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命をかけて願うことは  作者: 小狼
ウィユの物語
8/8

人徳は時に島を滅ぼす②

新主人公 ウィユ  身長 160センチ

          服装 紺色のゴスロリ衣装を着た少女

          髪  黒髪でショートボブ

          年齢 16歳で成長が止まっているため不明

          容姿 東洋系の可愛い子供

キーアイテム 龍の瞳   対象の命を対価に願いを叶える。ただし対人への物理的行為はできない。

             アイから引き継いだもの 

アイの別名「リュミエール」の様な名前はなくそのままウィユと名乗る

「あああああああああ」

ウィユの顔が風圧でゆがんでいる。

思いのほか馬は乗り心地が良かった、だがイメージの三倍早かった。

ウィユは腹いせに乗り場でトナーの悪口を言い、馬についても難癖つけた。

その結果乗り場で渡された馬は島一番の暴れ馬だった。

どうやらトナーは島でもかなりの人気があるようだった。

夜中になりウィユはホテルのベッドに倒れ込んだ。

早速一つ目の島に行ったが、確かに発展という意味ではここと比べると劣っていた。

だが決して廃れているわけではなく単純に文化の違いのように見えた。

「明日は違う島の代表と会ってみよう」

道中の馬の乗り心地がよかったためくたくたになったウィユは夕食も食べずに眠りに落ちた。

次の日以降、ウィユは各島々の代表と会い、島中を見に行った。

あの馬に乗って。。。

各島々はそれぞれ違うルールや風潮があり、食生活も若干異なっていた。

レンガの家が多かったり、藁の家が多かったり、木造の家が多かったりなど、形も丸家だったり四角形だったりとある。食も海鮮が強い、肉が強い、サラダが強いなどその島々独自の味が面白かった。

その島々の現代表者と話しをしたが、共通していたのが、全員がトナーに対して信仰心といって差し支えないほどの尊敬の念を抱いていた。

どうやら彼は代表になる前は各島々の伝達役を担っていたらしく、顔は広く彼自身聖人君子の様な性格だったらしく人助けから相談役までこなしていたらしい。

そして容姿も今はただのハゲた爺だが若い頃はかなり整っていた様で、男女老若男女問わず人気があったようだ。

どうやら各島々が辞退した理由は彼のカリスマがあまりに高かった事にあるようだ。

7日が過ぎ、明日はいよいよ選挙になるのだが、最後に残った島の代表と話すことにした。

夕ご飯を食べるに早いが、夕方と言うには遅い時間、ウィユは扉を叩いた。

「こんばんはウィユさん。」

「こんばんはトナーさん。最後にあなたとのお話をしたかったので伺いました。」

テーブルには前回と違いクッキーではなく肉の燻製が置かれていた。

飲み物は微量のアルコールが入っている甘いお酒のようだ。

「生まれた島で昔からある簡単なおつまみです。こうして酒を飲む時はこれがお気に入りなのです。飲み物は明日に響かない様にアルコールは少なめの果実酒です」

口にするとほんのり甘く、口当たりが非常に良かった。燻製は少し塩気があるのでちょうど良い。

「それで、島々を回って下さったようですがいかがでしたか」軽く燻製をかじりトナーは口を開いた。

「どこも良い島だと思いました。共通して言えるのはみんなあなたに信仰心と言っていいくらいの好感をもっていました」ウィユは衣を着せず素直に話した。紛れもない事実であり決して恥ずべき事ではないからだ。

「本当にうれしいことです。ただ、それは交流が他の方々より多かっただけですよ。」トナーは優しく微笑んだ。ただその表情はどことなく寂しいものであった。

そこから他愛のない会話をした。

代表であるトナーがいる島のこと、各島々の良いところや各島の代表との面白いやり取りなど笑いながら話せる内容だった。

「それでは明日よろしくお願いします。」トナーと握手をして建物を出た。そしてホテルに入りシャワーを浴び、ベッドに座った。

トナーは間違いなくこの島々にいなくてはいけない存在である。

先ほどの会話でもやはり聖人君子と言って差し支えない人柄だった。

そしてわかったことがある。

ただそこからは自分は医者や探偵ではない。依頼主の命を代償に依頼をこなすのが仕事だからだ。

「明日おそらく島はなくなるのだろうなぁ。素敵な島々だったけど。。」

ベッドからおりて身支度をするウィユであった。

翌朝、トナーの元には、7つの島の代表者たちが集まっていた。

各島々ではだれを代表にするかの話しで持ちきりになっていた。

トナーは杖をつき、 「本日私は引退し、次の時代を担う新たな長を決めます。その前に、私のこれまでの仕事を皆に見てほしい」

トナーがウィユに目配せをする。ウィユは懐から、あのアイから受け取った『竜の瞳』を取り出した。

「では、始めます」 ウィユが玉を掲げると、足元からまばゆい光が溢れ出した。

次の瞬間、トナーの身体が光の粒子へと変わり、吸い込まれるように『竜の瞳』へと溶けていった。

「トナーさん」代表等は目の前で突然トナーが消えた事に動揺し慌てふためいた。

同時に脳内に、トナーのこれまでの「仕事内容」が流れ始めた。

――それは、あまりにも純粋で、美しすぎる記憶だった。 トナーがいかに無私無欲で島々のために尽くしてきたか。そして、それを受け取る代表者たちが、トナーに対して抱いている「狂気的なまでの崇拝と、彼を失うことへの絶望」の感情が浮き彫りになった。

