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アポカリプスロード:Extend  作者: 中村 りゅうや
第一章 マントルロード
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5/5

D-5 俺は愚か者です

 ベットに座り今日あったことを振り返る。まずは性転換したメイリア、これはかなり驚いたな。そのあとはサンの詳細やザナティスの伝説、そしてメイリアの過去に触れることができた。しかし最後にやった占いの結果が酷かった。そう、酷かったのだ。なぜなら、占い結果が『盗まれた』のだから。


***


 店主の占いが終わったころ、俺は目を覚ました。どうやら占い中は意識を失っていたらしい。最後に憶えているのは目の前が真っ白になったことだ。


『占いの結果が出たんだがな……』

『ん?――あーこれは……』

『何があったんだ?黙ってないで何か言ってくれ』


 店主がカードをいくつか差し出してきた。そのカードは一枚を除いて黒く塗りつぶされていて、白い文字でこう書かれていた。

『ジエンの記憶は頂いた!!

 返してほしければアンニル団で生活することだ!!!

           大怪盗エターナルブラッティローズサクリファイス男爵』


『……』

『社長が細工(さいく)したみたいで占い結果がわからなかった』

『……そうみたいだな』

『社長のことだから占い結果に細工するのは不思議じゃないけど…………時系列がおかしい』

『時系列?』


 メイリアは頷いて話を続ける。


『まず、ジエンが記憶を失ったのが50年前なのは事実だよね?』

『そうだ』

『そして、この占いは私が発明した新技術を使って開発した。それが40年前。新技術とは私が考えた権能の新しい使い方。つまり、ジエンの記憶を封じたころの社長はこの占いを知らないの』

『……ただ単に権能以上の力で記憶を封じたから力負けしたとかは?』

『権能は社長が保有する力の中で最高位に位置するから力負けすることはないよ』

『……ならサンが未来を視て特別な対策をしたとかは?』

『権能や上位の存在が関わると未来は不定になるから、それはありえないね』


 一つ一つ可能性を挙げて潰す。残っている可能性は一つ。


『……その占いが完成した後に俺のところに来て細工をしたと』

『現状その可能性が一番高いね』


***


 つまり、サンは俺が旅している間にどこかで会いに来たことがあるってことだ。だけど細工だけなら寝ている間にできるから対面はしていない可能性もある。しかし、メイリア曰くサンがその程度で済ますはずがないとのこと。絶対どこかで変装して初対面を装って接触しているらしい。サンに会ったら詳しく問いただしてやる。

 そして俺は店主から貰った写真付きのカードを見る。これは唯一細工がされていないカードだ。二人が小高い丘の上で夕日を見ている写真で、二人ともこっちには背を向けている。メイリアから聞いた限り片方はサンらしい。サンの格好は黒いローブで頭にハチマキのようなものをつけている。サンは常に目を覆っているらしくこのハチマキは目隠しらしい。そしてもう一人は10歳前後の俺だ。サン同様黒いローブを着ている。この写真が何を示しているかはわからないが重要な手がかりだ。

 アルバムの新しいページにカードを入れ横になり毛布を被る。目を閉じて深く息をする。そうしていると眠気に襲われてくる。何か忘れていることがある気がするが、思い出せないまま眠気に身を任せていく。


***


 朝、肌寒さを感じ目が覚める。目覚めた場所は映画館。


「…………は?」


 ブザーが鳴り館内が暗くなる。映画が始まるみたいだ。タイトルは『わたくしの神様♡』……絶対にクソ映画だ。いや、そんなことより状況確認だ。俺は今映画館の最前列に座らせられている。物理的な拘束も魔法的な縛りもない。どこにいるかはわからないが人の気配がする。声をかけよう。


「おーい!!どこかにいる誰か!!姿を見せてくれ!!」

【館内ではお静かにお願いします】


 館内放送の機械音声に注意される。すると館内に明かりがつきシスターのような格好をした女が歩いてきた。俺の目の前に立つと女は手を組む。まるで神に祈る姿みたいだ。


「神は言っておられます、あなたは愚か者だと」

「お前が、俺を連れ出したのか?」


 女が薄く笑う。俺は剣を顕現して握りしめる。女は俺をここに連れ出し俺を愚か者と罵った。敵対するには十分だろう。剣を構え、いつでも斬りかかれるようにする。


「ふふっ、あなたは本当に愚か者ですね」


 俺が動く前に女は口を開く。


「今が何時だと思います?」

「?9時とかじゃないのか?」


 思いがけない質問に顔をしかめる。質問の意図がわからない。


「いいえ、違います。只今の時刻は15時43分です」

「……は?」


 コスマを取り出し時刻を確認する。


「そしてあなたはリサさんから今日、団員との顔合わせがあると聞いているはずです」

「……」

「私は待ちました。準備を整えリビングにて7時頃からずっと。5時間経ってもあなたはリビングに来ませんでした。不安に思い、私のほうからあなたの部屋を訪れました。ノックをしましたが返事が来ないため扉を開けました。すると目に入ったのはベットで眠るあなたでした」

