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神聖祓魔師 二つの世界の二人のエクソシスト  作者: ウィンフリート
平行世界へ
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第63節 スタンピード その2

恐れていたことが起きてしまいました。


一体どうなるのでしょう。

ハインリヒの大広間は、歩く死体でいっぱいだ。皆んなぎこちない動きでウロウロしている。何人いるのだろう。早く動けるものはいないようだ。一先ず安心だね。


カールさんが後ろに戻ろうという合図をした。後衛から後退りして、少しずつ下がっていく。気付かれたみたいだ。4、5人がゆっくりとこちらに歩いてくる。僕らは大広間と坑道の接続部で盾を地面に刺して、その隙間にクラウディアさんを配置した。


つまり、坑道に盾の扉を付けて、少し隙間を作ったかんじだ。カールさんが目でクラウディアさんに合図した。彼女は矢をつがえ、歩く死体を狙い、矢を放った。


カールさんが、「アレクシス、ジャベリンを持ってきてくれ。それに火矢があればもらってくれ、あと、背後からの敵に注意してくれ」

「わかった。オットー様にも伝える。あと鉱山口の矢狭間での防衛ラインまでの退却もありうることを言っておく。数は、約いくつだろう。300はいたよな?」

「うむ。それでいい。頼んだぞ」

アレクシスさんが走り出した。

「クラウディア、矢の残り本数は?」

「あと15本しかないわ」

「足りないよなぁ」カールさんが苦笑した。

「何か飛び道具が欲しいわね。こんなにいるなんて思わないわよね」

「これは、さっきの話の通りだな。転移門で送り込まれてるのだろう」

「次がくるぞ」盾職の二人が同時に言った。シンクロしてるね。


クラウディアさんは、また、二つの盾の隙間から矢を放った。腕がいいね。全て頭に当たってる。既に死んでるのに、更に倒すのには何が有効だかわからないけど、流石に頭を撃たれると倒れて動かなくなるようだ。


「次の一波。今度は多い。九人だ」

「はいよー、これで矢も尽きるわ」

「まずいな、かなりの奴がこっちに気付いたようだ。どんどん向かってくる。カールさん、どうする?」こんなに長く話した二人は見たことがなかったので、僕は驚いた。

「よし、矢が尽きたら、防衛ラインを下げたい。火矢が来たら、沢山倒れてるところに火矢を打って、もし、燃えてくれたら、ディフンスラインになるかもな。お、アレクシスが来たみたいだ。すげぇ音だな」坑道の後ろの方から、ガラガラと音が近づいてくる。僕らの10メートルぐらい前で止まり、火矢だけを持ってアレクシスさんが歩いてきた。

「はいよ。火矢。あと、油ね。それと、ジャベリンラックにろうそくを灯してきたから、火をつける時は、あっちでつけてくれ。あと、矢は、40本しかもらえなかった。矢狭間にストックしてあるから、下ろすのが大変なのと、鉱山口の防衛ラインを強化するらしい。城からアーチャーを呼んだらしい」アレクシスさんが早口で言っている間に、クラウディアさんが火矢に火をつけていた。

