23話 陸の津波
どう足掻いたって勝てっこない。そんな存在は世の中にごまんといる。
そしてそれは、目の前の黒い蠢きもそうだ。
「に、逃げるぞ、はしれぇっ!」
レヴァテンのBランク冒険者パーティー『炎の遊覧』は、迫り来る魔物の大群を前に、街へと向けて足を回し始めた。
が、それでも遅い。ひとり、またひとりと黒い渦に呑まれて潰されていく。
「ゴードンっ!」
一際重装の男、ゴードンの足がもつれる。それはあまりにも初歩的で、致命的だった。ゴキリと、鎧が砕け、ひしゃげる音がなる。
「ヒッ!やめろおおおっ!くるなああああっ」
瞬く間に、ゴードンは波に呑まれていった。血潮が吹き上がるもそれは一瞬で、遙か後方へとその痕跡は消えていく。
世の中はいつだって弱者に対して不条理を迫ってくる。すでに炎の遊覧は壊滅状態。今や生き残っているのは、リーダーのアスラただ一人だった。恐るべきうねりはすべてを飲み込む、不条理のその一端…そのはずだった。
「はあああああああっ!」
剣閃がひらめき、アスラのすぐ後ろにまで迫っていた魔物の波をかき消した。いや、アスラのすぐ後ろだけどころか、広範囲を覆っていた黒いうねりをいともたやすく消し飛ばしてしまった。その剣を振るった人影は、力強く剣を天に掲げた。
「はーっはっはっはっはぁーっ!私が来たからにはもう安心だ!」
獰猛な笑みを浮かべ、その人影は肩に剣を担いだ。そして、鋭い眼光が未だ途切れぬうごめきを捉えた。
うわぁ…ミシェンナめっちゃ楽しそー…
街からも防衛のためであろう人影が見え始めた頃、ミシェンナが先陣を切った。やはりその破壊力は桁違いで、かつて見た爆弾実験を彷彿とさせる土埃が舞い上がる。
が、それも次の一太刀で全て切り払われ、後には死屍累々とした光景だけが広がっていた。
『これはまた…随分と食いでがある!』
ミシェンナの興奮気味な雄叫びが空気を揺らす。
ちなみに俺は、上空でお留守番だ。なぜかと言われると、今までに魔族の手引きによるそれも、多くはないが起こっているからだ。
そんなことをしても俺には一切のメリットがないどころかデメリットだらけだからするはずもないが、人間たちはそう思わないだろう。と言うか、俺の住んでる森から出てきた時点で関係が疑われてもおかしくはない。
「事態をややこしくしないためにも、これがいちば「見つけましたよ!」」
ギギギ…と音が鳴りそうなほどぎこちなく、俺は振り向いた。
「覚えのある魔力だったのでまさかとは思いましたが…今日こそ、あなたを打ち滅ぼして、平和に一歩近づくのです」
「まて、まてまてまてまて、ウェイトウェイト。ほーら、ちょーっと落ち着こ、な!俺別にあれの原因じゃないし」
「では、なぜこんな場所で物見遊山に興じているのですか?」
良かった、まだこの前よりは理性的だ…!
「そりゃ、家の周りをあんなのが通り過ぎて気にならんほうがおかしいだろ!」
「………ごもっともです」
…話はわかる方なのか?魔族撲滅は第一にしているとして、その前に常識が優先するのだろうか?
「では…この事態の原因ではない貴様に頼があります…癪ですが」
「…一応聞いてやる」
「はい、恐るべきうねりの終息に協力しなさい」
まあ、上空から見ているだけとは言ったが、もとより協力するつもりだった。もちろん表立ってやるわけではなく、ミシェンナをサポートすることでの協力だ。実際、今のミシェンナには、俺が作り出した魔剣『パラディン』がある。
それが『自分で戦ってもいいよ』と言うもっとも手っ取り早い支援方法を解禁されたわけだ。もちろん、裏の意味とか、腹の探り合いも兼ねてるんだろうが、そう言うことに関して俺はてんでダメなのだ。
「わかった。ただし、今回のことが終わったあと、無事に返してくれよ!約束だからな、これ!」
「ええ、構いません」
聖女はあくまで教えに忠実だった。
「よし、いくか!」
「ええ。今回だけです…協力は」
俺と聖女は、自由落下を始めた。
ズドンッ!
暴れ回るミシェンナのすぐ後ろに、俺は着地た。ウルトラマンガ◯アの如き豪快な着地。うん、決まった。
「む?ショウゴ!出てきても良かったのか?」
蹂躙の最中だと言うのに、余裕綽々で振り返り、ミシェンナが問うてきた。
「いや、出るつもりはなかったんだけど、聖女サマに見つかって…」
「…なんと言うか…その、災難だったな」
「わかる?」
「ああ。聖女は非常に面倒だ。っと、そろそろ手伝ってくれないか?そのために来たんだろ?」
おう、と返事をし、俺は全身に魔力を込める。分かったことがある。俺の体質についてのことなのだが、あらゆる魔力との親和性が非常に高いのだ。故に…こうして自然に介在する魔力を取り込み込めるだけで…
「だあっ!」
身体能力が何十倍にも跳ね上がる。
拳が空気を裂き、目の前の魔物の大群へと迫る。そして…直線上にいた魔物が消し飛んだ。
「ほう、なかなかやるな!私との手合わせで腕を上げたな?」
「本当は隠しておきたかったけど、な!」
今度は回し蹴りを叩き込み、扇状に消し飛ばす。その数撃で、魔物の勢いが格段に落ちた。
「美味しいところを持って行かれた…ならば私も張り切らねばなるまい!」
パラディンを大上段に構え、ミシェンナが大きく息を吸った。次の刹那、赤くたぎる闘志が、ミシェンナに宿った。
話の展開に迷うし、読みやすさも追求したいし…
なるべく気持ち悪くならないように創作していきます




