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初恋は実らない  作者: 柏原ゆら
*First Love*
6/18

#06

「……なぁ、希帆。今年の夏祭りどうすんの?」


いつか聞かれた質問。前は柚ちゃんからだったけど、今回は岳からだ。

今はお昼時間。いつもは柚ちゃんと食べてるんだけど、柚ちゃんが彼氏さんと食べるときは、私は岳と食べている。私と食べることになってもイヤイヤ言わない岳は、ホント優しいなぁ。


「一日目は柚ちゃんと行くよ」

「二日目は?」

「岳は?」


岳の予定がなかったら、今年も例年通り岳と行くことになるんだろうな。一人は嫌だし、夏祭り行きたいし。


「俺も、一日目だけ予定ある」


「……じゃ、今年も行こ?」と言おうとしたら、「晴人とは行かねぇの?」という岳の言葉に遮られた。


「……それ、柚ちゃんにも言われたぁぁ……」

「で?誘わねぇの?」

「誘えないの!!」


岳の肩がビクッと震える。

そして、五時間目開始の予鈴が鳴った。


*


五時間目の授業が終わった途端、俺は晴人のクラスに向かった。


「晴人」


ちょうどドアの近くで男友達と話していた晴人の名を呼ぶ。晴人は、俺に気づいてすぐ来てくれた。


「どした?岳」

「お前さ、夏祭りの二日目予定ある?」


晴人は、ズボンのポケットからスマホを取り出して確認し、「ねーよ」と言った。


「じゃあさ、希帆のこと誘ってくんね?俺、二日目予定あってさ。希帆、暇そうだから」


希帆が晴人のことを好きだから、という事実は伏せといて、なんとか納得してもらえるような理由を即興で考えた。にもかかわらず、晴人は何の疑いもなく「りょうかーい」と言って友達のもとに戻っていった。

……よかった。なんとか一緒に行ってくれそうだ。俺的には嫌だが、希帆の為になるなら……と自分に言い聞かせた。


*


「ねぇねぇ!晴人君に誘われたんだけどっ!」


次の日の朝。

ハイテンションな希帆の言葉に主語はなかったが、何の事を言いたいのかよくわかった。


「……よかったじゃん」


俺が頼んだことだとわからないように祝杯する。

希帆は、ニコニコはしゃいでいる。まるで、小学生みたいだ。


「……浴衣着てくのか?」

「うんっ。お母さんに新しいの買ってもらうー」


ニコニコ顔で言う希帆に、胸が苦しくなる。

ホントは、俺が見たかったな。


「……なんか悲しそうじゃん?」


希帆が去ったと同時に、飛鳥風馬(あすかふうま)がやって来た。

風馬は俺と同じクラスの奴で、結構ノリがいいらしい。俺は、コイツのテンションについてくので精一杯だけど。見た目はチャラいが、結構いい奴なんだよな。


「何かあったん?」

「……べつに」


俺がそう答えたにもかかわらず、風馬は去る希帆の後ろ姿を見て「あー……」と声を出した。


「希帆ちゃんね」

「……べつに」

「『べつに』じゃないだろー?他の男に夢中になる女の子見て嫌な気持ちになるなら、奪っちゃえばいいじゃん」


……確かにそうだ。っていうか、何でコイツ俺が希帆のこと好きなの知ってんだ。

……まぁ、いいか。風馬はこう見えて、口は固いほうだし(たぶん)。その前に、どこでその情報知ったか気になるけど。


「……でも、希帆の為だから」

「そうやって逃げてるんだろ?」

「……っ」

「希帆ちゃんの為とか言ってるけど、岳が本気になれば、希帆ちゃん岳に振り向くかもよ?」


……何を根拠に言っているんだ。あんなに晴人に夢中な希帆が、俺に振り向くことがあるかっての。


「奪う気ないなら、他の子に変えるとか」

「他の子……」


女子と面識が少ない俺にとって“他の子“などいない。

でも、一人いるとしたら……白石、か。

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