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神聖祓魔師 二つの世界の二人のエクソシスト  作者: ウィンフリート
平行世界へ
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第57節 荷車回収 その2

いよいよ、荷車が放置された場所についたようです。

オットー様たちは、馬から降りて探しにいくようです。


 「では、私、レオン卿、少年で検分する。一同臨戦態勢で待機。警戒を怠らぬように。ブルーノ神父様、我らに祝福をお願いします」


 「あい、わかった。全能の神なる父よ、われらに祝福を与え給へ。あなたの翼の陰に隠れることができますように」神父様は全員にむけて十字を切った。

 なんか体が軽くなって調子がよくなったような気がする。アポロニアが驚いてぶつぶつ言っている。そう、自分のものと比べ、格が違う祝福の力に驚いている。


 オットー様が声をかけると、少年は御者台から出て、峠の道におりたった。


 「よし、わしとレオンで。そちを護衛する。ザクセンの戦士たちよ、援護を頼む」


 全員、臨戦体制になった。オットー様はすごいよ。カリスマあるよね。オットー様がザクセンの戦士たちよって言っただけで、みんなの顔付が変わったもの・・・これが上に立つ人なんだな・・・


 アレクシスさんは、投げ槍を構えてる。彼は、今日はジャベリンを沢山積んできたようだ。矢筒が大きくなったような入れ物に、たくさんのジャベリンが搭載されている。

 クラウディアさんは矢をつがえている。クラウディアは、腰の矢筒以外はないようだ。

 ブルーノ神父様は聖水撒きを構えた。神父様、それデッカ! でかすぎませんか?・・・聖水を撒くのではなく、血をまき散らすやつでしょ?

 アポロニアはロザリオを構えている。単なる数珠と侮るなかれ、悪魔が一番嫌うのがロザリオなのだって・・・聖母様に悪魔は勝つことができない。聖母様は、実は宇宙最強なのかもしれないよね。なにしろ全天使を従えた天の軍勢を率いることができるから。天の万軍だよ・・・想像できないよね・・・


 盾の二人とカールさんは抜刀した。


 なんか、カールさんがぶつぶつ言ってるよ・・・「俺が一番弱い感じがする。もっと修行しないとな・・・」あら、気にしすぎだよね。


 騎士レオン様は下馬した後、運動不足たったようで、体のあちこちを伸ばしたあと、ぶるんと長い柄の斧を振った。え、ここまで衝撃を感じるぞ。恐ろしい人だよね。


 カールさんが言ってたけど、恐らく一人でノルマン人の部隊を、もちろん船一艘分という意味だけど、全滅させるぐらいの力があるんじゃないか・・・あの斧の前に盾もヘルムも意味をなさない。戦舟さえ真っ二つかもな・・・って。

 なんであんなポールアームみたいな戦斧が片手で操れるんだろう・・・あら、カールさん、更に情けない顔になってきたよ。ああ、そうか、本当はついて行きたかったのね・・・


 以前の時、活躍できなかったころを相当気に病んでいたみたいだからね。戦士の人の気持ちはわからないよ。


 さて、僕たちは三人は大曲がりに近づいていった。荷車が突っ込んだと思われる低木が大きくひしゃげてしまっている・・・でも荷車は無かった。カール様が屈んで何かを拾いあげた。避けた木片とロープだった。


 「レオン、これは?なんだとみる?」

 「おい、下らぬことを聴くな。結界馬車の後ろのステップだろう・・・ロープはどうだ?どれ、見せてみろ・・・うん、人が使っているものだな」


 「荷車はどこにいったのだろう?」

 「何者かが持ち去ったな。しかも複数で担いだようだ」


 オットー様が手斧と盾を構えて茂みに入っていった。「レオン、来てくれ」すこし遅れてレオン様が入っていった。時間差で動くのは、襲撃を警戒してだ。同時に襲撃されるのを防ぐらしい。


 そこには、複数の人達が、踏み荒らしたように、草が倒されており、すこし離れた土の上に大きな足跡が残されていた。レオン様が呟く。「これは人間ではないか?大きいのはオーガかもしれぬな」


