21 おせっかいなドラゴン
「どうしよう。このオーガ」
目の前に転がる巨体を前に、僕は空になったマガジンに弾丸を込めながら呟いた。
『どうしようって、魔石を取り出すに決まってんだろ?このファッ……スカポンタン』
「スカポンタン……?」
目の前に居る、黒髪ツインテールの小さな少女は語尾のトーンを尻すぼみに落として言った。きっと彼女は自制したんだろう。ファックとかファッキンとか言いそうになったのだと思う。僕が彼女の言葉に文句を言ったせいかもしれない。
「魔石取り出すためには、ひっくり返さないといけないよね」
『ああ、きっと重いぜこいつ?』
ナインティーンは僕の質問の意図を汲んだ様子で、手を頭の上で組んでオーガの頭を蹴飛ばす仕草をする。だが、その足はまるで幽霊みたいにオーガの頭をスリ抜ける。僕のお尻は蹴れるのに不思議なことだ。
「テコに使えそうな木の棒を探してくるよ。素手じゃ引っくり返せないもん」
三メートルの巨人、しかも普通の人が三メートルになったのとは違う。オーガは分厚く横幅が広い。僕の力じゃ無理だ。
『アタイも一緒に行く!』
ナインティーンと共にあたりを見回し、結局はオーガがぶつかって折れた木の一部を使う事にした。
まず、オーガを万歳の姿勢にしてから、直径十センチくらいの太い枝を差し込んで、テコの要領でゴロンと引っくり返す。
「凄い顔をしてるね」
『オーガ。つまりは鬼だからな』
凶悪な面である。それになんというか不気味だ。
『ユキ。お前、随分度胸があるんだな。まさか自分一人でオーガを倒しちまうとは思わなかったぜ』
「一人出じゃないよ。ナインティーンが助けてくれたじゃないか」
僕が頑張れたのは、ナインティーンが控えていると思って居たからだ。彼女は僕の作戦にOKを出した。その上で何かあれば自分に任せろと言ってくれたのだ。これほど心強い物は無い。
『アタイがやったのは、ちょっと引き金を引いただけさ。見直したぜ、ユキ』
「そう言えば、どうやってフルオート射撃をしたの?この銃にそんな機能ないよね?」
『お前の身体でやったんだから、何となくは解ってるんだろ?反動を利用して引き金を引いたのさ』
彼女の言うとおり、あの時、ナインティーンは射撃の反動で銃を前後に動かして引き金を引いている様だった。
『まあこの方法だと想像以上に銃身がぶれるから、今回みたいに銃口の向きを固定しないと弾がバラけちまうけどよ。そもそもフルーオート射撃なんて近距離で弾幕張るためのモンだからさ、命中精度なんて要らないんだけどな』
「なんだか色々なテクニックがあるんだね」
『テクニックなんて無ぇよ。あんなのお遊びの撃ち方さ。それよりもお前のバヨネットぶっ刺して、同じ場所に銃弾を叩き込むアイディアの方が驚きだね』
「ちょっと無茶だったかな?」
『無茶も無茶。大無茶さ!!だけど良くこいつが起き上がらなかったもんだぜ』
「片方の耳に爆風を食らったからね。きっと遊園地にあるコーヒーカップみたいにぐるぐる世界が回ったと思うよ」
『コーヒーカップ?なんだそりゃ』
ナインティーンは遊園地のコーヒーカップを知らないようだった。遊園地もジェットコースターだけは知っているようで、それも絵や写真、伝聞でしか知らないということだった。
僕はオーガの胸を鉈とナイフで抉りながら、彼女に遊園地の話をイメージを浮かべながら話した。そうしたのは、剥ぎ取りに意識を集中させたくなかったからかもしれない。
「はぁ…はぁ……どんだけ肉が厚いんだよ、この人」
このオーガ、滅茶苦茶マッチョである。
胸を裂いて何とか手を差し込んで僕は魔石らしいものに触れた。
「大きい!!大きいよナインティーン!!」
凄くでかい。物凄くでかい!
