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23 初めての依頼

この世界には核兵器が無いため、ロケット技術は未発達であり、GPSは存在しません。




 来客を知らせる鐘の音を鳴らせながら、僕は酒場のドアを開けた。


 酒場は、ツンと鼻の奥に香る強いアルコールとフルーティーなウィスキーの香りで満ちている。


 ウィスキーの原料は穀類だったはずだ。別に果物を使っているわけでもないのにこんな良い香りがするのは不思議だと思う。


 その匂いに煙草やら料理など様々な匂いが混ざって、その空間を満たしていた。


「僕の年齢だと、やっぱり酒場に来るのは少し緊張しちゃうな」


 僕が自分の足を躊躇い無く前に出せるその原因は、眼前の少女のお陰に他ならない。


 ナインティーン。彼女は僕の前をまるで僕を誘導するように進む。その足取りには迷いも淀みも無い。


 彼女はその艶やかな長い黒髪を二つに結っている。彼女が足を踏み出す度にその結った長い髪の束は尻尾のように可愛らしく揺れる。彼女の長く、濡れた様な睫の下、宝石の様な瞳は真っ直ぐに前を向いている。彼女の相貌は幼くも凛々しく、そしてとても美しい。





「マスター。これで今日から仕事を受けられますね」


 僕は、レイラさんから渡されたメモをカウンターの上に広げつつ、椅子に座り、酒場のマスターを仰ぎ見ながら確認を求めた。


 僕が頑張っている理由の一つは、ナインティーンに情けない姿を見せたくないからかもしれない。


「坊主。注文は?」


 酒場のマスターは、僕が差し出したメモを覗き込みながら、彼の仕事をこなす。


「オレンジジュースを下さい」


「はぁ……はい、はい。オレンジジュースね。それで何々、魔石の納品は完了したってか……。まあオーガを倒したくらいだ。五百ドル程度の魔石は当然だろうな」


 この人も僕がオーガを倒した事を知っているようだった。


『早いとこ、荷台のある車を手に入れないとまた噂になるな。……それとだ、ユキ。あんまり恥かしい台詞を心の中で吐くなよ。こっぱずかしくて、顔をまともに合わせられ無くなっちまうだろうが!』 


 ナインティーンに聞こえて居たらしい。彼女は頬を染めながら眉をへの字にして言った。心の中を読まれてしまうというのは、色々と困る。


『困らねぇよ。以心伝心、一心同体ってやつさ。バディとして行動する上では都合が良いだろう』


 いやいや、現に僕が困っているし、君も困ってるじゃないか。


「しっかし良くもまあ、その装備でオーガを倒せたな?最近じゃDShK積んだピックアップまで襲ったって話なのによ」


 酒場のマスターは、無言で会話する僕とナインティーンに話しかけた。

 

(ダッシュケイ?)


『DShK38。12.7mm重機関銃のことだ』


 へぇ、12.7mm。まあ、そうな大きな鉄砲があってもあの巨体に車を転がされたりすればどうしようもないだろうけど。


「色々と工夫したんです。それで約束通り、今後は仕事は斡旋してくれるんでしょうね?」


 僕は、酒場の置くにある様々な仕事の依頼が貼り付けられている壁と柱を、親指で指差しながら訊ねた。


「良いぜ。約束だからな。ところで、その一番最初の仕事なんだけどよ。お前に頼みたい仕事があるんだが?」


 酒場のマスターはオレンジジュースの入ったグラスを僕の前に置いた。


「僕に……頼みたい?」


「ああ、そうだ」


 何んだろうか?


「テーブル席を見な。一番奥に女が座ってるだろ?」


 マスターが指し示すその先には一人の女性が座っていた。年は若い。勿論僕よりは年上だけれど。


「あの子を十二区まで送って行って欲しいんだ。引き受けてくれるか?」


「…………」


 僕は直ぐには頷かなかった。僕に“頼みたい”と言うその言葉に引っかかったからだ。


『なんだか気に食わない話の持ってき方だな。何を企んでやがるんだ?』


「僕に頼む理由が何かあるんですか?」


「あの子は十二区から商売でこっちに来てた俺の知り合いの娘なんだが、少しまえにその知り合いってのが盗賊にあってな。車ごと蜂の巣にされちまった」


 盗賊……やっぱりそういうの居るんだ。


「それで、十二区まで何とか帰してやりてぇんだが。しかし、オーガが東十二区付近で目撃されてるだろ?その上さっきの話だ。でかい車を持ってない奴はここ最近、行き来を遠慮してるんだ」 


「…………」


「皆思ってるのさ。目撃されてるオーガは一匹じゃない。誰かがそのオーガを片してくれてから安全に道を行けば良いってな。それにあの子は余り金を持ってない。車まで出して送り届けるに足りるだけの報酬を出せないって訳だ」


「それで、僕にですか?」


「おうよ。お前の足は単車だろう?ガス代もそんなにかからねぇ。それに本当にオーガを倒したんなら、襲われるのにびびったりはしないだろ?」


『気に食わん。気に食わない話だ』


 ナインティーンは不機嫌そうに呟いた。


『危険を避けるのは別に恥かしがる事じゃない。他の奴が引き受けないってことはそれなりにリスクが有るって事だぜ』


(オーガは時速三十キロほどで走れる。街の近くの道路はそれほど荒れていないからバイクでも十分なスピードを出せるため問題無いだろう。でも離れれば離れるほどそれは道とは程遠い物になる。もし遭遇したら……大丈夫だろうか?)