 このあたりの森は深くない。もともと針葉樹林の森は下草が生えないからだ。

 また、道路の普請の際に見通しをよくするために、木を間引く。間引いた木は貴重で、砦や街の補強材料や住宅の補修に使われる。かなり奥のほうまで、森の中が見渡せていた


・・・


 藪から出てきた二人は、少年を伴い、荷馬車にやってきた。

 そして、馬車の前方で、ブルーノ神父様と相談を始めた。従者も天蓋をあけて聞き耳を立てている。

 こういう従者の立ち振る舞いにカールは感銘を受けていた。やはり、できる若者はいいな。うちの連中もできるが・・・

 父から学ぶことがあまりできなかったカールにとっては、従者の仕草等すべてが勉強対象だった。主に仕えるということに関しては、誰も教えてくれなかった。騎士になるには、従者を経ることが必須だが、若くない彼にはもう機会がない。でも諦めず吸収できることは学びたいのだ。

 

 突然、レオン様が話を振ってきた。


 「カール、おぬしはどう思う?」


 カールは、レオン様から意見を求められた。これから隊を2分し、荷車の捜索をするというのだ。カールはなんとなく嬉しかった。意見を求められるということにだ。


 オットー様が深刻な顔で口を開いた。「聞いてくれ。荷車を持ち去ったものがいる。しかも運んでだ。恐らく8人の人間だ」


 「え、そんなにいるのですか?こんな人が住めない魔物の地に?」

 「しかもだ、君にもあとで見てほしいが、人は最低で8人はいるだろう、しかも足かせと鎖をつけられている。裸足だ。これの意味するところはわかるだろう?


 そして、大きなもう一つの足跡がある・・・おそらくオーガだろう。裸足の大きさで判断するに、身長2メールはあるだろう」カールは少しビビった。


 でかいオーガは当然リーチも長い。武器をもっている場合は、クレメンスとコンラートの盾を超えて強烈な一撃を放ってくるだろう。その時に二人が盾で弾けばなんとかなるかも・・・オーガが二人のシールドバハッシュで倒れてくれればラッキーなのだが・・・カールは考えてから言った。


 「8人の人間が奴隷として、オーガに使役されているということですね」

 その答えに、オットー様は軽く微笑んだ。「その通りだろう。こういう時、我らザクセン戦士とすればどうすべきなのか?」そんなことを聴かれると思っていなかったが、カールは即答した。

 我らザクセン戦士と言われて、カールの血が騒いだのだ。


 「オットー様、ザクセン戦士なら救出に向かいます」


 オットー様がふっと笑った。「カール、おぬしはワシの見込んだ通りの男だな。わかり易くてよい。だが、すまぬ、帰還を命じる。帰りの馬車隊を率いてくれないか。


 全員で追跡などできぬ。しかし、ここに残す者を危険にさらすことはできぬ。一旦、全員を率いて砦に戻ってほしい。なぜなら、少年は我らとともにいくからだ。聖結界がそちらには効かぬと思う。

 行くよりも、帰るほうが危険だと思う。ただ、砦の手前の丘陵地帯は、飛行タイプ以外は比較的魔物が出ない。弓使いがいれば多分いけるはずだ。私とレオンの馬も連れて帰ってくれ。馬車は4頭引きにできるからな。スピードが増すぞ。ワシの従者に命じてくれ」

