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神聖祓魔師 二つの世界の二人のエクソシスト  作者: ウィンフリート
平行世界へ
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第60節 石切り場と砦の明るい未来

なんだか、地獄の魔導師という新たな二つ名がついてしまいました。地獄から生還した魔導師なんですが、省略されてしまいましたね。意味がすごく変わると思いますけど・・・


石切り場は、すり鉢のような構造で、下りるために、斜面にらせん状の道路が作られています。大攻勢後、砦や鉱山街を作るのに石が必要になり、作られたそうです。


砦や鉱山街のほうでは、シャルロッテ様が来て、砦に予算が加算され、改造工事が始まるようです。

それから、親方達は、石の検証に入った。あちこちハンマーで叩いたり、ノミを使って石を割ったりしていた。おおむね満足そうな顔だった。


「どうだ。いけそうか?」オットー様が親方に訊いた。

「はい、いいんじゃねぇかなと思います・・・あとは、地獄の魔導師様次第ですぜ」

「それは、どういう意味か?」

「はい、実際にその辺の石を浮かしてみていただけますか?それを運んでみたいんですわ」

「悪者君、いや、地獄の魔導師様。ちょっと浮かしてみてくだされ」オットー様口調が変ですよ。


「僕は身近にあった大きな石に浮遊を掛けた。そして、押してみせた。大きな石が音もなく浮き上がり、スゥっと軽く動きだした。

「あががががが・・・」親方達の顎がまた外れそうだ。どうやら、傍にある小さな、といっても羊ぐらいの大きさの石を浮かすと思っていたらしい。

 僕は、別の大石を浮かしてしまったらしい。よく見ると高さ5メートルぐらいはあるようだ。親方の息子グスタフが、喜んで、石を押し始めた。


「すげぇ、とうちゃ、いや、親方。俺でも動かせるぜ」


 グスタフは、どんどん石を押して、石切り場を崖の上まで上る、のらせん状の道へ押していった。あれよあれよという間に、崖の上まで押して登ってしまった。大きな石はまだプカプカと浮いている。


「オットー様、私は、石工だけに頭が固いので、魔法なんてものは、悪魔の仕業と思ってました。

 しかし、地獄から生還された魔導師様からは、なんの邪念も感じられません。うちの愚息は、ガキで頭が弱いのですが、素直に魔法を受け入れています。いつか、うちの教会の神父様が仰ってました。それが神から来たものなのか、悪魔から来たものなのか、見分けるのは、結果をみればよいってね。今のところ、いい結果ではないですかい?」

 親方は妙に真面目に話している。

「そうだな。実際に、地獄の魔導師様が、砦にきてからというもの、すべてが好転してきておる。そういった意味では、結果として、悪者君は、砦に善をもたらしているのだと思う」

 オットー様が神妙な感じで話した。


 グスタフが崖の上から、らせん状の道路をぐるっとまわって走ってくる。


 僕たちの前に、息を切らせながら、戻ってきて、言った。

「すげぇや、魔導師様・・・俺ら見習いはすげぇ助かりますぜい・・・」

 石を運んだりとかは、下働きも見習いの仕事だったのだろう。グスタフは嬉しそうだ。そのまま言葉をつづけた。

「おれら、見習いは、今回は何人か魔物に襲われて死んじゃうじゃないかって思ってたんです。

 見習い達のおっかさんたちからは、色々と頼まれていて、なんとか、生きて返してくれってね。これで死んだら、殉教扱いで、天国が約束されるだろうけど、子供と別れるぐらいなら、地獄で子供と一緒のほうがいいってね。将来ぼっちゃんは親方になるんだから、そこんとこお願いしますって・・・」

「なんだ、それ、誰のおっかぁが、言ったんだ・・・」親方が怒っている。


「誰でもいいじゃねぇか、親方?その気持ちは全員のおっかぁ、いや、おっかぁだけじゃね。皆思っていら・・・だから、地獄の魔道師様が術を掛けてくれるなら、見習いは俺一人でもいい」

