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神聖祓魔師 二つの世界の二人のエクソシスト  作者: ウィンフリート
平行世界へ
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第52節 策士 リウドルフィング家の女

隠さないで、正直に言うことが、一番だと思うのですが、つい、よりよい結果を求めてしまうのが人間なのでしょうか。でも、嘘から真のように、アグネスは解決策をひねり出すようですよ・・・

焦燥感に苛まれながら、アグネスは閃いた。


灰色の脳細胞がプツプツと音をたてて、高回転をしているのが分かった。


でも・・・悪知恵だった。アグネスは、鉱山から出てきたばかりの、悪者君とちびっ子を連行して、宿屋の納屋に監禁した。そして、急いで砦に戻り、アンナにシャルロッテが井戸の横で転んでドロドロのびちゃびちゃになったからといって、着替えの服を一式預かった。白いお姫様ドレスだ。アグネスがいつか着ていたやつを上下に詰めたようなやつだ。離れて暮らしながらも、二人を想う母の心を感じる仕立て品だった。


そのまま納屋に戻り、納屋のカギをあけ、嫌がる悪者君の服をはぎ取り、シャルロッテの服を着せた。しかもフリフリのスカートだ。そのままおかっぱ頭を三つ編みにして、頭に布をかぶせ、背負って砦に帰った。ちびっ子は放置した。


そして、なるべく大騒ぎした。大変、シャルロッテが転んでドロドロびちゃびちゃになって熱を出していると・・・ベッドに悪者君を寝かせ、お芝居をすることを頼んだ。


「アグネスさん、どういうことなのですか。なぜこんなことを」

「さっきは有無を言わせずごめんね。これはお芝居なの。賭けなのよ。これに勝てば、あなたに1週間分のご飯をご馳走するわ・・・お願い」

例のちびっ子クリスタの分もつけるというと、悪者君の目が輝いた。

「これはゲームなのよ。あなたも、うまくお芝居してね。いい?井戸の横で転んで、どろどろになって、怒られるから、納屋に隠れてたら具合が悪くなったのよ・・・わかった?」

こんな有無を言わせないアグネスさん、はじめてな僕は、ただ首を縦にふるしかできなかった。こういう時に空気を読まないと命がないのだよ・・・


ドアを後ろ手にバタンとしめると、厨房に手伝いにいっていたアンナが戻ってきた。どうだったのですか。お着換えと湯あみをしますというものだから、変な伝染病かもしれないから、誰も入れてはならぬ、アンナも極力入るなと頼んだ。それから汚れた服を取りにいくといって、明星亭で人に会うからご飯はいらないといって、納屋に引き返した。


そう、アグネスは納屋が怪しいと睨んでいた。納屋から出た形跡がないからなのだ。建物の間の細い路地を通らないと明星亭の裏庭には行けない。そこに井戸と納屋があるのだ。アグネスは明星亭の裏口から出入りしたが、路地を見るとぬかるんでいて、ドロドロだ。足跡が付くほどなのに、足跡がない。つまり、中庭が怪しいということだ。

納屋に戻ると、ちびっ子がなにか言いたげだ。この子は精神的な傷で口がきけなくなっているとベルタから以前聞いた。でも、必死になにかを言おうとしている。見ると床を叩いている。


アグネスはちびっ子が叩いているところを叩いてみた。そして、他の床も叩いてみた。音がそこだけ違う・・・もしや・・・散らばっている藁を急いでどけ、リヒトを唱えると、魔法で明るく照らされた床には、扉があった。


アグネスは扉を開けた。中は1メートル角ぐらいの物入れだった。すこしがっかりして扉を閉めようとすると、ちびっ子が耳に手をあてて何か言いたそうだ。耳を澄ますと、子供の声がする。物入れに降りてみると、なにかおかしい。横の壁を押すと、すうっと壁が引っ込んでいく。隠し扉だった。そこには下へ降りる石の階段がある。かなり古い階段のようだ。今度は子供の声が鮮明に聴こえてくる。「猫ちゃ~ん」と猫撫で声を出しているシャルロッテだ。

アグネスは、慎重に階段を下りていった。下まで降りると小さな部屋があった。そこにシャルロッテが床に座っていた。沢山の猫に囲まれて幸せそうだった。


「あら、お姉さま?」

アグネスは無言で妹を抱きしめた。

「心配したのよ・・・」今まで抑制していた感情が一気に涙となって溢れていくのをアグネスは止めることができなかった。普段は見せない姉の涙に動揺したシャルロッテは、弁明を始めた。


猫のシャルロッテと遊ぶうちに、シャルロッテが鳴くと、床下からも猫の鳴く声が聞こえることに気付いた。そして、アグネスと同じように、ここにたどり着いたのだが、リヒトが使えないシャルロッテは、帰ることができなかったのだ。

地下室の壁には横穴があり、小さい洞窟のようだった。城壁の外まではいけるらしい。しかし、鉄格子があり、人間は出ることができない。最初は横穴から差す光があったが、今はもう真っ暗に近い。不安だったが、猫の親子達が慰めてくれた。