そしてその感情は各島の群衆に一切のフィルターなしで全住民の心に直接突き刺さったのだ。

トナーの仕事があまりにも完璧で、あまりにも聖人君子すぎたがゆえに、代表者たちの心は一瞬でへし折れた。

「私などに、トナー様の跡を継ぐ資格などない……!」 ひとつの島の代表が涙を流して崩れ落ち、辞退を宣言した。

それに引きずられるように、次々と他の代表者たちも「辞退します」「私では無理だ」と、恐怖にも似た謙遜のなかに平伏していく。

トナーが望んだのは、「本当に信頼できる人間」を選ぶことだった。

しかし、彼の人徳があまりにも高すぎたせいで、遺された人々には「崇拝という名の呪い」だけが残ってしまった。

そして、悲劇はここから始まった。 全島民の心に流れ込んだのは、代表者たちの「トナー様を失った絶望」と「跡を継ぐ恐怖」、そして「偉大な指導者の死」というあまりにも巨大なマイナスの感情だった。

ゴゴゴゴゴ……!

島々の中心にある、あの巨大な渦潮が、見たこともない速度で回転を始めた。 島民たちの感情の乱高下に呼応して、渦はまたたく間に巨大化し、狂ったように荒れ狂う。 「お、おい! 防波堤が耐えきれないぞ!」 「渦が、渦が島を飲み込んでいく!」

トナーの死による悲しみとパニックは、全8つの島で同時に爆発していた。一斉に高まった負の感情のエネルギーは、バケツの水をひっくり返すどころではない、天をも突く大津波となって円を描く島々へと襲いかかった。 伝統を重んじる藁の家も、レンガの家も、木造の家も、等しく激しい渦潮の藻屑となって沈んでいく。

ウィユはただ一人、あらかじめトナーから手配されていた島一番のあの暴れ馬の背に飛び乗り、激しい風圧に顔を歪ませながら、崩壊する橋を駆け抜けていった。

たった8日の付き合いだったが暴れ馬は全てを振り切る勢いでウィユを助けるために走った。

背後では、紫色の夕闇に紛れるようにして、8つの島々が美しい渦の中心へと静かに沈没していくところだった。 人徳が、時に島を滅ぼす。あまりに完璧すぎる聖人君子は、その存在自体が、遺された人々を狂わせる猛毒になり得るのだ。

翌日、ウィユは助かった暴れ馬の手綱を引きながら、穏やかさを取り戻した海を見つめていた。 「あの燻製とお酒、もう一度食べたかったなぁ……。さて、次の島へ行こうかしら」

今では相棒のような暴れ馬の鐙に跨がり移動しようとしたが

「ビーーーーー」馬が叫び、いきなり立ち上がり上がった。

「あああああああああ」ウィユは地面にたたき落とされ、腰に激痛が走った。

そしてそのまま暴れ馬は一瞬ウィユを見つめた後、逃げる時よりも早く走り去って行った。

「あの暴れ馬。。。今度会ったら絶対肉にして食べてやる」

ウィユは立ち上がりまるで老婆のようにトボトボと歩き出した。

涼やかな風が吹いている。

ウィユとトナーが他愛のない会話で盛り上がっている。

その中で一瞬会話が途切れた時、トナーは小さい声を発した。

「皆が慕ってくれるのはうれしい」

「皆に頼られるのも悪くない」

「だが皆が私を助けることはない」トナーは燻製をかじる

「私には自由がない、あの頃、ただ、気まぐれに各島で交流を深めたばかりに・・・」トナーは燻製をかじる

「担がれたまま今に至ってしまった。」トナーは燻製をかじる

「担がれたままの自分が嫌だ。担いだ皆が嫌だ。」トナーは燻製をかじる

いつもミラーボールのように周囲を明るく照らしていた彼の頭が、部屋の暗がりのなかで、今はじっと鈍く淀んだ光を放っているように見えた。

ウィユは果実酒を少し口に含む。

そうか……トナーは、自分が死ねばどうなるか分かっている。自分のカリスマがあまりに高すぎて、誰も跡を継げないことを。だから『辞退の意味』を聞いた時話しを中断したのか。

そして与えてばかりの者に見返りがないとこうなるのか。

彼は表向きは聖人君子だが、中身は普通の人間であった。


ウィユはアイと違い影が少なく前向きな性格です。

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