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【転生】辺境伯家の長男 《千客万来》スキルに今日も振り回される  作者: jadeit
学園編

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第54話 勇者ユウキと終焉の魔王

『ここまでだ! 魔王!』

『ふん。この程度で私を倒せると思っていたのか。くらえ!』


――ドッカァァァン!!


 講堂全体が揺れるほどの轟音。天井が震え、熱風が客席にまで押し寄せる。


「……!?」

――え? ユウキくん爆発したけど大丈夫?


 学園祭二日目。俺は『ガルム』クラスの舞台、≪勇者ユウキと終焉の魔王≫を観ている最中だった。主演はユウキくん。そして、爆発の八割はミナミさんの発明品によるもの。もはや学園祭というより戦場である。


『くっ……こんなところで負けるわけにはいかない。みんな、俺に力を!』


 煙の中から、少し焦げた衣装のユウキくんが姿を現す。少しふらついたユウキくんを見た観客席からは、小さな悲鳴が漏れた。


(あの爆発で無事って……さすが本物の勇者)


『勇者様! サポートはお任せください!』

『俺たちが時間を稼ぐ! トドメは任せたぞ、ユウキ!』

『おのれ、小癪な……だがザコが何人集まろうと私には――』


「ボンッ! ボボン!」

――また爆発。すごい演出だ。


 舞台のバックで火花が連続して弾け、勇者の仲間役たちが見事な放物線で吹き飛んでいった。演者の子たちは、転移者ではない普通の子供なのに、あれは大丈夫なのだろうか。


『わはははは! 思い知ったか、人間どもよ!』


 客席を震わせる魔王役の低音ボイス。背後で黒い霧が渦巻き、舞台全体が闇に包まれる。もうダメかと思ったその時――。


『みんな、待たせたね。魔王! 受けてみろ! これが俺たち“人間”の力だ!』


 光り輝く剣を構え、ユウキくんが登場。観客たちから歓声が上がる。


「おおおおおーーっ!!」


 観客席が震えるほどのどよめきが広がった。舞台では幕が風圧ではためき、照明が一斉に勇者へ集中する。剣を突き立てた瞬間、眩い光が会場全体を包み込み、観客たちは思わず目を覆った。


『おのれ、勇者ユウキ……! だが覚えておけ――私は必ず蘇ってみせる……っ!』


 光が晴れると、そこには魔王を倒した勇者ユウキの姿だけが残っていた。


『こうして、勇者ユウキと仲間たちは見事、魔王を打ち倒し王国に平和を取り戻したのでした』


「パチパチパチパチ!!」

「勇者様ー!!」

「ユウキくん最高ーー!!」


 観客は総立ち。俺も思わず立ち上がって拍手していた。


「いや~、すごかったね」

「はい、とても素敵な舞台でした」

「ユウキ、カッコよかったデス」

「あの爆発……どういう仕組みだ?」


 俺、エリス、カインくん、マリアさんは舞台の余韻に浸りながら、学園祭を見て回っていた。


「お、たこ焼きあるよ!」

「焼きそばも美味しそうデス!」

「目移りしちゃいますね」

「うむ。では全クラス制覇するぞ!」

「「おー」」


 俺達が意気込んでいると後ろから声が……。


「見つけましたよ~、レオンくん!!」


 振り返るとリュミナ先生が息も絶え絶えに走ってきていた。


「あ、リュミナ先生。こんにちは」

「はいこんにちは……じゃないです! いつまで休憩してるんですか! 一人じゃ無理なんですってば!!」

「え~、大袈裟ですよ。じゃあ、たこ焼き食べたら戻りま――」

「ダメです。今すぐ戻りますよ!」


 俺は腕を掴まれ、そのままホイップクリーム地獄へ強制送還されることになった。


「あ~……せめて一口……!」


 そんな俺を、仲間たちは生暖かい目で見送っている。

――いや、助けてよ!


* * * * * * *


「皆さん、三日間お疲れ様でした」


 祭りの喧噪が嘘のように静かな講堂。その中で順位発表が始まろうとしていた。つい数時間前まであれほど賑わっていたのに、今では、どのクラスも固唾を飲んで発表を待っている。


「僕たちのクラス、何位だろうね」

「うむ。かなり盛況だった。十分一位を狙えるぞ」

「でもユウキくんの舞台もすごかったよね」

「うむ。あれには驚いた」


 どうやらリヒト様も舞台を観ていたらしい。そんな会話の最中、俺はふと思い出す。


(あれ? そういえばもう一つクラスがあったはずだけど……)

「第三位――『フギン』、“王国の魔道具の歴史”」

――あ、見に行くの忘れてた。カフェテリアで絡んできた何とかくんのクラスだ!


「第二位――『グラニ』、“コスプレ執事喫茶”」

「あ~~~、二位かぁ……」


 がっくりとうなだれる俺たち。


「そして一位は……『ガルム』、“舞台≪勇者ユウキと終焉の魔王≫”です!」

「パチパチパチパチパチ!!」


 一位の発表に講堂全体が拍手の嵐に包まれる。その中心ではユウキくんがクラスメイトに胴上げされていた。

――あれ? ユウキくんの方が主人公っぽい?


 俺が気付いてはいけない事実に打ちひしがれている中、クラスメイトたちは互いの健闘を称えあっていた。


「うむ。惜しかったが、仕方ないな」

「はい。でも楽しかったですから」


 リヒト様とエリスは、満足げな表情でクラスメイトたちと話していた。


「むぅ……まあ、『フギン』には勝ったから良しとするか……」


 カインくんはまだ悔しそう。こうして、騒がしくも最高に楽しかった学園祭は、幕を閉じた。

――まあ今回も、ほぼホイップクリームの記憶しかないんだけどね……

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