「グスタフ!」親方が悲痛な声を出してオットー様を見た。


「まぁ、今回の作業中に関しては、護衛も付くし、万全の注意を払うことを約束する。カール達も、最善を尽くしてくれるはずだ」といって、カールに話を振った。

「親方、この間も、悪者君、いや地獄の魔導師を欠いてでさえ、峠から戦って生還したのだから、安心して任せてほしい」

 親方は、驚いている。しかし、言葉通りの意味合いにとったようで、カール達の武人としての能力を高く評価したようだ。そしてこういった。

「ま、当初は、公爵様から結界馬車をお借りして、石を運べやという話だったので、どれだけ時間がかかるのか不安だったのですが、大丈夫でしょう。あとで、工具をこちらに運びたいので、魔導師様にお願いしたいです」

「うむ分かった。地獄の魔導師殿、お願いする」オットー様調子がいい。

 僕は、うんと頷くしかなかった。


 一旦、浮かしたままの大石を押しながら、砦まで戻った。大石は、砦の城壁の外、北側に仮置きすることにした。砦の城壁は大騒ぎになっていた。遠くから見ると、石だけが動いているように見えたからだ。


 第2門から中に入り、今度は内部の打合せをすることになった。


 鉱山口と鉱山街は、橋で繋がっている。この橋は、鉱山街側から鎖で引き上げることができる橋だ。よくお堀がある、お城の入り口にあるやつだ。

 何故橋があるかというと、鉱山口と鉱山街の間には、小さな渓谷があるからだ。とはいっても10メートルぐらいしか高さがない。鉱山口からは、階段があって川まで降りられるようになっている。誰も下りないが・・・というのも、砦の汚い水が、この川に流されているのを皆知っているからだ。

 この前、荷車を探しにいったときに渡った川が、おそらくこの川だと思う。


 今、そんな話をオットー様が親方達に話している。オットー様のプランでは、この鉱山街側の渓谷に沿って、城壁を継ぎ足し、50メートルほど長くしたいらしい。それから、今ある北側の城壁と平行に新しく城壁を作り、200メートルほど伸ばして、最後は曲げて第2門の先に繋ぎたいとのこと。

 つまり、第2門の先にもう一つ門をつくることになる。第3門の誕生だ。


 城壁は、今ある鉱山街の北城壁よりすこし低くするらしい。そして、今ある北城壁に沿って石を積んで、家を作りたいらしい。兵士達の家族宿舎として最初は使うらしい。あと、今北東の角にある、パン焼き小屋を北城壁の外側に移設して、大きくしたいとか話してた。


 親方達は、砦の既存の城壁をあちこち見て回り、計画を練っている。切り出す石の量とか、どこに一旦加工場を作ってなんて言葉が聴こえる。そして、お昼の鐘がなった。


 石工さん達は、宿屋に泊るらしく、そちらにチェックインしつつ、お昼ご飯を食べるらしい。ぼくとカールさん達は、第2門前に、ぽつんと残された。するとアーデルハイトがやってきた。


「皆さん、悪者君も、明けの明星亭で、お食事の準備ができましたよ。さぁ、来てくださいね」


 僕は嬉しかった・・・あ、クリスタ、忘れてたよ・・・


「アーデルハイト、僕、クリスタ迎えにいってくるよ」

「あ、もうテーブルに座っているわよ。兵士さんが呼びにきてくれたらしいよ」

 さすが、オットー様だなぁ。こういうところを学ばないとね。カールさんもそう思っているらしい。しきりに、さすがだとか言ってる。舎弟オーラすごいよ・・・


 お昼ご飯は、魔物肉だった。この前ゴブリン達が乗ってた魔物猪の肉だって・・・カールさん達が、拾ったんだって。アレクシスさんが、ゴブリンに襲われた話をしてくれた。食べているときはやめてほしいよ。でも、豚肉と同じだったな。やはり、猪が変化したのかもね。