「アレクシスありがとう。火矢の次は、ジャベリンを頼む。撃ち尽くしたら、防衛ラインを下げよう」

「応!」

クラウディアさんが、火矢をはなった。さっき倒した、死体の山に火矢は刺さったが、ぼっとは、燃えなかった。でも服とかが、少しずつ燃え出しているようだ。

「カール、火のせいで、俺たちも苦しくなることはないよな?」

「うむ。このハインリヒの大広間の天井には、大きな空気抜きの穴があるんだよ。火を燃やすと煙がそこに上がっていって、周囲の坑道から風が吹き込んでくるんだ」

「なんだ、実験済みか」アレクシスさんが少しホッとしてる。

「いや、前に、肉を焼いたことがあってな。肉の匂いがが意外と広がらないんだ」

皆んな複雑な表情をした。死体を焼く匂いは、嗅ぎたくないものね。


「アレクシス、出番よ」クラウディアが側を通りながら、言った。矢筒を後ろに取りに来た。

「応!任しとけ」いつのまにか、ジャベリンの入ったラックを傍らに置いたアレクシスが、ジャベリンを構えている。

「じゃ、打つぜ」

「頼む」オットーさんが応えた。

「よし、うぉりゃー」アレクシスさんが投げたジャベリンは、すぐ近くまで来ていた、歩く死体の首下に当たった。バランスを崩して倒れた死体は、そのまま動かなくなった。それから、どんどんジャベリンを投げた。

「しかし、減らねえぞ」

「でも火が大きくなってきたから、防衛ラインとしては効いてきたみたいね」

アポロニアさんが久しぶりに喋った。さっきからお祈りをしていたから、話しかけないようにしてたんだけどね。なにしろ、戦ってないのは、僕とアポロニアさんだけだからね。二人とも最後衛だし。まぁ僕は数に入ってないけどね。


「じゃ、ラインを下げよう。コンラート、クレメンス、5メートル下げようか。全員後退りで下がるぞ」

僕らはずりずりと下がっていった。また盾の扉を作ってブロックラインを作った。死体の山を乗り越えて、歩く死体が坑道に入ってこようとしている。それを、アレクシスさんと、クラウディアさんが交互に攻撃して倒している。そのうち矢もジャベリンも尽きてしまったが、一向に攻めてくる死体の数は減らない。


僕たちは、少しずつ下がりながら、盾の隙間から、剣で刺して、歩く死体の小山ができると、ブロックラインを少し下げるを繰り返していた。

「これは、頭がおかしくなるよな」アレクシスさんがボソッと言った。全員が頷いた。しかし手を休めることなく、作業を続けていった。そして、いよいよ、坑道の分岐点にきてしまった。

鉱山口からハインリヒの大広間までは、まっすぐ一本の道ではない。この分岐点迄は一本だが、ここは5差路で、二本が鉱山口への上りと下り、ハインリヒの大広間に向かって左が下方への道で、右が上方への道、そして正面がハインリヒの大広間への道だ。僕らは正面の道を盾を使い、歩く死体の前進をブロックしながら後退してきた。

しかし、この後はもう同じ戦法がとれないのだ。全体の戦略上は、鉱山口への敵の侵攻を防がなければならないが、その為には二手に分かれないとならない。二手に分かれると盾を使ったブロックラインは維持できない。

「カール、どうする?」アレクシスが聞いた。

「仕方ない。撤退しよう。コンラートとクレメンス、そして俺の二チームに分かれて、盾を構えて、ゆっくりと後ろ向きに戻ってくれ、戦闘しなくてよいからな。転ばないことが一番大事だ。他は鉱山口に戻り、最終防衛ラインで戦ってくれと伝えてくれ」

「分かったが、カール、一人は危険だ、俺がカールと一緒に行く」

「アレクシス」

アレクシスさんは、ニヤリと笑った。

「じゃ、君達はさっさと戻ってね」アレクシスさんが女性二人と僕に言った。

「もう、美味しいとこ、取らないでよ」クラウディアが言った。


それから、僕らは、鉱山口まで走り、オットー様にこれまでの事情を告げた。


砦も、鉱山街も、ゴブリンの襲撃を受けており、城壁をよじ登ってくるゴブリンを叩き落とすことに四苦八苦していたようだ。バイエルンのメンバーも他の応援に取られていて、鉱山口には、オットー様だけが残っていた。

「やはり、総合的な攻撃だったな。よくやってくれた。恐らく鉱山口から大量に歩く死体を侵入させ、混乱に乗じて城壁を超えるつもりだったのだろう。まぁ、城壁は持ちこたえたから、後はここだけだな。カール達が戻ったら、鉄格子で、歩く死体を防ごう」