シャルロッテを見ると、ドロドロだ。しめしめ、汚す手間が省けたと思った。私も悪者よね・・・さて、帰る方法を探さないと、階段を二人で上っていった。観察すると、わかりにくいところにレバーがあって、それを動かすと簡単にスライドしてもとの床下に戻れた。

「お姉さま、リヒト教えてくださいませ。私は切実に必要性を感じましたわ」

「そんなに?」

「猫ちゃんたちに会いにいくためですわ」アグネスは全く反省してないなと思った。でも女はそれぐらい強くないとやっていけないのも事実だ。


床の扉はあけられたままだった。ちびっ子はまだそこにいた。ちびっ子のお腹が大きな音を立てたのが聞こえた。今日の殊勲賞はこの子ね・・・報いなければ、女がすたるわ。

「さて、これから物語の大団円ね。その前にご飯食べましょう」


今度は、さっき剥がして投げ捨てていた悪者君の服をシャルロッテに着るように命じた。「どうして私がこのようなゲゲゲの下民服を着なければならないのですか。屈辱ですわ」とシャルロッテ嬢はかなり嫌がった。

「あれ・・・協力しないと、お父様に怒られちゃうし、アンナにはお小言言われちゃうし、しかもお母様に言いつけられて、話がもれちゃうかもよ・・・それに、子猫ちゃんをママ猫からもらえなくなるかも・・・」

シャルロッテの目が点になり、そのあと大きくなり輝きだした。現金なやつという言葉はこういう時に使うものだと思うぐらい、シャルロッテは豹変した。すっかりその気になって服を着こんでいる。

これからのシナリオを話すとさらに乗り気になり、協力すると誓っている。三つ編みをほどいて、お父様のようなゲルマン戦士風のボサボサな長髪にした。それはやり過ぎ。悪者君はボサボサにはしてないというと、持っていた櫛で梳きだした。


作戦通り、三人で明星亭に行き、個室で簡単な食事をした。女将さんが珍しがっていた。でも、悪者君の髪の毛伸びたねとか言っていたから、気づいていないわね。まさかすり替わっているとは思わないでしょう・・・

猫のシャルロッテがやってきて、しきりに人シャルロッテの匂いを嗅いで体を摺り寄せている。

「うふふ、ロッテ、お母さんの匂いがするのね」シャルロッテ嬢は満足そうだ。


確かに大きな白い毛長猫が4匹の子猫と一緒にいたと思う。それ以外にも大人の猫が何匹かいた。雌猫は血族で暮らし、狩りや子育てに協力すると聞いたことがあるから、大きな白猫がお母さんで、他の猫がお姉さん猫と子猫達なのだろう。


アーデルハイトは、遠くから見ても、悪者君がシャルロッテであることに気付いたようだ。ニヤニヤしてやってきた。シャルロッテ嬢は機転を利かせ、うまくアーデルハイトを陰謀に巻き込んだ。

どうやったかって? 猫シャルロッテのママを見つけたから、後で秘密の扉を開けて会いにいこうと誘ったのだ。やはりリウドルフィングの女は策士ね・・・うふふ。


急いで食べ終えた私達は、まだ猫と遊びたいということで、裏口から納屋にいった。納屋に入る前に、猫シャルロッテは納屋の裏に回り、しきりに壁のあたりをカリカリし、ニャオニャオと鳴きだした。耳を澄ますと、母猫らしい太い声が聞こえる。そこには木の箱が置いてあった。もしかしてと思い、アグネスは箱をどけた。そこには通気口のようなものがあり、金網が外れていた。猫シャルロッテはすぅとそこの中に入りこんでいった。


アーデルハイトが呟いた。

「どうりで、街の誰もロッテを知らなかったわけだわ。ロッテはここからでて、冒険していたけど、誰かが箱を置いたので、ママのところに帰れなくなったのね」


アーデルハイト、素晴らしい洞察力ね・・・女の勘かしら。


私達は、納屋に入り、床の扉を開け、中に入っていった。隠し扉を開けて階段を下りると、部屋の中央でゴロンとしている白い大きな毛長猫がいて、その乳を吸っているロッテがいた。

「うわーかわいい。見てみて。前足でふみふみしてる」アーデルハイトが呟いた。

「よかったね。ロッテ」シャルロッテが小さく囁き、なでなでした。この地下室には明かりとりを兼ねた通気口があり、それを登って出たようだ。


なんだか幸せな気持ちに満たされた夜だった。アグネスは、離れて暮らす母に会いたくなってしまった。







お読みいただきまして、ありがとうございます。

いかがでしょうか。


古い街は概してそうですが、古代の街は地下に埋もれていきます。ローマなどはその最たるものでしょうね。明星亭の地下も過去のもののようです。


御都合主義ですが、本来小説とはそのようなものですよね・・・


明日の朝に続きをアップできればと思っています。

そのあとが駆けているのですが、ブリッジができていません。頑張ります!


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