『それに要はコイツ、アタイ達だったら受けるだろうと足元を見てやがる。アタイはな、ユキ、お前が安く見られるって事が、正直言って他人の糞を喰らうほどムカつくぜ!胸糞悪りぃ!!』


 糞糞、女の子がそんな事言わないで欲しい。


「報酬は幾らなんですか?」


「あの子から二百ドル。俺から餞別で百ドル出す。合わせて三百ドルだ」


「三百ドル……。僕は東十一区まで行った事が無いんですが、距離はどのくらいあるんですか?」


『車で走り漬けで終日かかる。直線距離だと八十キロほどだ』


「八十キロ」


 平坦な道なら、徒歩で二十時間だ。それが車で十二時間……。もちろん街と街が直線で繋がっている訳は無いと思うけど、平均時速は一体何キロ出せるんだ?


『十二時間……少なめに見積もってガスを一時間に1ℓ使うとして……ガス代だけで片道三十六ドル。往復七十二ドルだぜ。下手すればその倍ほどいくかもしれん。話にならん』


  ナインティーンはあまり乗り気じゃ無いらしい。

金銭面で言えば、僕も不満がある。でも僕はそれでも受けても良いと思っていた。だけどその前に……


「マスター。言っておくと僕はその十二区までの道を知らないんです。それでも僕に頼むんですか?」


「道を知らないのか……まあ大丈夫だ。道は由香里が知っている。地図をやっていい。ギリギリ十二区まで入っている地図だ。うちのガリ版で刷って旅行者に売ってるんだが……タダで譲ってやる」


 がりばん?ガリバン?


 マスターはカウンターの置くから小学校で使っていた道具箱の様なものをカウンターに置き、そこから一枚の紙を取り出した。そこには手書きのような地図が印刷されている。


「それで、受けてくれるのか?」


(ナインティーン。僕はこの仕事を受けたい)


『……お前、こいつの話を聞いて“同情”したとかじゃ無いよな。そんな感情はそこらの犬にでも食わせとけ。この世界じゃ一銭にも成らんどころか命取りになるぜ』


(同情があるのは事実だと思う。でもそれだけじゃないんだ。僕はこの街の周辺しか地理を知らない。以前、壁に掛けられていた依頼の内容を見たけど街と街を行き交う依頼は多かったよね?)


『まあな』


(もし、ナインティーンが依頼主だとして護衛や輸送を頼むのに道を知らないような人をやとうかい?)


『…………雇わねぇな』


(今回、依頼主は僕にお金を払ってまで道を案内してくれる。そう考えれば僕にとって都合が良い。そう思ってるんだ)


『もう、やるって決めちまってるみたいじゃねぇかユキ』


(……僕のバディは君だろ?その意見を無視して行動するつもりは無いよ。僕等は互いに命を預けあってるんだからね)