『そりゃあ良かったな!まあフルートライフルやアンチマテリアルライフル持ってても殺られる場合がある危険なモンスターだから。それぐらいの見返りが無いとやってらんねぇぜ』
オーガの魔石はとても大きくて、取り出すのにも苦労したくらいだ。
『出来れば頭も持って帰りたい。あの刀やなんかを扱ってた武器やならきっと買い取ってくれるぜ』
「まじ?」
『マジ。だから頑張れ、ユキこれもトレーニングさ』
こうして、魔石を取り出したと思ったら、再び苦行が始まった。巨大なオーガの頭を首から切断する作業は物凄く骨が折れた。その作業が完了した後は鹿の解体作業も残っている。
鹿はバイクの前後に分けて乗せ。オーガの頭は前方をにらみつけるようにフロントキャリアーに括った。
こうして僕等は街に帰ったのだった。
街に付く頃には夕方近くになっていた。僕はお昼を食べていないのでお腹がグーグーなっている。
「なんだか街の人の視線を感じるんだけど」
『これでオーガの頭に穴でも空いてりゃ、目と口からバイクのビームがでてカッコいいのによ』
そう。バイクのフロントキャリアーに乗せたオーガは物凄いアクセントになっていたのだ。
僕は恥ずかしくって、一番に武器屋を訪ねてオーガの頭を売り払らうことにした。
「こいつは……でかい首じゃな。出来れば骨だけ持って来て貰いたいんじゃが……腐らせてから水で洗えば直ぐじゃろ?」
店の主人は、これまた人じゃなく亜人だった。身体の大きなリザードマンである。僕には、以前酒場で見かけた三人と見分けが付かない。
「そうなんですか……でしたら改めますけど。はぁ……」
川にでも放り込むしかないだろうな……。またこの頭をバイクに乗せるのか……
「……仕方ない。坊主。買い取ってやる。確か頭の肉は食えると言うしのう」
うげぇ……この人、脳みそ食べる気だよ。
「頭に銃弾を撃ち込みましたから、食中りしないように気を付けて下さいね」
「撃ち込んだ……って事はお前さんがこのオーガをやっつけたのか!?」
「ええ。死ぬかと思いましたよ」
「へぇ、こりゃ凄い!!獲物はその銃でか?」
「はい」
「こりゃあ!またまた驚いた!!」
目の前のリザードマンは感心した様な顔で、僕の顔を覗き込んだ。目が…その爬虫類ちっくな目が怖いんですけど。
「あっ、そうだ。もし良かったら鹿の皮も買ってくれませんか?」
「鹿の皮?もしかしてそれも今日狩った奴か?」
「はい」
そう言うとリザードマンは顔を押さえて、首を横に振った。
「きょうびの若いもんは、自分で皮をなめしたり、加工したりしないのか。全く嘆かわしい!!」
なっ……なんだ。この反応は?
「あ~~あ。また、おやっさんの何時もの癖が始まったぜ」
僕の達の会話を聞いていたのか店のお客の一人である猫の顔をした男性が口を挟んだ。
「気をつけろよ坊主。このおやっさん、すぐに説教はじめるからな。剣を研ぎに出したら、自分で研げんのか?とか言われるし、新しくナイフを買おうとしたら前のナイフを見せろとか言われてさ。見せたら見せたで、まだこんなにも刃が残ってるとか言って怒るんだぜ」
そう言って猫男は僕の肩を叩いた。
「クレイブ!買わないのなら余計な口を出すな。ナイフってのはこれぐらいまで使えるもんなんだよ!見ろ!ワシが十年使っているナイフを!」
そう言ってリザードマンが取り出したナイフは刃幅が五ミリ程度しかない細いナイフのように見えたが良く見ると根元は三センチぐらいある。おそらくはそれが元々の刃幅だったんだろう。
「凄く、細くなってますね!」
「おうよ。切れ味が落ちる度に研いで、ずっと使ってるからな。まだまだ使える!」
「うっせえよ、おやじ!!こっちはハンターなんだ。そんな細いナイフでモンスターを相手に出来るか!!」
そう言ってクレイブと言われた猫の人は店を逃げ出した。
『なんだか面倒な事になりそうだな。少し口を借りるぞ』
そう言ってナインティーンは僕の口を使って喋り始めた。
「アタ……俺には家が無いんだ。だから獲物を処理できる場所が無い。それに出来れば早いとこ鹿の肉も売り払いたいんだ。今夜の寝床も探す必要がある薪集めもしなくちゃならないし時間が無いんだよ」
「ほう……そいつは難儀だな。…………」
そう言って目の前のリザードマンは目を瞑った。
『なんだこのオヤジ、アタイと喋っている途中で眠るきか?』
「おい、店主!聞こえなかったのか?こっちは急いでるんだ!」