カール達がすぐに合流した。オットー様はカール達を労い、すぐに作戦を説明して、行動に移した。作戦という程のものではないが、矢狭間のある二階に上るドアは鍵をかけ、中には誰も配置しない。全員が鉄格子の吊りドアと、二つの小さな鉄格子ドアの前で待機し、歩く死体を鉄格子の隙間から刺すだけというものだ。

引きずるような足音が聞こえてきた。沢山の足音だ。

「カール、後片付けを考えると、辛いんだが、どこから来たんだろうな?服装から何かわかったか?」

「申し訳ありません。そこまで気がまわりませんでした」

「あ、すまん。別にどうでもいいことだ」

次から次へと、歩く死体がやってきた。鉄格子ドアや、吊り鉄格子の門に阻まれて、こちらに来れないまま、格子の四角い穴から手を伸ばして僕らを掴もうとしている。そこをパイクで刺しながら後ろに倒すようにしている。鉄格子前は大渋滞だ。倒れた死体の上を、歩いて鉄格子に捕まる。そして倒される。沢山積み重なって、もうドアの方は通行止になった。すると、皆吊り鉄格子に殺到するので、鉄格子が変な音を出し始めた。

「これはそろそろ限界かもしれんぞ。下敷きになるとまずいので、ここを放棄して、次の吊り鉄格子で迎え撃つことにしよう。ドアを二重で設計した人に感謝だな」オットー様が感慨深げに話した。僕らは、二階や三階の人が避難しているのを確認して、鉱山口の外側に移った。

「少し休憩しよう。ここが破られても、鉱山街に渡る橋が吊り橋だから、なんとかなるぞ」

カールさんは、鉱山口を設計した人の慧眼に感心していた。

「オットー様、ここを設計したのは誰なのですか?」

「なんでも、枢機卿様のひとりらしいぞ」

皆んな感心していた。


「そろそろ、吊り鉄格子が壊れるぞ。総員、配置につけ」

メキメキという音がし、鉄格子が滑るレールを留めているボルトが弾けた。下から弾けていき、最後には全て取れてしまったため、死体達が雪崩のように崩れて、鉱山口のホールが、歩く死体と、倒れた死体でいっぱいになった。また、同じことの繰り返しかと思い、うんざりしていると、少ししてから動きが止まった。

「もしかして止まったか?おお、夜が明けるぞ」

僕らは後ろ、東側を振り返った。空が明るくなってきていた。


みんなで、街と砦の城壁を一周した。兵士達が城壁の上でへたり込んでいる。城壁の下には夥しいゴブリンの死体が転がっている。いくつものハシゴをかけて登ってきたようだ。城の城壁の上には、レオン様が立っていた。レオン様は、何も言わずに、ニコリと微笑んで僕らに合流し、城の城壁をぐるりと回ってから、正門のところで城壁が終わるので、そこから下におりて、第2門の横から鉱山街の北城壁に登って、そのまますすんでいった。こちらもすごい有様だ。街の城壁の方が低いので、ゴブリン達のメインターゲットだったようだ。城の南側の下にゴブリンが現れたのは陽動だったのかもしれないなと、レオン様が呟いた。


こちらでは兵士が何人か亡くなったようだ。中庭に下ろされて、手を胸の前に組まされている。その隣には、ブルーノ神父様が静かに立っていた。


誰も声をかけられなかった。


オットー様がそっと横に立ち、亡くなった兵士達の為に手を合わせた。

ブルーノ神父様がボソッと呟いた。

「この規模の攻撃は、三回は持ちこたえられない。二回で犠牲者が出てしまったからな。公爵様に増員してもらわないと、また、死者が出るぞ」


僕は、悪魔の支配地に置かれている砦の真実に触れて、やりきれない気持ちに

最後までお読みいただきまして、ありがとうございました。


全員無事だといいのですが、それもまた変ですよね。

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