『良いぜ。この仕事を受けよう。アタイはどんなことがあってもユキ、お前に付いて行く。アタイはお前の銃だからなッ!』


 そう言って彼女は僕の胸を拳でコツンと叩いた。


「黙りこくってどうした?坊主。この仕事受けるのか?それとも……」


「受けます。人を届けるだけの仕事。もしオーガに遭遇しても逃げるか、倒せば良いだけ。単純ですからね」


「ほう、言うじゃねえか。おい由香里!こっちに来い。お前の依頼を請け負うって奴が現れたぜ」


 酒場のマスターが奥のテーブルに向かって手を上げながら呼びかけた。ほんの少し酒場の客から注目を浴びつつ、彼女は彼の前まで移動し、カウンターの席に座った。


「本当ですか?私の街まで送り届けてくれる人が?」


「お前さんの隣に居る、坊主がそうさ」


 マスターは、クイックイッと親指で僕を指差す。


「どうも、僕はユキと言います」


 由香里……という女性に僕は挨拶をした。


目の前の女性は、背は僕より少し高い。肩まで有るまとまった後ろ髪。前髪は右眉の上で二つに分けている。おでこは分けている部分以外は全部隠れていた。

年齢は良く解らない。二十歳くらいだろうか……


「この子が……ですか?」


 女性は、不満そうに眉をひそめて僕を見た。


『このアマぁ……舐め腐りやがって!』


 まあまあ。と心の中でナインティーンをなだめつつ僕は話を続ける。


「もし、僕に御不満があるようでしたら、この件は無かった事にしてくれても構いません」


「由香里が不安がるのも仕方がねぇけどよ。今のところコイツ以外で受けてくれる奴が居ないってのも事実だ。それに……」


「それに?」


 由香里と言われた女性はマスターに尋ねる。


「こいつはオーガも倒しているらしい。なあ坊主、“本当”にお前が“一人”でオーガを倒したなら、その話をしてみてくれないか?」


 マスターは少しニヤニヤしながら言った。その言葉には若干棘がある言い方で、アクセントが置かれた言葉の意図からして、僕が本当にオーガを倒したかどうかを疑っているようにも思えた。


「良いですよ。話しましょう」


 僕は簡単に事の顛末を話した。三半規管へのアタックについては詳細を説明しなかったが、鹿狩りの途中でオークが現れたこと、そして手榴弾で目くらましをかけて接近戦をしかけ銃剣をりようして一点に集中攻撃をしかけて倒したことを伝えた。


「……信じらんねぇ!お前、オーガをそのちんけなバヨネットで突き刺したっていうのか!?」


 酒場のマスターは呆れていた。


「殆ど刺さりませんでしたけどね。でも、銃口の向きを固定するだけで十分でしたから。……僕が一人でオーガを倒したことについては証明できませんが、僕がいつも一人で居ることはご存知でしょう?」  


 実際はナインティーンと二人で倒したんだけど。


「依頼についてはどうして受けたいという訳でもありませんから、依頼主のあなたの意思を尊重します」


 僕はグラスの中のオレンジジュースを全部飲み干して、カウンターの上に置いた。


「解ったわ。仕事を依頼します。マスター、紹介してくれてありがとう。私も出来るだけ早く街に帰りたいもの。贅沢は言わないわ」


「良いって事さ。お前さんには出来るだけ早く、あの野郎の跡を継いで物資の運搬にふっきして貰いてぇからな」


「由香里さんと言いましたね。僕はあなたを送り届けますが、途中の宿泊や食事は自分で用意してください。僕は野宿と携行食で済ませますから」


「ええ、了解したわ。でも私も野宿に同伴すると思うわ。今はお金が全然無いから」


 そう言って女性は肩をすくめる。


「出発は明日の朝。時間は六時に酒場の前で待ち合わせというのでどうでしょうか?」

 

「良いわ。じゃあ、明日はお願いね。その……ユキ君」


 こうして僕は酒場での始めての仕事を受けた。この仕事は今後の仕事を円滑に斡旋して貰うためにも是非成功させたい。


 酒場を後にしてから、ナインティーンはかなり不機嫌だった。


 僕は雑貨屋に向かい、念のためにコンパスと、ガソリン携行缶10ℓとそれをバイクに固定するためのチェーンキーを購入した。それと地図が濡れてしまわないようにそれに合わせた大きさのビニールを買ってその中に地図を仕舞う。その後にバイクと携行缶にガソリンを満タンまで入れた。


「ねぇナインティーン」


『何だよ』


「まだ日が高いから射撃の訓練に行こう。僕の腕前は“まだまだ”だからさ。教えてくれる?」


『はぁ…………ファック!!お前に気を使わせちまったな。

良いぜ!勿論だ!

止めてと言うまでしごいてやるよ。

オーガ共に遭遇しても.45ACPを相手の眼球のど真ん中にぶち込んで眼底を砕き、脳みそ掻き回して、屠れるようにしてやるぜ!!』


 ナインティーンはそう言って口角を吊り上げ、肉食獣のように歯を見せて笑った。だけど目は嬉しそうで優しい感じがした。



目標:魔石納品500 達成

目標:11区から12区まで対人護送任務


魔石:2

腕輪:炎術のマナグッズ

指輪:神聖魔術のマナグッズ

腕時計:1

携帯濾過器:1

予備フィルタ:3

H2Oペットボトル2L:3

携帯食料:7

鍋:1

フライパン:1

布テープ:1

ダガー:1

コンバットナイフ:1

F1対人手榴弾通常:2

F1対人手榴弾遅延ヒューズ無し:2

.45acp:223

10rdsmag:2

15rdsmag:2

SKS スコープ搭載 レーザーサイト搭載 

6ポジションアジャストストック

予備30rdマガジン:2

75rdドラムマガジン:1

7.62×39mm:372

バイク125ccキャリアー搭載済み

水筒:1

鉈:1

コンパス:1

地図:11区周辺

フラッシュライト:1

単二電池:6

CR-123Aリチウム電池予備:1

第一世代ナイトビジョン:1

(ユーコンバイキング1X24ナイトビジョンゴーグル

IRイルミ有効距離:最大150ヤード)


US$:330ドル

円:10K

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