「坊主。鹿の肉を売り払った後、家に来い。今日は宿を貸してやる」
「『ええっ!?』」
僕とナインティーンは同時に驚いてハモった。と言っても口は一つだからハモったとは言えないかもしれないけど。
「それと明日、お前が狩ったオーガを此処に運ぶからそれを朝から手伝え。頭だけでなく身体の皮や肉、骨も買い取ってやる。鹿の皮のなめしも手伝うんだ。教えてやる」
「『えええぇえっ!?』」
「ほらっ、さっさと鹿の皮を持ってこんか!時間が無いのじゃろう!」
リザードマンはカウンターを出て、店の表に僕達を置いて出て行った。
『なんなんだ、あの男は!?』
「おい!何をしている坊主。さっさと手伝わんか!!」
「はっ……はい!!」
僕は慌てて、飛び出して、鹿の肉を包んである皮を取り出してリザードマンに渡した。
「ほれっ!肉が痛む前に、その肉を売ってこんか!その間に値段をつけておいてやる」
「……わっ、解りました。その…ところでおじさんの名前はなんて言うんですか?」
「ワシか?ワシの名は龍翔と言う」
「りゅうしょう?」
「龍翔!龍が飛翔すると書くんじゃ」
あなたリザードマンでしょ?蜥蜴でしょ?そう思ったが口には出さなかった。
「じゃあ、お肉売ってきますので、査定お願いします」
『おいユキ!!本気か!?金もまだ受け取って無いんだぞ』
「う~~ん。そうなんだけどさ……まあ、言う通りにしてみるよ。今日はもう暗いしね。早く行かないと」
ナインティーンの心配はもっともだった。だけど、僕はそのリザードマンを疑わなかった。仮に騙された時は、その時に何とかすれば良いと思ったのだ。僕はプンプンと怒るナインティーンと共にバイクに跨り肉屋に向かって出発したのだった。
鹿肉は全部で約三十キロ取ることが出来、その金額はなんと四百ドルでさばけた。オークの肉より高い!
「四百ドル!!」
思わず叫んでしまう。美味しい!鹿肉美味しいよ!!僕は今回もお肉を取り分けて貰い。もう随分暗くなっていたので僕は龍翔さんのお店に急いだ。
お店に着くと、お店はもう閉店していたが、ドアは開いていた。中に入るとお店のカウンターの上はすでに片付いており、龍翔さんは見当たらないので彼を呼ぶと、店の奥から声がした。
「あの、龍翔さん?」
龍翔さんは血だらけのエプロンをつけて、なんというか……料理をしているように見える。まさかさっきのオーガの脳みそ?
「坊主、金はそこのテーブルにおいて置いた。オーガの頭はニ百ドル、鹿の皮はニ十ドルじゃ。それで良いか?」
『へぇ……良いんじゃないか?』
「はい。構いません」
僕はテーブルの上のニ百ニ十ドルを受け取った。
「あの……龍翔さん。一体何をしてるんですか?」
「何って、ワシと坊主の晩飯に決まってるじゃろうが。坊主、貴様も手伝わんか!」
やっぱりだよ。覗き込むと鍋に何か浮かんでるし……
「その……鹿のお肉取り分けて貰ったんで、"これを”食べましょう!」
「おおっ、鹿の肉か!"それも”食おう」
違う!違うよ!!龍翔さん!!
僕は釜戸に薪をくべながら、煙に涙を浮かべて夕飯の内容に思いをはせつつ手伝ったのだった。
夕飯は野菜と脳みその塩スープ。そして鹿肉のステーキだった。
「龍翔さん、この丸いの何です?」
「目玉にきまっとろうが。おおプリュプリュでなかなかの美味じゃぞ」
…………
鹿肉のステーキは美味しかった。凄く美味しかった。
塩スープも……うん。美味しかった。中に入っていた何だか良く解らない白いお肉も美味しかったよ。食感は濃い豆腐みたいで、濃厚な味わいがさっぱりした塩スープとマッチしてたよ。何のお肉ナンダロウネ、ハハハ。
白くて丸いのは、殆どがコリコリして食べれなかったけど、周囲を包むゼラチン質の部分は美味シカッタヨウナキガスルナ。
『おい、ユキ。信じらんねぇ!この脳みそ旨いぜ!!』
やーーめーーてーーー!!
目標:魔石納品500 残り265
魔石:2
腕輪:1
腕時計:1
指輪:0
携帯濾過器:1
予備フィルタ:3
H2Oペットボトル2L:3
携帯食料:7
鍋:1
フライパン:1
布テープ:1
ダガー:1
コンバットナイフ:1
F1対人手榴弾:2
.45acp:223
10rdsmag:2
15rdsmag:1
SKS スコープ搭載
予備マガジン:2
7.62×39mm:262
バイク125ccキャリアー搭載済み
水筒:1
鉈:1
フラッシュライト:1
単二電池:6
US$:676
円:10K