「…………」

「私はリサさんから許可を取りあなたをここまで連れ出しました。連れ出した後もあなたは3時間以上眠り続けました」

「………………」

「もう一度言います。あなたは愚か者です」

「大変申し訳ございません」


 俺は土下座する勢いで誠心誠意(せいしんせいい)謝った。


***


 リビングに戻りソファに座る。目の前のソファにはリサとシスターの女が座っている。


「改めて自己紹介させていただきます。アンニル団NO7ヘイゼルです」

「初めまして、ジエンだ。さっきはその……寝坊して悪かった」

「謝罪は先ほど受け取ったので不要です。それよりもリサさん、ジエンに食事を用意してもらえませんか?」

「もう準備してあるから持ってくるわね」

「え?いや、俺が悪いんだし後で食べるから……」


 俺が断ろうとするとヘイゼルから制止がかかる。


「いえ、そういうわけにはいきません。確かに生命維持(いじ)の観点からすれば、今食べても後に食べてもそこまで変わりません。しかし、食事というのは心を(いや)す行為でもあります。この後に一人で食べるよりも――私たちとお話ししながら食べたほうが心は暖まります。どうか私たちと一緒に食事を楽しみませんか?」

「そ、そこまで言うなら……」


 そんなことを言われたら断れなくなってしまう。ヘイゼルの言葉にはそれぐらい力と重さがある。すると食事を持ってきたリサから声がかかる。


「はいお待たせ。アンニル団特製カレーよ。おかわりもあるからいっぱい食べなさい」


 そう言って出してきたのは大盛りによそわれたカレーだ。カレーを白米と一緒に口に入れる。


「……うっま」

「でしょう?」


 ドヤ顔しているリサには少しムカつくが、カレーがおいしいのは事実だ。まず口に入れた瞬間にスパイスの香りがガツンとくる。肉はほろほろでジャガイモやニンジンも柔らかく口の中で溶けていく。後から甘みがスッと広がる。


「確か……こちらのカレーは神とシュウゴさんとの共同製作ですよね?」

「えぇそうなの。あのときは最高級のカレーを作ろうと熱中してたのよね」

「どういう経緯で最高級のカレーを作ることになったんだよ」


 俺がツッコミを入れる。リサは「どうしてそうなったのかしら……」とこぼしている。


「ところで、ヘイゼルのいう神ってサンのことか?」

「そうですね。私が彼を神にしました」

「ん?神にしたの?神って呼んだとかじゃなくて??」

「些細なことです。気にしないで行きましょう」


 それは本当に些細なことか?まぁ、ヘイゼルが言うなら別にいいか。

 そういうヘイゼルはカレーを食べるからなのか、いつの間にやら着替えていた。先ほどはシスターの恰好をしていたが、いまはゆるいTシャツにショートパンツを着ている。Tシャツには『世界を愛せ!』と書かれている。意味が解らない。

 また、髪型も変わっている。シスターのときは膝まで届くストレートヘアだったが今は三つ編みでお団子を作っている。肌は白いが小さな傷跡がところどころあるため、外にはよく出ているように感じる。身長も俺より少し下ぐらいで高いほうだ。それにその胸……


