#06
「……なぁ、希帆。今年の夏祭りどうすんの?」
いつか聞かれた質問。前は柚ちゃんからだったけど、今回は岳からだ。
今はお昼時間。いつもは柚ちゃんと食べてるんだけど、柚ちゃんが彼氏さんと食べるときは、私は岳と食べている。私と食べることになってもイヤイヤ言わない岳は、ホント優しいなぁ。
「一日目は柚ちゃんと行くよ」
「二日目は?」
「岳は?」
岳の予定がなかったら、今年も例年通り岳と行くことになるんだろうな。一人は嫌だし、夏祭り行きたいし。
「俺も、一日目だけ予定ある」
「……じゃ、今年も行こ?」と言おうとしたら、「晴人とは行かねぇの?」という岳の言葉に遮られた。
「……それ、柚ちゃんにも言われたぁぁ……」
「で?誘わねぇの?」
「誘えないの!!」
岳の肩がビクッと震える。
そして、五時間目開始の予鈴が鳴った。
*
五時間目の授業が終わった途端、俺は晴人のクラスに向かった。
「晴人」
ちょうどドアの近くで男友達と話していた晴人の名を呼ぶ。晴人は、俺に気づいてすぐ来てくれた。
「どした?岳」
「お前さ、夏祭りの二日目予定ある?」
晴人は、ズボンのポケットからスマホを取り出して確認し、「ねーよ」と言った。
「じゃあさ、希帆のこと誘ってくんね?俺、二日目予定あってさ。希帆、暇そうだから」
希帆が晴人のことを好きだから、という事実は伏せといて、なんとか納得してもらえるような理由を即興で考えた。にもかかわらず、晴人は何の疑いもなく「りょうかーい」と言って友達のもとに戻っていった。
……よかった。なんとか一緒に行ってくれそうだ。俺的には嫌だが、希帆の為になるなら……と自分に言い聞かせた。
*
「ねぇねぇ!晴人君に誘われたんだけどっ!」
次の日の朝。
ハイテンションな希帆の言葉に主語はなかったが、何の事を言いたいのかよくわかった。
「……よかったじゃん」
俺が頼んだことだとわからないように祝杯する。
希帆は、ニコニコはしゃいでいる。まるで、小学生みたいだ。
「……浴衣着てくのか?」
「うんっ。お母さんに新しいの買ってもらうー」
ニコニコ顔で言う希帆に、胸が苦しくなる。
ホントは、俺が見たかったな。
「……なんか悲しそうじゃん?」
希帆が去ったと同時に、飛鳥風馬がやって来た。
風馬は俺と同じクラスの奴で、結構ノリがいいらしい。俺は、コイツのテンションについてくので精一杯だけど。見た目はチャラいが、結構いい奴なんだよな。
「何かあったん?」
「……べつに」
俺がそう答えたにもかかわらず、風馬は去る希帆の後ろ姿を見て「あー……」と声を出した。
「希帆ちゃんね」
「……べつに」
「『べつに』じゃないだろー?他の男に夢中になる女の子見て嫌な気持ちになるなら、奪っちゃえばいいじゃん」
……確かにそうだ。っていうか、何でコイツ俺が希帆のこと好きなの知ってんだ。
……まぁ、いいか。風馬はこう見えて、口は固いほうだし(たぶん)。その前に、どこでその情報知ったか気になるけど。
「……でも、希帆の為だから」
「そうやって逃げてるんだろ?」
「……っ」
「希帆ちゃんの為とか言ってるけど、岳が本気になれば、希帆ちゃん岳に振り向くかもよ?」
……何を根拠に言っているんだ。あんなに晴人に夢中な希帆が、俺に振り向くことがあるかっての。
「奪う気ないなら、他の子に変えるとか」
「他の子……」
女子と面識が少ない俺にとって“他の子“などいない。
でも、一人いるとしたら……白石、か。




