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大好きなBL小説の悪役令息に転生したので改変せずに、ふたりの行く末を見守りたいと思います。  作者: 燈坂 もと


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1.プロローグ




 

 俺には、前世の記憶がある。

 前世は日本という国で、普通の男子高校生だった。


 黒色だけど、少し栗毛掛かった色合いの髪色は陽の光を浴びるとほんのり茶色くみえて、実は自分の髪色が好きだったことを、今の朱い夕日の様な色合いを見て思い出す。

 今の髪色も嫌いではないけれど、あの日本人特有の落ち着いた色合いは、思い出すだけで心が穏やかになる。それは、この世界に転生して、多様な髪色で溢れているから余計感じるのかもしれない。


( 慌てて出立したけど……なんだかあっという間、だな。——もう夕刻か。そろそろ国境に着く頃かな……それにしても、何かトラブルかな。さっきから馬車が止まったまま動かない……検問、長引いてるのかな )


 予定もなく、アテもなく。ただただ、今朝まで居た場所から離れるために。重い身体を必死に動かして、()が寝ている隙に部屋を飛び出した。

 彼……そう。この物語の主人公で、本来なら俺と身体を繋げる予定のなかった彼、アルフレッド・ローゼンフェスト公爵様。その方の部屋から俺は今朝、大慌てで飛び出して今に至る。

 

 俺が前世大好きだったBL小説『悪役令息である夫を断罪したのち、聖女の力を持つ健気な子爵令息と結ばれることになりました』—— 通称『ざま婚』。えっ?ざまも婚も入ってないじゃないかって?略称の由来は確か、原作者の先生が「長ったらしいから『ざまぁ』してから結婚するから『ざま婚』でお願いします!」と表紙裏の帯に書いていたのが由来だったような……まあ、それは置いておいて。

 俺はそのタイトルにも付いている『悪役令息である夫』……ディルク・ヴァーミリオン伯爵令息。正確には昨日、結婚式を挙げ、籍を入れたからディルク・ローゼンフェスト公爵夫人、なのだけど。


「まさか、あんなに……ぐちゃぐちゃに、……っ。——抱かれる、なんて」


 昨夜の事を思い出して、胸が熱くなる。

 あの時。彼は俺を腕に抱きながら、俺を熱の籠った瞳で見つめながらゆっくりと口唇を落として。

 そして、俺に向かって —— 口を、開いた。

 

『この柔らかい肌も。髪も。眩しい瞳も、この口唇も——君が、君の全てが。堪らなく、好きだ』


 俺の髪を優しく梳いた後、ひと束掬い上げて口付けを落とした。そして俺の耳元で、低く響く声を脳に響かせる様に声を落とした。


『——もう絶対に、離さない。君は……永遠に、私のモノだ』


 普段、冷静で物静かな……あの彼が。俺に必死に愛を語って、俺に興奮して、俺に欲望を打ちつけた。


 ダメだって、これは間違ってるって、拒否しなきゃって、頭では分かっていても身体が言うことを聞いてくれなくて。俺は彼に求められるまま、彼と朝まで、蕩けてしまったのだ。

 

 だけど……それは、本来ならありえない事なのだ。

 俺が大好きな『ざま婚のアルフレッド様』は、間違いなく俺を毛嫌いしている筈だし、セシル様を愛しまくっている筈なのだから。

 絶対に何処かでバグが起こって、何かが狂ってしまってる。やっぱり俺が転生なんかしてしまったから……あの素敵な話を、俺が変えてしまった。

 

 脳裏に過った()の方の映像を抹消しようと首を横にぶんぶん振ったら、振りすぎたせいで目眩がした。クラクラして、焦点が合わなくなって座席に転げてしまった。やりすぎた。落ち着け、俺。


「俺は、ディルク・ヴァーミリオン伯爵令息。間違っても、旦那様……アルフレッド様の恋路を邪魔しちゃ、いけない……!」


 ディルクに転生したと気付いた時から、俺は心に誓っていたのだ。

 俺は、アルフレッド・ローゼンフェスト公爵様とセシル・アストラル子爵令息様が倖せになるための立派なかませ犬になろうと——!


 その時。ガチャ、と馬車のドアが開く音が聞こえて。やっと降りれるのかなとその音のする方を見た。


 ——そこには、まさかの、人物。


「 ……ディル?意気込んでいるところ悪いけれど、もう追いかけっこは、終わりでいいかな?」

「ッ?!ア……っ、アルフレッド、様……?!な、なんで……ッ!」


 馬車のドアが開いて、もう出られるのかなと思った矢先のこと。目の前には、ざま婚の主人公で、今朝までバグのせいで俺に愛を乞いながら、俺と身体を繋げて。そしてすやすやと俺の横で眠っていた——アルフレッド・ローゼンフェスト公爵様が……恐ろしく美しく微笑んで、俺の行手を塞いでいた。

 

「——なんで……は、コッチの、台詞だ。今朝、目覚めて。横にディルがいなかった私の絶望が、君に分かるか……?手に入ったと思ったら——ははっ。ほんと……簡単に、すり抜ける。昨夜だけじゃ、まだまだ足りなかった様だ。大丈夫。たくさん、教えてあげよう。私の気持ちが、偽物じゃないってことを」

「——っ!旦那、様……っ!」


 彼の大きな手が俺の手首を掴んで、引き寄せられたその瞬間に彼の口唇から呪文が紡がれる。



 俺の身体は、彼と共に馬車から、消えた。







燈坂もとと申します!

なろうさんに投稿は初めてです。

(R18BL作品をムーンライトノベルズさんにて3作品投稿しております)

ポスノベから生まれたこのお話。

見切り発車でスタートしており(私が)ドッタンバッタンしておりますが、お付き合いくださると倖いです(*´꒳`*)

 


 


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