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ゴリラ先輩ラーメン子  作者: 彩女好き
いつもの三人編
20/213

20日目 通天閣(バベル)の塔



「久しぶりやな、坊主」


「げっ、大阪さん」


路地を歩いていた僕は見知った顔とばったり出会った。

自らを大阪だと自称する男、大阪さん。

一見何を考えているか分らないが、話してみても分らない。

つまり、大阪さんだった。


「げってなんやねん。傷つくわ」


「何してんですか、こんな所で?」


大阪さんの言葉を無視して僕は尋ねた。

一度会話の主導権を持っていかれると、そこはもう大阪ワールドになってしまう。

あらゆる言語が大阪化し、通天閣(バベル)混沌(バベル)と化す。

それだけは避けねばならない。


「俺か? 俺はあれや、たこ焼きや」


わざわざたこ焼きを食べるジェスチャーを交えて説明する大阪さん。

なるほど、大阪を名乗るだけあって、日夜たこ焼き屋台を散策しているのだろう。

白鳥が水面下でバタ足をするかの如く、涙ぐましい努力だ。


「この辺りに美味しい屋台でもあるんですか?」


美味いたこ焼きの屋台があるなら、ちょっと教えてもらおうかな。

そんな軽い気持ちで僕は大阪さんに聞いた。

しかし、大阪さんの返事は奇怪なものだった。


「ちゃうちゃう、俺がたこ焼きや」


「?」


はっと僕は気付く。

これだ、これが大阪ワールドだ!

早くも理解不能な世界になってきている。

だからこの人はヤなんだよ!


「名古屋!!」


「!?」


僕の叫びに、大阪さんはビクッと体を竦めた。

どうやら世界の大阪化を止める事ができたようだ。

大阪化に対抗するには、東京ヨコハマ名古屋あたりが有効だと踏んだが、

正解だったみたいだ。


沈黙する大阪さん。

しばらく何か考え込むような表情をした後、力強く言った。


「焼きソバ!」


「シリトリしたいわけじゃねーよ!?」


「えっ!? ちゃうんかいな!」


「何で急にシリトリ始めなきゃいけないのさ!」


「じゃあ何やっちゅうねん! 意味わかれへんわ!」


お互いに不毛な言い争いを続ける事、5分。

ようやく落ち着いて来た大阪さんは、話を纏めるように言ってきた。


「あれやな。坊主は名古屋が好きなんや。そうやろ?」


「もうそれで良いです……」


ぜーはー、ぜーはーと肩で息をしながら僕は言った。

もう疲れた! もうどうにでもなーれって感じだ。


「じゃあ、俺はもういくわ。ガキ共にたこ焼きの作り方教えたらなあかんねん」


去っていく大阪さんを見送りながら、僕は思った。


「実に無駄な時間だった……」


大阪さんと過ごす時間は大体そんなもんだな、と感じる今日この頃だった。





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