第8話「魔王との戦い」
ジーナいい子なんじゃよ本当は。
スライムの魔王ジーナが顕現した事によってスライムが実体化してしもうたのじゃ。ワシはスライムに囲まれてしもうておった。
外からも悲鳴が聞こえるのじゃ。もう猶予はあまりないのじゃ。
スライムはスライムの魔王がいる限り生まれ続ける、それは見たらわかるのじゃ。
ワシは説得は難しいと見たのじゃ。じゃからスライムを避けて通ってジーナに近づいたのじゃ。
「こないで!」
スライムが身を寄せあい壁になったのじゃ。ジーナの意思に従うというわけじゃな。
ワシは猪突猛進に突撃し、スライムをボコボコにして突破したのじゃ。
そしてジーナに抱きついたのじゃ。
「もうよい、もうよいのじゃ。怖いのはもうなくなるのじゃ! だから止めるのじゃ!」
「離して! あなたもどうせお父さんみたいに……」
「酷いことはせん! 約束するのじゃ! じゃから……じゃから、もう……」
ワシはガタガタ体が震えるのじゃ。ジーナが冷たいからじゃと思っとったが恐らく違うのう?
ワシの力が魔王の力と戦った結果負け始めとるのじゃ。
それでもワシはジーナを離さんかったのじゃ。たとえこれがワシの最期になろうとも、この少女をこのまま見捨てるわけにはいかないのじゃ。
ワシの体が冷たくなっていくのを感じたのかジーナは慌てたのじゃ。
「もういい! もういいから離して! じゃないとコン様が……!」
背中からはスライムがワシに体当たりしてくるのを感じていたのじゃ。
それでもワシはジーナを離さず頭を撫でてやったのじゃ。
「怖いの怖いの、飛んでいけじゃ」
ジーナは目から涙を流しておったのじゃ。ワシは渾身の力を振り絞って尋ねたのじゃ。
「ジーナ、お主友達はおるのかのう?」
「とも、だち?」
友達という概念すら知らんようじゃった。どれだけ酷い環境に置かれとったのか計り知れんのじゃ。
「ワシとお主は今日から友達じゃ。仲良しじゃ。一緒にご飯を食べたり遊んだりするのじゃ。楽しいぞい。どうじゃ、嫌かのう?」
「……嫌じゃない」
ジーナは抱き返してきたのじゃ。ワシの体に顔を押し付けて泣きわめいたのじゃ。
「コン様と友達になりたい!」
パァァァっとジーナが光出したのじゃ。そして闇は晴れたのじゃ!
スライムたちがワシへの体当たりを止めたのじゃ。
(コン様! やったのですね? 魔王を倒されたのですね?)
ルナの声が聞こえるのじゃ。念話じゃのう。
(スライムはどうなったのじゃ?)
(動きを止めて人を襲うのを止めてます。反撃はしてくるのでどうしたものかと。でも魔王を倒されたのなら希望が見えます!)
スライムはそのままおるのか。どうしたものかのう?
「ジーナ、外のスライムを何とかできんかのう?」
「やってみる」
すると扉の隙間をすり抜けてスライムたちが集まってきたのじゃ。
「コン様、少し離れていてください」
ワシはフラフラと壁にもたれかかったのじゃ。
スライムたちは、集まっていき凝縮され宝石になって一つのネックレスになったのじゃ。それをジーナは身につけて、へたりこんだのじゃ。
「大丈夫かのう?」
「コン様こそ」
ワシらは互いに笑いあったのじゃ。ジーナはやっと屈託のない笑顔を見せてくれたのじゃ!
やがて兵達が到着したのじゃ。ジーナは構えるのじゃが、ワシがルナに説明するとルナは頭を抱え込んだのじゃった。
「まさか魔王の力を抑え込むなんて……」
「どの道ワシにはそれ以外の選択肢なんてなかったのじゃ」
ジーナを説得することしか考えとらんかったのじゃ。
「とにかく、ジーナさんは教会で保護しましょう」
「ダメじゃ」
ルナの提案を拒絶するとルナは驚いておったのう。
「ジーナはいつスライムの力が暴走するかわからんのじゃ。それ程までに心が脆く歪んでしもうておる可能性があるのじゃ。じゃからワシの傍に居させるのじゃ」
「つまり……私が保護するということですね?」
ルナは困った顔をしとったのじゃ。彼女は神様であるワシの協力をするという名目で、教会から資金を得てワシと宿で共同生活をしとる。
そこにジーナも加わるといいわけじゃな。そりゃあ困るわのう。
「魔王の暴走を防ぐためじゃ。分かって欲しいのじゃ」
「わかりました。マザーを説得してみます」
ワシはルナに背負われて、ジーナは触られるのが嫌じゃったので何とか歩いて、宿に向かったのじゃった。
ワシを背負えるのはルナだけじゃ。
ここまで読んでくださりありがとうなのじゃ!続きを読んでくださるとありがたいのじゃ!