 カールは肝心な命令が足りないことに気づいた。

 「しかしそれでは帰りはどうするのですか?」

 「9時課までには捜索を打ち切り戻るつもりだ。一旦そちは砦に戻り、ワシとレオンの従者を連れて丘陵地の途中まで迎えにきてくれ。頼んだぞ」


 「荷車は放棄されるのですか?」流石に運んでこれないだろう・・・

 「いや、まずは偵察だ。取り返すつもりだが、今回は様子見だ」

 「わかりました。仰せのままに」

 「ありがとう。カール、頼りにしているぞ」

 「有難き幸せ」


 カールは戦士でもあるが、リーダーでもある。オットー様の決断と方針は理解できる。そして自分ができる最大限の貢献も理解できる。できれば一緒に森の中に行きたいが・・・

 それを飲み込んだカールはザクセンの血を濃く受け継ぐ戦士ではあるが、組織に属する兵士にもなれるのだ。


 「オットー様。では準備致します」

 「うむ。頼む」


 レオン様が口をはさんだ。

 「無事に帰れたら、宴会だな!」


 カールは、レオン様が、愛用の大きなジョッキを持っている姿を思い出し、ニヤリと笑った。やはり、ザクセン人はエールと戦だ。(エールはホップを用いていない当時のビールのこと)


 それから、従者が馬車を転回させようと四苦八苦していた。大曲りのところは多少傾斜もゆるく、広さもあるので、転回できた。直線坂道のところで、緊急撤退しなければならない時にどうすればいいのか、考えておく必要があるなとカールは思った。


 なんとか転回できたところで、従者は、追加の4頭立ての馬具を収納から出してきて追加した。オットー様、レオン様が各自の馬を連れてきて、馬具を取り付けた。


 それから、残るオットー様たち3人と、少年が一列にならんで、見送ってくれた。


 クラウディアによると、最後の大曲りまで、4人は手を振ってくれていたそうだ。


 大曲りを曲がって、それから丘陵地に出る角を曲がる。天気は申し分ない。ここまで無事に来れてカールは、ほっとした。後ろから背中を暖めてくれる日差しも心地よい。馬の体力を温存するため、常足なみあしだ。丘陵地も中間地点ぐらいまでは何事もなく移動できたが、中間地点を過ぎてすぐにクラウディアが警報を出した。


 「南西より何か近づいている!」


 カール達は全員が左後ろを振り返った。クラウディアが文句をいった。

 「全員見ないで、だれか前や右を見て!」


 いつも狭いところで戦っているものだから、いかんな。全員、クラウディアの意図を理解した。


 「南西よりゴブリンの群れ。イノシシのような魔物に騎乗している。数18?」

 「よし引き寄せてから回転刃を動かそう。クラウディア、弓でいけそうか?」

 「いや、難しいかも。それより北東の空を見て」


 まいった。使い魔だろうか。黒い人型の魔物が4羽ほど飛んできている。なんてことだ。来る時は何もいなかったのに、こんなに来るとは・・・少年の聖結界がないということは、こういうことなのか・・・

 カールは指示した。

 「クラウディア、飛行しているほうを頼む。アレクシス、もう回転刃を使おう。御者に駆け足で走るように頼むぞ、バランスをくずさないように」カールは、御者台の天蓋を叩き、魔物が2群れ襲ってきていることを話し、駆け足にするよう指示した」


 鞭の音が何回かし、急に馬車はスピードを上げた。アレクシスが、回転刃のレバーを引いた。回転刃が車輪に吸い付くように嵌り、空気を切り裂く音が始まった。


 クラウディアは矢の在庫の本数を確かめ、まず飛んでくるほうを狙った。100メールは切っただろうか。クラウディアの弓は複合弓のショートボウだ。速射能力が高い。次から次への一気に4羽の羽を射ぬき、使い魔のような黒い生き物は次々きりきり舞いながら落ちていった。落ちたが、死んではいないようで、地面に転がって、恐ろしい咆哮をあげている。アポロニアがいつのまにかブルーノ神父様の立っていたところに立って魔物を観察している。

 「あれはおそらくガーゴイルです。銀の矢でないと身体は貫けないかもしれませんね。蝙蝠のような翼の膜は弱いんですけど・・・クラウディア凄いわ」

 「えへへ、でしょ?さて今度はこっちね」


 クラウディアは振り返った。アレクシスが槍を構えて叫んだ。「カール、なるべくひきつけるんだろ?」「頼む、クラウディア、すこし間引きしてくれ」

 「はいよ~」

 クラウディアは矢をまた速射した。


 手始めにリーダーのような、一回り大きなゴブリンの頭を射抜くと、次々とゴブリンを射抜いた。イノシシも何頭か転び、またそれに他のゴブリンが巻き込まれて団子のように転がっていった。まだ、執拗に8頭が健在で、怒りに駆られて叫びながら10メートルぐらいまで近寄ってきている。


