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怪獣ゴモラー討伐3

 さて、テンションが上がってまいりました!

 何がテンション上がるかって、まさか俺の愛車がロボットになるとは思うまい。

 いや、鋼の巨人になってる時点で、ロボじゃないかなーとは思考の隅っこで考えてはいたのだ。

 だが、この未開の世界への転生と、ロボット。

 どう考えてもかみ合わないではないか。

 俺は胸の内に生まれた疑念を、五歳児の小さな胸に押し込めてやってきたのだ。

 しかしもうその気持ちを抑える必要は無い。

 明らかに、明確に、間違いなく、これは、この俺が乗り込んでいる愛車はロボットなのだ!


「うおおおお!!」


 超盛り上がってしまい、拳を振り上げて咆哮した。

 すると、ファミリオン改め、グレートサンダルフォンも拳を振り上げてガッツポーズを決める。


「ひいー」


「うわー」


 下のほうでマンサとバニおじさんが悲鳴をあげた。

 驚かせてしまったようだ。すまんすまん。

 対する目の前の敵、動く臭い土の山、怪獣ゴモラーは無表情そのものだ。

 そもそも、土から飛び出した目玉や乱杭歯が表情を見せられるとは思えないんだが。

 だがしかし、ゴモラーは一つだけ、明確な感情を浮かべて俺に近づいてきた。

 そいつは敵意だ。

 飛び出たでかい目玉が血走り、俺を見つめている。

 こっちにくる速度も今までとは比べ物にならないほど速い。


「マンサ! バニおじさん! あと他の奴! ここは俺に任せて逃げろ!!」


「わかった!!」


 臭さで倒れてたはずの男衆がむくりと起き上がり、背中を見せて物凄い速度で逃げ始めた。

 うわあ、超元気じゃねえかお前ら!!


「オドマー!! 頑張ってえええ!!」


 バーコに担がれたマンサが、ぶんぶん俺に向かって手を振る。

 おう、頑張っちゃうぞ。


「オドマー!! 頑張れえええ!!」


 男衆にみこしのように担がれたバニおじさんが俺に向かってどすの利いた声で声援を送る。

 あなたの声援はいらない。


 ともあれ、俺は近づいてきたゴモラーを前に、ゆっくりとシフトレバーを操作する。巷では徐々に減ってきていた、運転席脇から突き出すコラムシフトだ。正面から飛び出したインパネシフトには媚びぬと、前世の俺は誓ったものだ。

 握りなれた感触。十歳の手には少々でかいか。

 だが、俺の操作に合わせてサンダルフォンはパワーを上げていくのが分かる。

 N(ニュートラル)から、一速。

 愛車の巨体が動き出す。ゴモラーに向かって。

 全身が青白い電流を纏い、大地を焦がし始めた。

 二速、三速。

 サンダルフォンの挙動が早くなる。

 ゴモラーへ向けて着実に歩行する。

 四速……!

 歩行は疾走に変わる。

 握り締めた拳が輝く。

 別に必殺技を使うわけでもない。ただ、サンダルフォンがパワーを込めた箇所がより以上の帯電を行うのだ。


「行くぜ、ファミリオン!! いや、グレートサンダルフォン!!」


 愛車が俺の言葉に応えて咆哮をあげた。

 走りながらの拳が、ゴモラー目掛けて叩き込まれる。

 怪獣からのカウンターは、土塊の中から飛び出した無数の動物の(ひづめ)だ。

 だが、そいつはサンダルフォンに衝突する寸前に爆発した。

 鋼の巨人の全身を包んだ雷撃が、蹄を瞬時に粉砕したのだ。

 サンダルフォンの拳を阻むものは何も無い。

 ゴモラーの土塊に拳が炸裂。その瞬間、命中した箇所は小さな破裂と大きな爆裂を繰り返しつつ、高速で透き通った塊に変化していく。

 電撃の強烈な熱量が、命中した箇所をガラス質に変化させていくのだ。

 そして、振りぬく拳の質量が、巨大なガラスの塊と化したゴモラーを、粉々に砕き去る。

 振り切った後、拳の戻しで発生した無数の雷電が大地を穿つ。

 まるでその姿は、まばゆく輝く森に立つ、甲冑の戦士だ。


「名づけて、サンダーパン……いやいや。ライトニングフィスト……? むむむ」


 ゴモラーを倒した余韻と共に、俺はこの攻撃を名づけようとした。

 だが、分かった事は、俺には徹底的にネーミングセンスが無いと言う事だった。


「まあ、なんか雷を帯びたパンチでいいか」


「うわー! やったぜオドマー!」


「オドマすてきー!」


「あっ、ばか、まだ戻ってくるな! 雷が消えてないんだから!」


「ぎゃびびびびび」


「しびびびび」


「あー」


 なんか近寄ってきた仲間たちが全員感電してぶっ倒れたのはご愛嬌である。



 命に別状は無かったので、コンテナに全員を詰め込んで帰ることにした。

 サンダルフォンの放った(いかづち)は、大地を広範囲にわたって焼き焦がし、爆心地はガラス質のすり鉢になっていた。

 そして空。

 焦げた空気が漂う中、俺の頭上にぽっかりと、穴が空いていた。

 なんだ、こりゃあ?

 すでにファミリオンへと分離した俺は、頭上を確認する。

 どうやらこれは……アビスは、俺たちに認識できない、青空の色をした天井に覆われていたようだ。

 その向こうに、何かとんでもないものが見える。

 あれは、なんだ。

 なんなんだ、あれは。


 一言でいうなら、空飛ぶ島だった。

 ラ〇ュタは本当にあったんだ……! なんて冗談を言う気にもならない。そもそもスケールが違いすぎる。

 あれは島か?

 むしろ俺には、大陸一つが丸ごとくりぬかれ、空を飛んでいるように見える。

 空いた穴の向こう。空の半分が、その浮遊する島だった。

 しかもファミリオンのカメラアイを使っても、遠すぎて詳細がはっきりしない。

 これだけ遠いのに、空の半分を覆いつくすほどの大きさだ。


「おいおい……。未開の世界どころじゃないぞこれは……」


 呆然と呟く俺の目の前で、空にあいた穴は、急速に閉じていった。

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