベート』……か)


 私はその本に手を伸ばす。

 気配に気づいて一瞬動作をとめたが、同じ本をとろうとしていた小さな手とぶつかる。


「あ、ごめん」

「い、いえ。ごめんなさいっす」


 それは金髪にとがった耳、小柄な長耳族(エルフ)の少女だった。


「あ、あの……もしかして……セシル先輩っすか?」


 その少女は言った。

読んでいただき、ありがとうございます。

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