「どうかしましたか?私に何か聞きたいことでもありますか?」

「す、すまない。見すぎてしまったな」

「……ジエンって目がいいのね」

「えっと、そうなのか」


 リサは「そうよ」と言いヘイゼルのほうに目をやった。そしてヘイゼルがスプーンを置き、自分の胸に手を当てて喋りだした。


「気づかれてしまったのですね。この豊満(ほうまん)なボディに刻まれた呪いに」

「豊満なボディって言う必要あるか?」

「ヘイゼルはアンニル団一番のボンキュッボンだからね。ちなみに男で一番ナイスバディなのはシュウゴよ」


 やばい俺史上いらない情報TOP3に食い込むほどの情報を脳内に取り込んでしまった。さっさと忘れよう。

 ヘイゼルが呪いと言っていたやつが胸を中心に体と魂に根深く染み付いている。俺自身呪いには詳しくないが、それがいいものではないとわかる。


「呪いって言っていたが大丈夫なのか?」

「呪いについては神の御業(みわざ)によって解決いたしましたので問題ありません。ジエンが見ているのも呪いの残滓(ざんし)にすぎません」


 本人が言っているし問題ないのだろう。スプーンを置いていたヘイゼルが食事を再開した。


「それにしても意外です。ジエンが私の体に見惚れていないとは」

「めっちゃ自分の体に自信あんじゃんこの人」


 やっぱりこの人も変人か……ていうかメイリア曰くNO8は教祖らしいし仕方ないのか。いや今までのヘイゼルには教祖要素がなかったはずだ。つまりこれ以上に奇天烈(きてれつ)なことになんのか。


「私の仕事内容にモデルが含まれておりますので自分の体には絶対的な自信があります。それを踏まえて問います。ジエンは私の体を見てどう思いましたか?」

「どう思ったって……」


 めっっっっっちゃ答えにくい質問だな。素直に褒めるのはなんか嫌だし(けな)すのは論外。まぁこういうときは濁すのが鉄則だとだれかに聞いた気がする。


「あぁ、まぁ、綺麗な方、なんじゃないか?」

「なるほど……ジエンは女性の体に興味がないということですね」

「なんでそうなるんだ」

「はっ?!そうですね、熟女もしくは幼女がお好きな可能性もございますね。失礼いたしました」

「ジエンはロリコンなのね」

「違う、俺はロリコンでも熟女好きでもない」


 なんでこんなくだらない訂正をしなきゃいけないんだ。もしかしてメイリアが言ってたのはこういう会話のことなのか。こんなのが毎日続くと疲れるな。今度メイリアには何か買ってこよう。


「つまりジエンは同性の方がお好きなのですね」

「アンニル団じゃよくあることね」

「別にそうゆうわけじゃない。どっちも経験あるからな」

「「え?」」

「それよりもヘイゼルの権能を教えてくれないか?」


 話題を変えよう。メイリアの権能は聞きそびれてしまったが、今回はちゃんと聞こう。今後、何かの役に立つかもしれないしな。


「え、えぇ構いません。私の権能は『明日を生きる希望』です」

「『明日を生きる希望』……」


 字面だけを見れば素晴らしい権能に思える。だが、文字列だけでは解釈が多種多様に存在する。例えば、物語でよくある『救済』とかだな。善いことに思えるが、蓋を開けたら洗脳や死、人格破壊の隠語(いんご)だったりする。


「それって具代的にどんなことが出来るんだ?」

「私の場合ですと光を操って色々なことを行えます。例えば光の刃を降らせるとか癒しの光を輝かせるなどですね」

「攻守万能って感じだな」


 思っていた以上に戦闘向きな権能だな。


「私は攻めよりも守りに重きを置いています。そもそも権能というのはその人の感情に由来して力を発揮します。私の権能は『誰かを助けたい』や『未来に進みたい』という感情をもとに機能しています」

「感情に……」

「神の場合は恨みや怒りを元に世界を堕としたりしますね」

「何があったんだ神は」


 全く真反対の感情を元にしてんじゃん。希望は必ず良いものとは限らないってことか?それにしても使い方次第では世界を壊せるんだな。さすがニヒルと真っ向から対立している奴らだな。

 そんなことを話しているうちにカレーを食べ終えてしまった。


「食事も済んだところですしそろそろ親睦会を初めようと思います」

「この食事会は親睦会ではないのか?」

「心を癒すためです」

「え、あ、そうか」


 素直に返事しちゃった。


「あたしは親睦会の準備をするからあんたたちは好きに過ごしていいわよ」


 リサはそう言うとお皿を片付けてキッチンに行った。


「ジエン、よければ私とこの後一緒に過ごしませんか?」

「構わないが、何をするんだ?」

「そうですね、強いて言えば」


 たっぷり3秒、時間をとってヘイゼルの口が開く。


「教祖、です」

ちなみにヘイゼルは待っている間、ソファに寝転がりながらテレビを見ていました。ジエンの遅刻も特に気にしておらず、弄るネタができた程度にしか思っていません。

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