 クリスタも一生懸命肉を齧ってる。途中で、なんかよく焼けてなかったらしくて、どうしようとか言ってる。僕は、女将さんにいって、すこし焼いてもらったらと言ったんだけど、すぐに食べたいらしい。

「お父さんに持って帰るの?」

「ううん、お父さんの分は、お持ち帰りを準備してもらったんだ。うーん、生焼き苦手なの・・・だって豚肉は気を付けないと寄生虫とかいるらしいじゃない?」


 クリスタはお皿をもって、焼いてもらってくるといって。席を立った。あれ、違うよ、そっち客室、厨房は逆だよ・・・まぁ、行き止まりですぐ階段だから気づいて戻ってくるからいいか。

 クリスタは、客室へ続く廊下から、すぐに戻ってきて、テーブルについた。あれ、肉が焼けてる・・・どうやって焼いたのかな・・・この時、彼女の能力に気づいておけばよかったのだけど。


 食べ終わってから、アレクシスさんが更に僕をからかうために、酷いことをいって、クラウディアさんに怒られていた。


 なにかって?あの時、ゴブリンの肉も一緒に拾ったんだって・・・今日、僕が食べていたのだけ、ゴブリン肉だったとかいうんだ。きもいよ。本当、アレクシスさんは子供だね。


 食後、今度は、砦の城部分での打合せが続いた。2期工事ということで、お城部分を補強とか改築とかするらしい。

 砦の城部分と、鉱山街は、幅の広い立派な石の橋で繋がっている。この橋のアーチの下を街道が通っているのだけど、道路を付け替えてしまうとか言っている。つまり、街道部分をつぶして、そこに城を拡張するらしい。道路は今の城部分を迂回するようにぐるりと回るようにするらしい。

 この工事は、鉱山街の北城壁側の工事が終わってからとりかかるとかで、まだ先の話だ。どうやら橋の下に作られるのは、兵士の家族寮のようだ。


 さらに、南側にも拡大計画があるらしい。下の丘陵地帯に小麦畑を作り、それを城壁で囲もうとしているとか。これは、一応、帝国側で受け入れてもらえる予定の、例の森の中で奴隷として魔物に使役されていた人たちが、受け入れてもらえない場合だそうだ。

 お金は帝国から出るようだけど・・・これには、レオン様が激しく同意しているとか。大麦も同時栽培とか、エール醸造工場も同時併設とか主張しているらしい。でも、オットー様も賛成している。これが実現すると、帝国からの輸入が減るので、砦全体の経済はよくなるとか。なんか、レオン様、エール醸造工場責任者に立候補しそうだな・・・



 カールさん達は、砦や鉱山街の明るい未来を聴いて、わくわくしているようだ。クラウディアさんは、弓の練習場にするといいんじゃないとか、カールさんは、馬の練習場で自分が乗馬の訓練ができたらいいなとかいっているし、アポロニアさんは、今の砦に必要なのは教会と修道院だ。絶対欲しいとか、皆好き勝手なことをしゃべっている。皆、知らないのかな・・・今回の増築は、シャルロッテ様の馬のお稽古のためだって・・・ま、カールさんも馬がもらえればいいのだけど・・・餌代だってすごいかかるらしいからね。


 石工さん達は、一泊して、道具や人足を整えてから、またすぐ来るといって帰っていった。塩砦のあたりは、冬は雪に閉ざされてしまうので、工事ができるのは11月ぐらいまでらしい。

 となると、石工さん達がいる間は、ご飯の心配しなくていいんだ。問題は冬か・・・厳しいよね。

お読みいただいてありがとうございました。


話の枝が広がりすぎるようです。ドミニク神父様のエピソードは、別の小説として分けたほうがいいでしょうか・・・悩むところです。


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