↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
27/27

24層 終局?

 ショウゴとミシェンナが暴れ回っているその背後、命からがら逃げ延びたアスラが、熱のこもった視線でミシェンナを見つめていた。


「殿下…苛烈だが可憐だ…美しい……!」


 彼のつぶやきは、爆炎と粉塵にかき消され、誰にも届くことはなかった。




 どうも、後ろでへたり込んでいる男は、動きそうもない。恍惚とした表情で、ミシェンナが戦っているのを見ているようだった。まあ正直邪魔だ。ちょっとでも攻撃の余波が行こうものなら、彼も眼前の魔物同様弾け飛ぶことになるだろう。


「それは避けないと…聖女に………あぁ、サブイボ立ってきた」

「何をゴニョゴニョ言っている!集中しろ!」


 言ってる間にも、うなりの質量はみるみる減っていく。先ほどまで大型の魔物がうねりの中核を作っていたのが、今やゴブリンやコボルトといった小型の魔物が主体で、ちらほら中型がいるというふうに移っていた。

 あとは消化試合。そう思っていた矢先だった。


「なっ!ぐあっ!」


 ミシェンナが、大きく吹き飛ばされた。しかも、その飛んでいった方がまずかった。魔物の群れの、ちょうど真ん中である。

 

「くっ、やめ…ぐほっ…ぎっあっ…」

「ミシェンナっ!」


 ゴブリンやコボルト、それ単体はそこまで強くないとしても、数が揃えばかなりの脅威である。


「ちっ!まにあえっ!」


 すぐさま、ミシェンナを群れから救い上げる。が、その肢体は血まみれで、およそ無事などではないことは明白だ。


「意識はあるか、ミシェンナ!」

「ああ…すまない………ぐっ……油断した」

「俺たちに気取られずに背後取れるとか、どんなバケモンだよ」

「…ありがとう」

「礼は後!今はこれ飲んで安静に!」


 ミシェンナに、スキルで作った回復薬を飲ませる。出血と、大きな打撲はなんとか治した。


「あら、殺せませんでしたか…残念です」


 すぐ横から、心底愉快そうな声が届いた。俺はミシェンナを抱えながら横っ飛びする。


「気色悪い見た目しやがって…魔族か?」

「いかにも。というか、貴方も魔族でしょうに、なぜ人間の肩入れをなさるので?」

「俺の勝手だろ」

「解せませんねぇ…まあいいです。死んでください」


 鋭い爪が、コンマ1秒で眼前に迫った。半身を翻し、なんとか躱す。すれ違いざまに、拳を腹に叩き込んだ。


「ごあっ…!なかなかやりますねぇ」

「お前も容赦ない攻撃してきやがって」


 その後、数秒、お互いに距離をとって様子を見る。先に動いたのは、相手だった。両手の爪を思い切り振り上げ、俺に向かってくる。その速度は、先ほどよりも数段速く思えた。

 だが、動きが直線的すぎる。俺の拳がちょうど、やつの真ん中を捉えた。体が、文字通り裏返る。


「なにっ…気配の遮断は…動きの起こりの遮断は完璧だったはず……!」

「甘い。俺の動体視力舐めんな!」


 鋭い断末魔をあげ、魔族は斃れた。危ない、ことはなかったが、素早さはピカイチだった。会費もかなりギリギリになってしまった。

 ふと周りを見ると、溢れかえっていた魔物たちがぞろぞろと散っていき、やがて一匹もいなくなった。


「ミシェンナ…大丈夫か」


 周りの安全を確認したのち、草原に寝かせていたミシェンナの様子を見る。流石に疲れとダメージが出たらしく、意識を失っていた。


「…おつかれ。一回連れ帰るか、流石に」

「待ちなさい!ミシェンナ殿下を、どこに連れていくおつもりですか!」


 自身の洞《ほら》にミシェンナを連れ帰ろうとした時、背後から声がかかる。聖女だった。

 面倒臭いというのが正直な意見だが、答えないのも違う。俺は先ほどと同じように、ブリキの人形のように振り返った。


「聖女サマ…ども」

「どこに連れていくのですか?はっ…!まさか、無理やり…!!そんなこと絶対に許しません!滅びなさい!」

「やばいやばいやばいいいいああああっ!」


 弁明くらいさせて欲しいものである。が、あの状態の聖女に何をいっても無駄なのはもう分かっている。なのでおれは、逃げるが勝ちと、家にいそいだ。ミシェンナを連れて。

 聖女は根性で撒きました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。