 「残り矢は2本よ」

 「わかった。残してくれ」傭兵達は、矢が尽きるまでは打たない。最後の最後に矢が無くてピンチにならないようにだ。


 「アレクシス、得意のあれを頼む」

 「待ってたぜ」アレクシスはニヤニヤして、罵詈雑言をゴブリンに投げつけ始めた。


 カール達はその言葉を脳内でスルーするようにしている。とにかく辛辣で汚い言葉なのだ。まともに聴けば、きっと体の調子が悪くなるような気がする。アポロニアが呟いた。

 「これって神様からの賜物なんでしょうけど、悪魔憑きが発する罵倒の言葉より酷くないですか?」と力なく笑っている。


 ゴブリンは人間の言葉が分かるものもいるようだが、アレクシスのスキルは、言葉の理解は関係なしに、悪意そのものが伝わるようで、残りのゴブリンがイノシシのうえで身悶えるように怒っている。

 一つしか持っていない石斧を投げつけるものもいる。石斧は風を切りながら戦闘馬車のあおりにあたってどこかに消えていった。彼はこのあと素手で戦うことに気づいていないのだろう・・・カールは脳みその少ないゴブリンを哀れに思った。


 ますますゴブリンの怒りに火が付いたようで、彼らは左右に分かれ、1メートルぐらいのところを並走しだした。挟み撃ちにして、乗り込もうという作戦のようだ。

 しかし、彼らの身長では、届かないと思うのだが・・・ゴブリン達がちょうど並びはじめたときに、カールは御者台の天街を叩いて合図した。すると馬車は左右に車体を振る蛇行運転を始めた。ゴブリンを乗せた魔物イノシシが回転刃の餌食となり、次々と肉片に変わっていった。ゴブリンも足を千切られて落ちていった。カールはもう一度天蓋を叩いた。馬車は蛇行をやめた。


 残りの数匹にアレクシスがジャベリンを投げる。次々と倒れていく。すぐに追走するゴブリンはいなくなった。左後ろを見たが、使い魔のような黒い魔物はいつの間にかいなくなっていた。カールは天蓋を叩いて、常足の指示をした。


 少しずつ馬車はスピードを緩めていく。アレクシスが回転刃を止めながら呟いた。「これに切り刻まれる奴らは可哀想だな。見ていて気分が悪くなってくるぜ」


 確かにそうだ・・・カールは思った・・・この馬車を攻める立場になった時にどうすればいいのだろう。まずは馬を射抜くか・・・この馬たちは顔と胸に鎧を付けられている。矢は当たらないか。とにかく馬車とは垂直方向に離れないと・・・しかし、横からの攻撃も難しいだろう。馬車から延びる馬具の棒に盾のように板が取り付けられているからだ。リーダーとして戦略を考えるのは義務だ。しかし、いい案がないぞ・・・


 砦に近づくと、城壁から歓声が上がっている。カール、カール、カールと言っているようだ。


 カールは誇らしい気持ちになった。しかし、街道から左に曲がり、第2門に近づくにつれて、カールという歓声の中に、エッチ、エッチ、エッチという声が聴こえることに気づいた。


 そ、そんなぁ・・・あ、アグネス様親衛隊と称している兵士たちだな・・・くそぉ・・・そのうち出世して、カール大帝のようになってだな・・・アグネス様と結ばれるんだ・・・まぁ無理だけどな。でも、カールは妄想していた・・・


 「あれ、クラウディアとアポロニア、俺のことを睨んでいませんか?」女の勘は怖いな・・・今の脳内映像を見られてしまったような気がする・・・やばいぜ・・・カールは青くなっていった。

お読みいただきましてありがとうございます。


カールは、いい戦士なんですが、残念なところがありますよね。


明日から2話連続で、続きをアップする予定です。

ご期待ください。

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